アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

指揮者上岡敏之のピアノ演奏

2018-03-19 22:00:00 | 音楽/芸術

現在新日本フィルの音楽監督である上岡氏のピアノリサイタルが開催されたので行ってきた。

この演奏会、定期会員向けのご招待という形のリサイタルとなったが、全ての会員向けではなかったようで少し残念に思う。素晴らしい内容だっただけに、今はよりそんな気持ちになっている。プログラムは、ショパンとドビュッシー中心のピアノ曲が並んでいたが、一つ一つの楽曲がアタッカで演奏され、そのプログラミングの妙にまず驚かされる。ポゴレリチのリサイタルのように、暗めの照明の舞台の中央にピアノが置かれ、いやが上にも集中力が高まるが、全体の印象は、その技術力はもちろんなのだがそれよりも、やはり彼のピアノに対する思い、音楽に対する愛情を感じずにはいられなかった。それは、今まで聴いてきた彼の指揮する音楽と言わば同じで、個々の音楽に自分の主張が明確にあり、その作品を通して自分の思いを聴衆に問いただす。どれも独自性の強い演奏だったのだ。

どの演奏も素晴らしかったが、特に印象に残ったのは、ショパンのソナタ第2だろうか。命がけとも思える音色は、提示部や再現部で色が変わり、我々に問いかけてくる。有名な第3楽章に置かれている葬送行進曲では、主部と中間部との明暗が見事であり、特に中間部での抒情性は特質もので感涙せずには居られなかった。そこには、白く輝いた安堵の地がイメージされ、自分に降りかかった逆境が浄化される想いになったのである。

普段は指揮活動に専念している上岡敏之だから、こういったリサイタルは今後も稀だろうが、上岡氏の真実を知る上でも、再演を希望したい。メッセージカードにあるように、一番大事なものを聴衆とともに分かち合いたいものである。

上岡敏之 ピアノリサイタル

ショパン  2つの夜想曲 OP27

スクリャービン ピアノソナタ第3番 OP23

ショパン 子守歌 OP57

ドビュッシー  2つのアラベスク 第1番

ドビュッシー  前奏曲第1巻より第8曲「亜麻色の髪の乙女」

ドビュッシー  喜びの島

ショパン    前奏曲 OP45

ショパン    ピアノソナタ第2番  OP35

ショパン    スケルツォ第3番  OP39

アンコール

ショパン    幻想即興曲

ラフマニノフ  楽興の時  OP16 より第4

バッハ     平均律クラヴィーア第1巻~第1番 ハ長調

2018-03-19     すみだトリフォニーホール