京都も入梅して、午後からは雨がしとしと。むし暑い夕べですが、ひとときの楽しみとして、「CARESTINI - THE STORY OF A CASTRATO」(Virgin classics 00946 3 95242 2 8)から、カール・ハインリヒ・グラウンのアリア「自らの不遇を眺めつつ」をきくことにします。カウンターテナーのフィリップ・ジャルスキー、エマニュエル・アイムとル・コンセール・ダストレエによるCDで、ジャルスキーはいつもながら美しい歌唱(低域は弱いですが)です。
カール・ハインリヒ・グラウンは、バッハと面識があったというヨーハン・ゴットリープ・グラウンの弟で、オペラ作曲家として名高く、また、兄と同じくヴァイオリンの名手としても知られています。ハインリヒは1704年生まれ(兄は1703年生)で、世代としてはバッハの長男フリーデマン(1710年生)に近く、バッハからみれば次世代の音楽家ということになり、音楽の趣味もずいぶんちがいます。ここできくアリアはオペラ「オルフェオ」(1752年初演)のもの。
このCDの主題は、ハッセやグラウン兄弟と同世代のカストラート、ジョヴァンニ・カレスティーニ(1700年生)の足跡を音楽でたどる趣旨で、いわばカレスティーニへのトリビュート・アルバムといえるものです。ヘンデル、ハッセ、グラウン、グルックのほか、ニコラ・ポルポラ、ジョヴァンニ・マリア・カペッリ、レオナルド・レーオといった、当時有数のオペラ作曲家が、カレスティーニのために作曲したアリアがずらっと並んでいて、まずまず楽しめます。