風雅遁走!(ふうがとんそう)

引っ越し版!フーガは遁走曲と訳される。いったい何処へ逃げると言うのか? また、風雅は詩歌の道のことであるという。

物見遊山とタイのクーデター

2006-09-21 01:18:48 | ニュース
 ひさしぶりに驚かされた。20日未明のバンコクで起ったタイの軍部クーデターである。バンコク市内を戦車が走り回り、首相府や放送局などが制圧された。タクシン首相は外遊中で、ほぼ無血クーデターであったようだ。
 民衆の心は、一時は辞任を発表しながら首相の席に居座り続けるタクシンをほぼ見放し、この日(20日)には首相退陣を求める大規模な集会が予定されていた。
 タクシン首相はいわばみずからの一族で支配する携帯電話会社(AIS)で財をなし、会社を一族名義に変えて首相になるや権限を利用して一族会社への利益誘導や、不正な節税工作を行った。当初、民衆寄りの政策で人気をとっていたが、一族の不正な工作が明るみに出るや首相退陣のデモが民衆の中から巻き起こった。この4月、総選挙が行われたが野党のボイコットや、混乱のため成立せず、再選挙が決まっていた。タクシンはプミポン国王に退陣を表明していたが、実質的な権力は握ったまま約束を反故にするような発言をくり返し、民衆の怒りをかっていた矢先の出来事であった。
 ネットのニュース速報によれば、どうやらタクシンは滞在していたニューヨークを離れると帰国せず、ロンドンに向かいイギリスに亡命したようである。

 さて、タイでは仏教界(僧院)、政治のみならず軍の頂点に国王が位置付けられている。文民の政治家を軍部の制服組が倒したと言えど、クーデターもそのいきさつがプミポン国王に報告された。とはいえ、それは民主的な手続きではありはしない。

 いま、危惧されているのはこれまでの流血の惨事からタイがすすめてきたデモクラシーがどこへいくのだろう、ということだ。
 布告された戒厳令が、解除され民衆の日常がもどり、ソンティ司令官が言ったように「できるだけ早く主権を人民に返す」という言葉が、反故にされないことを祈る。

 タイの民衆は楽天的で、ヤジ馬根性をかくせない人々だ。わざわざ、デジカメ片手に戦車を見に首相府まで出かけたりしているらしい。そのような、物見遊山の民族性が血で染まらないことを願う。

 (で、突然、そのような状況を見たいなと思ってタイに行きたくなるボクってなんだろう?)