■Help / The Beatles (Parlophone / 東芝オデオン)
これは少年時代のサイケおやじが初めて買ったビートルズのLPです。
A-1 Help
A-2 The Night Before
A-3 You've Got To Hide Your Love Away / 悲しみはぶっとばせ
A-4 I Need You
A-5 Another Girl
A-6 You're Going To Lose That Girl / 恋のアドバイス
A-7 Ticket To Ride / 涙の乗車券
B-1 Act Naturally
B-2 It's Only Love
B-3 You Like Me To Much
B-4 Tell Me What You See
B-5 I've Just Seen A Face / 夢の人
B-6 Yesterday
B-7 Dizzy Miss Lizzy
説明不要、ビートルズが人気絶頂時に出したアルバムで、「涙の乗車券」「Help」「Yesterday」の三大メガヒットが収録された傑作ではありますが、掲載ジャケ写を裏表逆にしてあるのは、日本で発売された昭和40(1965)年当時、レコード屋では実際にそうしてディスプレイしている店が普通だったんですよっ!
このあたりは、加山雄三主演の大ヒット映画「エレキの若大将」の劇中、スミちゃんが働いている楽器店でも、そうなっていましたから、皆様にはご確認していただきたいところです。
もちろん度々述べてきたとおり、当時の我国はベンチャーズが一番人気で、それを猛追していたのがビートルズという真相も、所謂ミーハーという女の子のファンが多かったのはビートルズがアイドルだったからです。
そしてリアルタイムで作られた映画「Help」を文字通りの邦題「4人はアイドル」として公開し、このLPがサントラ盤として売り出された実態も忘れられないところでしょう。
しかし、その内容が単なるR&Rやアイドルポップスを超越していたのは言うまでもありません。
まず先行シングルとなった「涙の乗車券」のヘヴィなギターサウンドは、これが日本で発売されてヒットした昭和40(1965)年の梅雨時において、モノラル放送のラジオでは雑音スレスレの歪みとなっていたほどの衝撃力がありましたし、個人的にはズレたようなコーラスやドタバタしたドラムスが逆に強いビート感を放出しているところに心地良い違和感を覚えていしました。
また今となっては虚無的という言葉で表現出来る、煮え切らない胸キュンメロディも最高ですよねぇ~♪ 最終コーラスの「my baby don't care」のフェードアウトリフレインも潔くない感じで、それが妙に印象的でした。
さらに次なるシングル曲として夏に発売された「Help」が、これまた強烈!
いきなりのシャウト一発! そこからスピードのついたパワーポップな展開の中で、ジョンのリードボーカルを表裏一体で追いかけるポールとジョージのコーラス♪♪~♪ エレキギターの合の手ってぽいキメのアルペジオも好ましく、ビートルズの楽曲の中でも特に上位にランクされる傑作だと思います。
ちなみに前述の映画「4人はアイドル」が日本で封切られたのは確か11月頃だったと記憶していますが、このアルバムが発売されたのは、それに先立つ9月の事で、なんと同時にシングルカット曲として「Dizzy Miss Lizzy」が日本独自で出され、これは黒人R&Bのビートルズ的カパーの決定版でしたから、その刺激的なギターリフや熱いジョンのシャウトがウケまくり♪♪~♪ まさにピカピカの新曲として、個人的にもシビれましたですねぇ~~♪
しかし当時の少年にとって、LPを買うなんていうことは本当に大事業であり、容易なことではありませんでした。そのあたりの事情はサイケおやじと同世代の皆様以外でも、充分に共感していただけるものと思いますが、レコード会社の思惑も同じところにあって、なんと年末までには、このアルバム収録の人気曲が幾つもシングル盤やコンパクト盤にカットされて発売され、もちろんラジオからは流れまくりの大ヒットになっています。
それは10月に出た胸キュンのフォークロック「恋のアドバイス」、そのB面に収められた、ちょいとラテンポップな「Tell Me What You See」が流行っていた11月には「The Night Before」と「Another Girl」のカップリングシングルが出るという勢いです。とりわけ「The Night Before」は、独得のスピード感とビートルズならではのメロディ展開が気持良すぎる隠れ名曲として人気が高かったですねぇ~♪ これは今でも変わりないと思います。
気になる永遠のスタンダード「Yesterday」は、もちろん同じ頃にシングルカットされましたが、驚くなかれ、リアルタイムの我国ではリンゴが歌うC&Wのカパー曲「Act Naturally」のB面扱いだったんですよっ! しかも最初はそんなに爆発的な評判にはなっていなかったと記憶しているのですが……。
まあ、それはそれとして、サイケおやじは当然ながら、それらのシングル盤をリアルタイムでは買っていません。何故ならば、既にLPをゲットする覚悟を決めていましたし、それでなくとも乏しい小遣いの中では、他にもお金の使い道が沢山ありました。
そして幸せだったことに、ビートルズの楽曲は毎日、常にラジオから流れていましたし、従姉からレコードを聴かせてもらう事も出来たのです。
しかし、それでも、このアルバムを買ったのは、「LPを買う」という行為そのものが大人へのステップであり、そうした背伸びが、少なくとも少年時代のサイケおやじには必要だったからに他なりません。
まあ、このあたりは未成年でありながら成人映画館へ入ったり、酒やタバコに手を出したりする事と共通の心理と行動ではありますが、高価なLPを買うためには小遣いの倹約が必須であり、非常な忍耐を要しましたですねぇ。
例えば10円のカップアイスを割り箸で作られた5円のアイスキャンディーにするとか、漫画雑誌は実家の隣にあった町医者の待合室で楽しむとか、もちろん他のレコードもプラモデルも買わず、所謂我慢の子に徹していたのですから、若い頃の苦労はなんとやら!?!
ですから、ついに年末になって、このLPを買えた時の嬉しさは、今でも筆舌に尽くし難いものがあります。
そして何よりも感動したのが、今まではモノラルでしか聴けなかった歌と演奏が、最新音響で作られたリアルステレオミックスで楽しめるという事実でした。実際、それは明瞭にシビれるエレキギターの迫力や当時は良く分からなかった隠し味的なエレピの音色の不思議さ、また力強くて用意周到なボーカル&コーラス、さらに粒選りの楽曲の新鮮さ!
それがLPという長時間メディアであれば、アナログ盤片面毎の流れも実に素晴らしく、最新ロックのA面に、ちょっと静的なB面の対比が提供された最後の最後で炸裂するロック王道の「Dizzy Miss Lizzy」は、本当に痛快至極でした。
ということで、映画の「4人はアイドル」を観たのは翌年になっていたんですが、このアルバムを自分だけのものにした頃のサイケおやじは、純粋なビートルズファンになっていました。
う~ん、我ながら、このあたりのビートルズを聴くと、ウブだったあの頃が懐かしくも面映ゆい気分になるのでした。
コメント、ありがとうございます。
これほどのアルバムを飽きてしまったというのは、私も同じです。それは次に「ラバーソウル」という超絶の名盤が出た所為でもあり、またビートルズ以外にも素敵なミュージシャンが大勢存在していたからでしょう。
良い時代でした♪
すごい人気だと新聞に出ていました。
私は神戸で12月に観ました。
Ticket to Ride と Help のシングル盤は
持ってますがヘルプのLPは持ってません。
同級生がこのアルバム買って借りてさんざん聴いたら飽きてしまいました。
Dizzyは好きな曲でカヴァーやっても聴かせますね~?