■The Song Book / Booker Ervin (Prestige)
アクの強いタフテナーで新主流派の趣も強いブッカー・アーヴィでは多分、最高の人気盤がこのアルバムだと思います。
そのミソはもちろん演目の分かり易さで、アルバムタイトルどおりに有名スタンダード曲をワンホーンで吹きまくった痛快さ! しかも強烈無比にしてジャズ的なセンスに満ちたリズム隊も大活躍という魅力があります。
録音は1964年2月27日、メンバーはブッカー・アーヴィン(ts)、トミー・フラナガン(p)、リチャード・デイビス(b)、アラン・ドウソン(ds) という、実に決定的なカルテットです。
A-1 The Lamp Is Low
トミー・フラナガンが作りだす緊張感と和みが共存した畢生のイントロから、アップテンポでバリバリにテーマを吹いていくブッカー・アーヴィンの潔さ! アラン・ドウソンの爽快なシンバルワークと怖いリチャード・デイビスの4ビートウォーキングも侮れません。
そしてアドリブパートでは野放図なブローと歌心を見事に両立させたブッカー・アーヴィンがいきなりの快演を聞かせてくれますが、それも容赦無いリズム隊の煽りがあればこそでしょう。
実際、アラン・ドウソンの小気味良いドラミングは十八番のビシビシ決めるハイハットが強烈ですし、グリグリに突っ込んでくるリチャード・デイビス、新しいセンスも混ぜ込んだトミー・フラナガンのピアノにはゾクゾクさせられます♪♪~♪
全く間然することの無い名演で、特に後半、リズム隊の個人技が出るあたりでは、心底シビレがとまりません。
A-2 Come Sunday
前曲のド派手な興奮を、すうぅぅぅ~と冷まして安らぎの世界を現出させてくれるのが、このデューク・エリントンの有名オリジナル♪♪~♪ 意外なほど静謐なムードでテーマメロディを吹奏するブッカー・アーヴィン、それに寄り添うトミー・フラナガンが流石のサポートですし、アドリブソロも素晴らしい限りですねぇ~♪
またリチャード・デイビスの密かな自己主張、アラン・ドウソンの些か落ちつきの無いブラシも、ここでは問題ないでしょう。
肝心のブッカー・アーヴィンは主題を吹くだけなんですが、それが結果オーライなのでした。
A-3 All The Things You Are
そして続くのが、またまた嬉しいというモダンジャズでは定番の歌物スタンダードですから、トミー・フラナガンの上手すぎるイントロから快調のテンポが設定されれば、後は痛快なモダンジャズ天国!
奔放な中にも歌心を蔑ろにしないブッカー・アーヴィンは、明らかに凄いリズム隊にリードされている感じですが、持前のヒステリックなフレーズ展開を忘れていないのは立派です。
しかしそれもトミー・フラナガンのスイングしまくって、尚更に素晴らしい歌心というピアノに圧倒された感があります。もちろんベースとドラムスもグルになっていますから、いやはやなんともの結論とはいえ、やはり名演でしょうねぇ~♪
B-1 Just Friends
チャーリー・パーカー(as) やソニー・ステット(as,ts) が十八番としている曲だけに、新進気鋭のブッカー・アーヴィンも油断ならないところですが、またしてもリズム隊の凄い煽りがありますから、名演は完全なる「お約束」になっています。
とにかくブッカー・アーヴィンのテナーサックスはスピードとパワー、エキセントリックなフレーズの連発で押しまくるスタイルに徹していて、歌心は二の次になっていますが、好感が持てます。
そしてその部分を補ってくれるのが、トミー・フラナガンの存在ということで、全てが歌のアドリブフレーズは流石の一言! 続くリチャード・デイビスのペースソロの怖さも特筆すべきでしょう。本当に凄いですよっ!
またアラン・ドウソンもハイハットを中心に得意技を完全披露しています。
B-2 Yerterdays
激しい曲の後には和みのバラードという定石の名演ですから、ここでのブッカー・アーヴィンはソフトな情感を前面に出したテーマの吹奏が見事です。そのダークでまろやかなテナーサックスは、ちょっと何時ものイメージとは異なる魅力がありますねぇ。
しかしリズム隊は相変わらずの怖さ、厳しい姿勢を崩していませんから、幻想的な味わいも魅力なトミー・フラナガン、執拗なリチャード・デイビス、ジコチュウなアラン・ドウソソンという個性も、ここでは見事な纏まりに収斂していると思います。
う~ん、トミー・フラナガン、最高っ!
肝心のブッカー・アーヴィンも終盤では本領を発揮しています。
B-3 Our Love Is Here To Stay
ここまで全てが名演ばかりというアルバムの締め括りが、これまた素敵なスタンダード曲なんですから、たまりません。
まずはブッカー・アーヴィンのテーマ吹奏からして、なんとも言えない余裕と和みがたっぷり♪♪~♪ しかしそれがアドリブパートに移行すると、激しくヒステリックなフレーズも交えた、まさにブッカー・アーヴィンだけの世界に変質するのですから、強烈です。
快適なテンポを維持しつつ、熱気溢れる煽りを展開するリズム隊も強い印象で、ビシバシにキメまくりのアラン・ドウソン、リラックスしてスイングするトミー・フラナガンの中庸感覚、過激と安定感のバランスが秀逸なリチャード・デイビスという3人の個性には、もはや脱帽する他はありません。
ということで、「Book」シリーズ4作を含みプレスティッジで制作された9枚の中では、最も聴き易く、纏まったアルバムでしょう。それは特にトミー・フラナガンの参加が大きいと思いますねぇ~♪ 実際、ここでの上手いイントロ作りから巧みな伴奏、スイングしまくったアドリブソロは、トミー・フラナガンにしても代表的な名演じゃないでしょうか。
それとアラン・ドウソンの素晴らしさも特筆もの! 私なんかは、このアルバムでアラン・ドウソンに目覚めたほどで、特にビシッとキメるハイハットの気持良さ、ドシンと響くパスドラのタイミング、ジコチュウ寸前の目立ちたがりには夢中にさせられました。
また怖いイメージを崩さないリチャード・デイビスも流石の存在感だと思います。
ですから、何時もはツッコミが激しすぎてバランスを崩したり、あるいはリーダーセッションということで考え過ぎるのか、持前の奔放なスタイルが裏目に出ることも多いブッカー・アーヴィンにしても、忌憚の無いところを表現出来たじゃないでしょうか。
アルバム全部が名演揃いの中にあって、まずはA面ド頭の「The Lamp Is Low」に、このセッションの成功がしっかりと刻まれていますから、後は夢中になって聴いていくだけという、真の人気盤になっているのでした。
過去のプログを、演奏者で検索して読ませてもらっています。
ミンガスのカーネギーホールライブ盤は、カークの紹介など読んでいて「その通り」と嬉しくなってしまいます。
アービンの本盤は確かに人気有りますね、さっそく紹介文を読みながらレコードを聴きました。本当にうまく紹介されています。
トミー・フラナガンのピアノが、人気の有る大きな理由だと思うけど FREEDOM BOOK や HEAVY でジャッキー・バイアード との相性の合った演奏を聴くとフラナガンでは荷が重すぎる感じがするけど、そんなこと有りません?
ありがとうございます。
過分なお言葉に恐縮しております。
「Freedom Book」も好きな1枚です。
ブッカー・アーヴィンのリーダーセッションでは、ホレス・パーランやジャッキー・バイヤードという、これまたアクの強いピアニストが起用されますが、流石に相性もバッチリですよね。
過激さと汎用度数の高いスタイルは、案外と物わかりが良かったして、個人的には気にいっています。
その意味では、トミー・フラナガンは異分子という感じなんですが、これまた意外にも頑固な存在が、このアルバムを多面的に楽しめる要素じゃないかと思います。
ブッカー・アーヴィンにも、ほどよい緊張感があったのかもしれません。
プレスティッジの諸作は、本文にも書いたように、どこか考えすぎたところがあって、個人的には好き嫌いがあるんですが、若い頃にはかなり熱を上げていたのも確かです。
ギルド・マホネスのピアノが入った「Blues Book」とかも好きですよ。
これからも、よろしくお願い致します。
「Blues Book」ジャケット、中身とも良いですね。
ブックシリーズ残り曲にと写真の別テイクを使った「GROUVIN' HIGH」も好きなアルバムです。一番はまったのは「HEAVY!」A面冒頭二曲とB面二曲目は大音量でよく聴いています。
それとブルーノートの「IN THE BETWEEN」、アクの強いアービンが珍しくダンディに演奏にしているB面ラストなど未だに聴きあきません(私、結構聞き飽きやすい方で昔よく聞いたのに今は全く聴かなくなったレコードかなり有ります)。
レス、遅れて申し訳ございません。
「Heavy」も熱演盤ですよねぇ~♪
ちなみにミンガスグループに在籍中の映像を見ると、この人はほとんどアクション無し、直立不動で、あの脂っこいフレーズを連発していて、驚きました。
またエリック・クロスとの共演盤も、エリック・クロスのアルトがブッカー・アーヴィンにクリソツで、これも驚きでしたよ。