OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

吼えろミンガス!

2008-09-17 17:05:33 | Jazz

下げる頭が幾つあっても足りない……、という1日でした。

ということで、本日は――

Oh Yeah / Charlie Mingus (Atlantic)

チャールス・ミンガスと言えばジャズ界では最も強面な親分というイメージでしょう。実際、「怒りミンガス」とさえ呼ばれるほど、常に暴虐的なエネルギーに満ちた演奏、そのラディカルな姿勢は、黒人音楽文化に深く根ざしていますから、ミンガス組が吐き出す「音」と「熱気」はモダンジャズのひとつのスタイルとして圧倒的です。

もちろん、そこに集められる子分達も筋金入りの曲者揃い! というか、生半可な実力と根性では、とてもバンドレギュラーは務まらないのが本当のところでしょう。ヘマをやらかして殴られた、破門同様に叩き出された者は伝説化したエピソードになっているほどです。

さて、このアルバムは、そんなミンガス親分が絶頂期に作った特異な人気盤♪ 何故「特異」かといえば、親分が何時もの担当楽器であるベースを弾かず、歌とピアノに専念しているからで、つまりは雰囲気作りとリーダーシップに精力を傾けているというわけです。

録音は1961年11月6日、メンバーはチャールス・ミンガス(vo,p) 以下、ジミー・ネッパー(tb)、ブッカー・アーヴィン(ts)、ローランド・カーク(ts,fl,manzello,stritch)、ダグ・ワトキンス(b)、ダニー・リッチモンド(ds) というアクの強い面々です――

A-1 Hog Callin' Blues
 いきなりミンガス流の「ハナモゲラ語」、続いてゴンゴン響くピアノが鳴りだして始まるのが、この「豚鳴きのブル~ス」です。曲そのものは8小節のリフなんですが、ホーン隊の味な真似が効いていますから、気分は完全に混濁のハードバップ!
 アドリブソロはローランド・カークがテナーサックスでブキー、ブキーと豚鳴きすれば、背後ではジミー・ネッパーのトロンボーンやミンガス親分の掛け声と叱咤のピアノが呻き、蠢きます。
 そしてついにはローランド・カークが驚異的なノンブレス奏法も使いながら激ヤバの世界を作ってしまうんですねぇ~♪ 本当にバンドが一丸となって豚小屋の喧噪を作り出していきます。
 豚は太るか、死ぬしかない!
 野太いリズム隊のグルーヴも圧巻!

A-2 Devil Woman
 これまたミンガス親分がピアノの弾き語りで、訳わからずの呻き歌! そしてグリグリに熱いブル~スの演奏が、スローで混濁したリズム&ビートで演じられます。
 ミンガス親分のピアノは決して上手いとは言えませんが、完全な味の世界で、気分は真っ黒! そしてローランド・カークのテナーサックスが伝統と不条理のラフミックスならば、ブッカー・アーヴィンは何時ものようにドロドロのヒステリック節です。
 あぁ、これもハードバップの極北でしょうねぇ~~♪
 なんて思っていたら、ジミー・ネッパーが幾分モゴモゴした音色で、棒読み台詞のようなブル~スを聞かせてくれるのでした。
 いや、実際、なんとも「ぶるうすなブル~ス」だと思います。

A-3 Wham Bam Thank You Ma'am
 全然、意味不明の曲タイトルですが、原盤裏解説によればマックス・ローチの口癖のようです。そして演奏は、ど真ん中の過激なミンガス流ハードバップ!
 分厚いホーンアンサンブル、ビシバシに容赦の無いリズム隊、そしてブリブリに突進するアドリブパートに熱くさせられます。ブッカー・アーヴィンの直線的なテナーサックスとローランド・カークのツボを外さないストリッチの対決が実に良いですねぇ~。ちなみに「ストリッチ」というのはローランド・カークが独自に開発したソプラノサックスとクラリネットのハーフみたいな楽器です。

B-1 Ecclusiastics
 ちょっとした哀感も漂うミディアムテンポの混濁ジャズです。
 と言っても、難解なところ無く、ミンガス親分が弾く妙な味わいのピアノが楽しめます。いや、実際、何とも言えませんねぇ~。ちなみにミンガス親分はピアノに専念した「Plays Piano (Impulse!)」なんていう珍盤(?)も作っているほどです。
 またローランド・カークが複数管楽器同時吹きという得意技を披露! バックのリズム隊との息もバッチリという快演を披露していますよっ♪
 う~ん、それにしても終始、「オ~、ヤ~」と叫び続けるミンガス親分の存在感は抜群!

B-2 Oh! Lord Don't Let Them Drop That Atomic Bomb On Me
 「神様、原爆を落とさないで」という、かなり意味深なタイトルの蠢きゴスペルジャズです。
 そしてアドリブパートではシンプルにして熱気溢れるミンガス親分のピアノ、ローランド・カークの特殊アルトサックスという、マンゼロが聞かれますが、背後から迫ってくる倦怠したホーンアンサンブルとの融合も、実に気持ち良いですねぇ~。

B-3 Eat That Chicken
 これは一転してドタバタと楽しい歌と演奏で、気分は完全にスイング&ディキシー♪ 意味不明の歌詞を歌うミンガス親分に調子を合せる子分達、特にジミー・ネッパーは潔い快感トロンボーンを披露しています。
 また伝統の再現に専念するローランド・カークも素晴らしく、ご存じのように、この盲目のジャズメンの才能と耳の良さには敬服する他はありません。

B-4 Passions Of A Man
 そしてオーラスは音のツギハギというか、フリージャズと言うか、ほとんど楽しくない演奏です。ミンガス親分の「ハナモゲラ語」もホラー映画の効果音か下手な漫談のように聞こえますし、ジャズにはお約束のアドリブパートだって明確にはありません。
 う~ん、???

というアルハム、最後はちょいと煮え切りませんが、それでもミンガス流のモダンジャズが楽しめる傑作だと思います。特にA面は良いですねぇ~。体の中からエネルギーが湧いてくるというか、中でも「Hog Callin' Blues」なんか朝一番に聴くと、今日も豚小屋のように騒がしい現実で頑張ろうという気力が蘇るのでした。

蘇る勤労意欲! ミンガス親分に感謝です。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 秋吉敏子の一途な情熱 | トップ | ゴルソン&ウイスパー・ノット »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Jazz」カテゴリの最新記事