■春休み / 水谷麻里 (ビクター)
ど~しても内向きになりがちな冬が過ぎ、ウキウキするような陽光の中にあっても、やはり春は別れと旅立ちの季節ですから、センチメンタルな気分と高揚するハートビートを同時に感じる事が出来るという、なかなか一年の内では貴重な時間だと思います。
それは齢を重ねても変わらぬ心情でありましょうし、殊更青少年期には「春休み」という、せつなくも前向きな時間が用意されている事は、人それぞれに様々なドラマが作られる素敵なプレゼントかもしれません。
さて、そこで本日ご紹介するのは、そのものスバリっ!
水谷麻里が昭和63(1988)年早春に出したシングル盤A面曲「春休み」なんですが、水谷麻里の春の歌と言えば「春が来た」があまりにも有名であり、そのブッ飛び具合は追従を許さぬ仕上がりだった事を思えば、この「春休み」は正統派アイドル歌謡の王道作品として、これまた如何にもの王道路線なんでしょうか?
と書いたのも、当時は例の「おニャン子」系アイドルが全盛期であり、所謂集団アイドルの端緒的ブームの中で、水谷麻里は「単体」として頑張っていたのですから、作詞:サエキけんぞう&作曲:平井夏美 そして編曲:川上了の制作スタッフも本気度は高かったように思いますし、実際に仕上がった楽曲はアップテンポの洋楽歌謡とでも申しましょうか、リアルタイムで流行っていたサンウド作りは当然ながら、平井夏美の書いたメロディラインには随所に往年のヒットポップス風味が滲み出ており、匠の技の冴えを感じてしまいますねぇ~~♪
ちなみに平井夏美とは、ビクターやソニーで秀逸、そしてマニアックなアイドルポップスを手掛けていたディレクターのK氏という説が知られていますが、とにかくビートルズ&ビーチボーイズへの造詣の深さは相当なものと思うばかりです。
閑話休題。
で、肝心の水谷麻里の歌唱は決して万全とは言い難く、失礼ながら危うい部分を個性とか魅力と思えば、なかなか胸キュンの印象が残ります。
そして特筆しておきたいのが、彼女にとっては、これがアイドル時代最後のシングル曲になってしまったという事実りであり、それは皆様ご存じのとおり、人気漫画家の江口寿史との結婚は彼女が選んだ道ですから!
その意味で曲終わりに彼女のデビュー曲「21世紀まで愛して」のメロディがループ気味に入れられているのは大切な意味があったのだっ!?!
というふうに解釈されているそうで、実はサイケおやじは、それに関して知ったのは後追いなもんですから、本音では実感していなかったんですけど、なかなか上手いフェードアウトの仕掛けにはニンマリさせられましたですよ。
う~ん、そう思えば――
宝石箱へと想い出をつめる
Bye-bye 春休み
という歌詞も相当に意味深ですねぇ~~、サイケおやじは好きです♪♪~♪
最後になりましたが、サイケおやじが一番に自覚した春休みといえば、高校を卒業した直後の時期で、運良く進学も叶い、これからは大人の仲間入りとばかりに、それまでは後ろめたい気持ちを隠しながら入場していた成人映画を上映している映画館へも堂々とっ!
てな事を実践していたのですから、いやはやなんとも、今でも額に汗が滲むのでした。