目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

命のために食らう『肉弾』

2018-08-11 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『肉弾』川﨑秋子(角川書店)

前作の『颶風の王』にすでに萌芽はあった。人は食べなければ、死んでしまう。口に運ぶ物は、植物であったり、動物であったりするけれども、すべて元は生きていたものだ。自分が生きるためには、ほかの命を奪わなければならない。この小説は、究極といってもいいほどの、命のやり取りが描かれる。目を背けたくなるほどの残酷さ、すさまじさで、それは読者の面前に投げだされる。

本の装丁から察しがつくけれども、小説に登場するのは犬。しかも元飼い犬たちだ。飼い主とどんな生活があったのか、そしてなぜ今の境遇にあるのかが克明につづられ、人物造形をするように、犬造形がなされていく。いっぽうで主人公は、人生に半ば失敗してしまった若者。立ち直らせるきっかけにしようと、ワンマンな父が狩猟目的でその息子を北海道に連れていく。

(注意!以下さらにストーリーを書いています)

北海道の開放的な大自然を舞台に物語は急展開する。父とともに遭遇した羆との命のやりとり。心の傷を背負った同士、犬たちと若者の命のやりとり、そして犬・羆・若者が入り乱れての命のやりとり。壮絶な闘いが繰り広げられ、その戦闘描写には戦慄を覚える。

テーマが重く、悪寒が走るシーンがたびたび出てくる。しかも現実離れした漫画チックなところもあって、どうなんだと思う部分もある。でも読ませる。人間もたかだか一個の生き物であり、自然の一部であるということを改めて認識させられる、おそるべき小説だ。内容が内容なだけに嫌悪感をもつ人はいるだろうけど、誰しもが避けては通れない現実であり、目を覆って通過できない真実が詰まっている。

肉弾
クリエーター情報なし
KADOKAWA
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「情熱大陸」平出和也さん、次はK2未踏ルート

2018-08-05 | テレビ・映画

2009年にピオレドールを受賞した世界的に有名な登山家、平出和也さんがTBS系「情熱大陸」7/29(日)に出演していた(「天才クライマーが人生をかけて挑むK2」)。録画していたその番組をほぼ1週間遅れで昨日の夕方視聴した。

平出さんといえば、昨年シスパーレ(7611m)北東壁を完登したのがすごかったらしいが、あいにくそれをとり上げたNHKの番組は見逃してしまった。再放送をたぶんやった(?)のだろうけど、それも気づかずじまい。NHKさんまた再放送してくださいね。

それはさておき、平出さんは「情熱大陸」でインタビューを受け、シスパーレで燃え尽きたと心情を明かしていた。シスパーレは4度目の挑戦だっただけに、その達成感に昂揚し、次のターゲットを見定めることが難題になってしまったようだ。平出さんはさらに、もっとデカいことができるという錯覚に陥るといっていて、現実とのバランスを探るしかないとも。

そして、出てきた次のターゲットがK2(8611m)登攀だ。バランスを探ってK2というのだから十分に狙えるのだろう。K2の相棒はシスパーレに続いて中島健郎さん。ご存知、竹内洋岳氏のパートナーを務めたり、イッテQの登山隊にも加わっている。

番組では、偵察登山の様子を流していたけれども、今回選んだK2の未踏ルート、西壁は恐ろしいかぎりだ。平出さんご本人が雲が切れた先に見てしまったそれは、傾斜が70度もあり、圧倒的な存在感と人を寄せ付けない威圧感を示していた。目視でルート・ファインディングをしていた平出さんは、ぼそりといった。「半分くらいは行けるか」。

なんと弱気な。でも、デッカいことができるという錯覚と、現実との折り合いをつけた結果がK2西壁挑戦なのだから、このお話には必ずつづきが待っているのだろう。

参考:当ブログ
クレイジージャーニー、アルパインクライマー平出和也登場!

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東吾妻山&一切経山Part3~不動沢から五色沼・一切経山

2018-08-04 | 山行~東北

一切経山 標高 1948.8m 福島県

2018年7月15日(日) 晴れ

メンバー 山の神と私

コースタイム 6:55不動沢登山口駐車場7:10--7:44賽河原7:53--慶応山荘分岐--8:50硯石8:58--大根森--9:53五色沼10:02--10:30頃 一切経山山頂10:40--11:10五色沼(昼食)11:45--12:25硯石12:30--13:14賽河原下部13:24--13:52駐車場

4:30頃野鳥のさえずりで目を覚ます。浄土平野営場の朝は早い。登山者は早くも起き出して、朝餉のしたくをしている。山の神と私も盛大にいびきをかいているテント横の炊事棟で顔を洗い、スープ用のお湯を沸かし始めた。

6:00頃テント撤収開始。車に荷物を運び込んで、6:40に浄土平野営場を出た。磐梯吾妻スカイラインを移動し始めると、すぐに火山ガスに注意、窓ガラスを閉めてくださいの注意喚起の看板が出てくる。おお、怖と開け放っていた窓を全速力で閉める。とすぐに車窓には雲海が見え始めた。


浄土平を越えると、雲海が目に飛び込んできた

なかなかの絶景で、ツーリングのお兄さんが路肩にバイクを停めてその眺めを堪能している。われわれもどこかでゆっくり見られないかと思っていたら、おあつらえ向きの駐車スペースが出てきた。皆考えることは同じで、後から1台滑り込んできた。見渡す限り純白の雲が続いていて、至福のひと時。

でも、ゆっくりもしていられないと、カメラでパチパチ撮ったあとに、すぐに出発した。かなりの高度感を覚える不動沢橋を越えて、すぐに左折。不動沢の駐車場に到着した(6:55)。

 
左:不動沢の駐車場。手前にきれいなトイレもある 右:不動沢の登山口。左隣に大型車専用の駐車場がある

そそくさと準備を整え、隣接したきれいなトイレに寄って、7:10登山開始となる。気温は、すでに昨日と同じ22、3℃はあって歩き出しにしては暑い。

不動沢駐車場の下にバスなど大型車専用の駐車場があるのだが、そんなことは関係ないと、おそらく山のぼらーのものと思しき自家用車が停まっていた。そのすぐ隣に登山口はある。

 
左:最初の休憩ポイント、賽河原。まったく賽河原には見えない場所 右:何の変哲もない場所に山鳥山の標示

沢を渡るとすぐに急登が始まり、修行道となる。まったくの無風、湿度も高く、ねっとりとした空気が肌にまとわりつく。登りはじめて10分くらいのところで、へばったジモティおばちゃんパーティが早くも休憩をとっていた。

山の神と私は、もうちょっと耐えて、登山口から30分ほどの賽河原まで足を延ばし休憩をとる。賽河原という地名の割には、石がごろごろした場所ではなく、その名前に不自然さを感じた。ごくごくとのどをうるおし、涼を求めて先を急いだ。

 
左:上のほうにも標示がついていた井戸溝。木が成長したのだ 右:とにかく暑かった単調な横移動の道

由来がまったくわからない地名が続々と出てくる。山鳥山。野鳥が多いのか。井戸溝。泉でも湧いていたのか。賽河原に続いて、頭上に「?」が浮かんでくる。 

 
左:巨大な一枚岩があると勝手に思っていた硯石 右:大根森で涼風に吹かれる

慶応山荘の分岐を通り越し、8:50地図上でここまで来れば一息つけると思っていた硯石に到着する。この場所もあれって感じで、硯石と呼ばれる岩はない。なんで?と山の神とこの山の不思議さを語り合う。

そこから暑い暑いを連発しながら登高していくと、突然目の前が開けた。大根森だ。なぜ大根森? ここも意味不明な地名だった。それはいいとして、風が抜けて、最高に涼しい場所だった。見晴らしも抜群で休憩にはもってこいかもしれない。ただ日影がないので、直射日光は避けられない。


家形山分岐付近から五色沼と一切経山を望む

暑さに辟易しながらも、辛抱強く登っていくと、ついに五色沼が見える丘に出た。周囲に人影はなく、五色沼独り占めだ。山の神もいたから2人占めか。一切経山もはっきりとその山容を現し、目を凝らすと山頂付近に大勢の人がいるのが見えた。

 
左:一切経山への炎熱の道を行く 右:一切経山への最後のひと登り。五色沼と家形山を見下ろす

9:53五色沼横の登山道に出て休憩とした。思いのほか登山者は少ない。

ここで再び大量の水分補給をして腰を上げる。一切経山への道は、風が通らず、蒸し風呂に近い不快な道だった。やがて森林限界なのか、あるいはやせた土壌のせいなのか樹木がなくなり、風が抜けるようになって、幾分ましな体感温度になる。

 一切経山山頂

10:30頃一切経山の山頂に到達した。山頂は浄土平側から行列をなして登ってきている人が次々にやってきていて、すごい人だった。山頂の標柱にはひっきりなしに記念撮影をしようと、登山者やハイカーが押し寄せてくる。私はサッと1枚撮ろうとカメラを出したのだが、なんと電池切れ。さっきまではだましだまし、1枚撮っては電源を落とすということを繰り返していたのだが、もうそれも通用しなかった。電源ボタンを押し、グイーンとレンズが出たと思ったら、グイーンとすぐに引っ込んでしまう。なんてことだ。周囲は360度の大展望なのに写真を1枚も撮れないとは。目に焼きつけるしかないか。よりによって、スマホも車に忘れてきてしまった。

上と下の写真は、山の神がスマホで撮影したもの。ちょうだいとねだってもらった。


吾妻小富士(ちょっとピンボケ)

10:40大きなストレスを抱えながら、山頂を後にする。五色沼まで戻り、昼食にした。相変わらずこちら側は登山者が少なく、ゆったりとスペースを占領し、くつろぐことができた。

11:45あとは下るだけと歩き始めた。徐々に暑さは増していき、五右衛門風呂のようになってくる。途中からおそらく30℃を超えていたに違いない。不快指数はうなぎのぼりで、早く下山できないかと念じながら自然と足の運びは早まる。そして駐車場にたどり着いたのは、13:52。車のドアを開けると、信じられないくらいのもあ~とした空気があふれ出てきた。ダッシュボードには暑さで倒れた虫が。ほんとうに暑い、いや暑すぎる1日だった。

おまけ:山頂で山の神が浄土平に下って、バスかタクシーで不動沢に移動しようと言い出した。下山時の暑さを想像するとげんなりしたからだ。冷静に考えれば、バスなんて本数がほとんどないだろうし、タクシーを呼んだら迎車代をとられる。結果やめたのだが、やめておいて正解だった。実際に不動沢のバス停で時間を見たら、日に2、3本しかなく、たしか午後はなかったように記憶している。

東吾妻山&一切経山Part1~東吾妻山へ戻る
東吾妻山&一切経山Part2~浄土平野営場へ戻る

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする