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KIMURA の読書ノート>『新型コロナウイルスの真実』

2020年05月02日 | KIMURAの読書ノート
『新型コロナウイルスの真実』
岩田健太郎 著 ベストセラーズ 2020年4月20日

まだまだ予断を許さない状況が続いている新型コロナウイルス。連日ネットやテレビをはじめとする各種メディアでもこの話題が多く流れており、正直何が正しくて、そうでないのか分からなくなってきた。そのような中、船内で感染者がいることが分かり横浜に寄港したまま乗船客がそのままそこに隔離されたダイヤモンド・プリンセス号。その船内の様子を動画で流し、世界的に注目された神戸大学大学院教授の岩田健太郎氏がその時の状況やこの新型コロナウイルスについてまとめたものが4月に上梓された。岩田氏は感染症専門医で過去にニューヨークでの炭そ菌テロ、北京でのSARS、アフリカでのエボラ出血熱の臨床を経験している。その岩田氏が語る新型コロナウイルスとは。

本書冒頭、岩田氏は「新型コロナウイルスから自分を守るために一番大事なものは、情報です」と記している。しかし、先に述べたように、各種メディアでこの話題が満載し、正直素人が正しいことを選別する余地がなくなっている。その情報をどのように選り分けていけばよいのか。続けて、氏は「知識を身につけること」「事実と向き合うこと」そして「結論を決めつけない姿勢も大事」と伝えている。今回の新型コロナウイルスは過去に誰も経験した人はいないために、新しい情報が入るたびにぶれて当然だと言うのである。しかし、ぶれたからと言っても何を指標にしてぶれたらよいのであろうか、と素人は思うであろう。そこで本書では新型コロナウイルスについて自分で判断するために必要な事柄として「感染症の原則を押さえること」を挙げ、それを第1章(「コロナウイルスとは」)、第2章(「感染症対策」)で示している。

また、第3章では氏が乗船したダイアモンド・プリンセス号での出来事を記している。なぜ氏がここに乗船することになったのか、そして2時間で船から追い出されてしまったことなど、メディアでは報道されない、しかし誰もが知りたいことが綿密に書かれており興味深く読むことができる。内容はかなり驚愕なことも多く、改めてこのウイルス対策の難しさと政府の動きについて考えさせられる。

4章ではこのウイルスによって日本が変わっていくのかどうなのかということが書かれている。主にウイルスに対する対策のみならず、日本と日本を取り巻く周辺の国々との様々な習慣や考え方などを対比させ、日本国民としてどのようにこのウイルスと関わっていかなければならないかというところへ着地点を示している。

そして、それを踏まえた上で第5章ではこの新型コロナウイルスのみならず、様々な感染症に向き合える心構えが記されている。とりわけ「安心」と「安全」の違いについて言及してあり、ここがこの「心構え」の肝であると感じた。
本書は緊急性の高い案件として、著者の言葉を借りれば「突貫工事」で書き上げたという。それから1か月余り、まだまだ状況が悪くなっており、不安だけが増すばかりである。様々な情報が錯綜する中で、感染症専門医がこのウイルスに対して1冊にまとめた本書は読んだからと言って不安は減らないかもしれないが、それでも今後のウイルスに対しての個々における指南書になるのではないかと思えた。
  文責 木村綾子
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