■Darty Water / The Standells (Tower / 東芝)
今では元祖パンクロックの代表的なヒットシングルとして伝説になっている1枚ですが、そんな馬鹿野郎な扱いが、サイケおやじとしては大いに不服です。
確かに反抗的な歌詞、ふてぶてしい歌いっぷり、グイノリのビートで演じられるブルースロックは、後年のそれを強く感じさせますが、認めたくないのが本音……。
そして、だからといって、このスタンデルズと「Darty Water」の魅力は些かも損なわれるものではありません。
明らかにストーンズの影響を受けた、モータウンサウンドのロック的な解釈とリフが全篇を貫き、タイトルどおりのダーティな歌い回しとハーモニカのエグイ味わいは、不良性を刺激するロックの本質的な魅力に満ちていると思います。
スタンデルズは1962年頃から活動を始めたらしく、メンバーはトニー・バレンチノ(g,vo,hmc)、ラリー・タンブリン(org,vo)、ゲイリー・レイン(b)、ディック・トッド(ds,vo)の4人組で、中でもディック・トッドは局地的には売れっ子だったらしいのですが、とにかくこの人がリーダーでした。
で、その顔が効いたのか、MGMや Vee Jay あたりの有名レーベルにも録音を残し、映画出演や営業も上手くいっていたということですが、やはり大ブレイクしたのは、1965年末に発売した、この「Darty Water」です。なんと本国アメリカのチャートでは翌年の夏にトップテンヒットを記録し、我国でも昭和41(1966)年の末頃にはラジオから流れていましたし、バンド名は失念したんですが、GS全盛期の昭和43(1963)年には「Darty Water」を確かに演じていたグループを、私はライプで見ています。
そして例によって告白すると、冒頭でストーンズ云々なんて書いたんですが、実は私はストーンズよりも先に、このスタンデルズの「Darty Water」を好きになり、本日掲載したシングル盤を買ったのです。それは昭和42(1967)年のことでした。
以来、スタンデルズは私の心に残る存在となり、4枚位は出ているというLPも聴きましたが、結局は「Darty Water」に勝るものは無いと思っていますし、一応は世界各国でシングルヒットも他に出しているのですが、所謂「一発屋」という位置づけかもしれません。それほど、この1曲は突出して凄い名演なのです。
しかし、これが好きだからといって、サイケおやじは決してパンクロックを肯定するわけではありません。まあ、そのあたりの頑迷さが、私の Old Wave な自己矛盾なのですが……。