風雅遁走!(ふうがとんそう)

引っ越し版!フーガは遁走曲と訳される。いったい何処へ逃げると言うのか? また、風雅は詩歌の道のことであるという。

かほり・タイムマシン!

2006-09-22 00:41:01 | コラムなこむら返し
 20日朝、あの芳香が漂ってきたのに気付いた。まるで、南国で嗅ぐかのような強い花の香り。その匂いは金色の匂いとはかくなるものかと、ボクに思わせる。それでいて、その匂いのみなもとはどこにあるのかすぐには、見つけることができないのだ。これほどの強い香りであるにもかかわらず、その匂いは風にのってかなりの広範囲に漂い流れる。

 やっと、その匂いのみなもとを見つけたら、その花はまだあの特徴的な山吹色の粉を吹いたかのような色に染まっていず、いささか拍子抜けした。

 その花??金木犀はボクに青い性欲のようなものをかきたてるのだ。年甲斐もないことを書いて恐縮だが、若い頃の「恋人」にまつわる思い出が、その金木犀の香りに結びついてこの花の香りをかぐと、恋情(れんじょう)のようなものさえよみがえってきてしまう。条件反射のようにボクは勃起している。まるでパブロフの犬だ。

 そうして、ボクは毎年この香りで季節が変わったことを知らされるのだ。それは、いつもボクの心の準備を待ってくれない。ある日、突然、その芳香はボクをおとずれ、いつもボクは、不意を突かれる。

 「恋人」の思い出を封じ込めるように、金木犀の盛りの時に、その花を集めて乾燥させ、匂い袋を作ろうと考えていた。そうすれば、その金木犀の匂い袋はタイムマシンのような役割を果たして、あの18歳の頃の異性を好きになることと、ブレーキのきかない激しい性欲の高まりとのあいだに引き裂かれるヒリヒリするような痛みにボクを連れて行ってくれるかも知れないと考えたからだ。それは、固くて青い恋情だ。

 こうして書きながらもボクはどこか惜しんでいる。40年も昔に失った恋人のことを!
 なんて、往生際が悪いおとこなんだろう!

 だが、それもこうしてボクを40年の時間をも遡らせて、思い出にひたらせてやまないあの金木犀の香りのせいなのだ!

 もしかしたら、香り(かほり)と言うものは「時空」を超えることができるのかも知れない。その強い喚起力は、タイムマシンと言っていいのかもしれない。