久々に訪れた町で、昔、贔屓にしていたてんぷら屋へ行ってみたら、洒落たフランス風のレストランになっていました。う~ん、時代は変わるなぁと思っていたら、店の横口から、昔のおやじさんが出てきたので、訪ねてみたら、代替わりしたのを機会に、今風にしたと……。
いや、私はおやじの出してくれる、あの、甘ったるい天丼が食いたかったんですが……、と恐る恐る言ってみたら、それなら、弟子の店があるから、そこへ行きなさい、連絡しておくから、との返事で、結局、お弟子さんの店が近くに開いていたので、昔馴染みの味を堪能してきましたです。
う~ん、久々の幸せですね~♪
ということで、本日の1枚は――
■Brubeck Time / The Dave Brubeck Quartet (Sony)
モダンジャズ全盛期に一番人気があったのは、マイルスでもコルトレーンでもなく、デイブ・ブルーベック・カルテットだったと云われています。
このバンドの大スターは、アルト・サックスのポール・デスモンドというガンコおやじで、ハスキーでありながらソフトな音色で、美しいアドリブ・メロディを奏でる、当に天才♪
対してバン・マスのピアニスト、ディブ・ブルーベックは生硬なノリと頑なな情念で勝負する人で、この2人のコントラストが絶妙な雰囲気、それが人気の秘密でした。
もちろん、この2人は白人ですが、1950~1960年代のアメリカはジャズは下賎な黒人音楽という見方が一般的だったので、それなりに偏見と戦っていたようです。そして白人にジャズの本当の楽しさを広めたのもこの2人で、ついには1954年11月、タイム誌の表紙にも登場しています。
で、このアルバムは、それにあやかって製作されたものですが、まず冒頭の「Audrey」が静謐な中にも独特のやすらぎと温か味があって、最高です。もちろん、この曲はオードリー・ヘップバーンに捧げて2人が共作したもの♪ とにかく素晴らしい出来で、この1曲だけで、このアルバムの価値があると言っても過言ではありません。
しかも他の曲も楽しくスイングするものばかりですから、安らいだ気分になること請け合いです。ちなみにブルーベックのピアノは、我国の評論家の先生方に言わせると、スイングしないと決めつけられていますが、通常のジャズの観念とは別次元でちゃんとドライブしていると私は思います。
つまり柔らかく流れてスイングしすぎるデスモンドと一緒で、ちょうど良い按配ですね♪ まあ、途中でクラシックの有名曲を入れたりする遊び心が、軽蔑の対象にもなっているんですがね……。
そのあたりは好き嫌いがモロに出てしまうところではありますが、とにかく、「Audrey」だけはオススメの名曲・名演です。
評論家の評なんて、あたしゃまともに聞いた事はありませんな。連中はジャズってのは、暗い地下室でしかめ面して聞くもんだとでも思ってるようだし。
ブルーベックほど日本で評論家受けしないジャズメンは珍しいでしょうね。
ジャズ喫茶でも、ブルーベックをリクエストしにくい雰囲気ですし、ジャズ・マスコミもあまり取上げないでしょう。
しかしデスモンドは人気ありますよね~♪ 誰もマネ出来ない境地の演奏でした。
このバランスが良すぎるところが、日本人向けではないのかもしれません。なんにジャズ界には破滅型で破天荒なメンツが多いですから。