OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジョージ・ベンソンの下心がグルーヴィン

2009-02-10 11:29:12 | Soul Jazz

Giblet Gravy / George Benson (Verve)

なんだかんだ言われても、やっぱりジョージ・ベンソンのギターは凄いと思います。黒人ならではの感性とロック的なアプローチが上手く融合し、もちろんジャズギタリストとしてのテクニックとアドリブ能力の高さは圧倒的ですよねぇ~。妙に頭でっかちな事をやらないのも、私の好みに合っています。

このアルバムは未だブレイク前の1967年に制作された、下心が滲む本人のポートレートも印象的なジャケットで知られる隠れ名盤♪♪~♪

メンバーはジョージ・ベンソン(g)、エリック・ゲイル(g)、カール・リンチ(g)、ハービー・ハンコック(p,key)、ボブ・クランショウ(b)、ビリー・コブハム(ds)、ジョニー・パチェコ(per) が主力となり、トム・マッキントッシュの編曲で、女性コーラス隊やブラス&リードのホーンセクションが加わっています。そして何よりも選曲がサイケおやじにはジャストミートなのです。

A-1 Along Came Mary
 ソフトロックの人気グループだったアソシエイションが1966年初夏にアメリカで大ヒットさせた名曲で、勢いのあるオリジナルバージョンの楽しさをジョージ・ベンソンは見事にジャズロック系の演奏へと昇華させます。
 トム・マッキントッシュのアレンジは些か凝り気味ではありますが、その昭和歌謡曲に応用されまくった味わいは憎めません。

A-2 Sunny
 これもご存じ、ボビー・ヘブが自作自演で1966年夏に大ヒットさせた名曲の中の大名曲で、サイケおやじにも永遠のお好みメロディ♪♪~♪
 ジョージ・ベンソンのギターはシャープなリズム隊と共謀して歌いまくりですが、バックの女性コーラス隊のソウルフルなムードや大袈裟なブラスアレンジが、ダサダサ限度ギリギリのB級グルメ味で、これまた憎めません。

A-3 What's New
 一転してモダンジャズにどっぷりというスタンダード曲の4ビート演奏ですが、パーカッションやバンドアンサンブルがラウンジ系というか、ジョージ・ベンソンやハービー・ハンコックのアドリブが鋭いわりには、聴き易い仕上がりだと思います。

A-4 Giblet Gravy
 アルバムタイトル曲はジョージ・ベンソンが会心のオリジナルで、痛快なソウルジャズ! もちろんロックビートとの大胆な融合、さらに鮮やかなギターのアドリブ、ノリノリのバンドの勢いが最高の極みつきですから、私なんかはこれがLP片面の演奏であったとしても、物足りないほどに大好きです。
 そのギターから迸るフレーズは、つまらないところがひとつも無いほどの、実に充実したアドリブの連続技! あぁ、こんなギターが弾けたらなぁ~~~♪
 ギター好きの皆様には、ぜひとも、聴かずに死ねるかだと思います。
 エリック・ゲイルのサイドギターもシブイですよ。

A-5 Walk On By
 これまたサイケおやじが大好きなメロディで、作曲はご存じ、バート・バカラックですから、ジョージ・ベンソンのギターも中途半端は許されません。そして見事なフェイクとアドリブで大満足の結果を出しています。
 女性コーラスのソウル味を見事に使いこなしたトム・マッキントッシュのアレンジも素晴らしく、胸キュンの余韻がせつないという演奏時間の短さが残念です。

B-1 Thunder Walk
 シンプルなバンド演奏ですが、黒人ハードバップの基本を大切にしたソウルフルな4ビート、そしてジョージ・ベンソンのジャズ魂が新しい感覚で表出した隠れ名演だと思います。
 リズム隊には新主流派の息吹も濃厚で、ハービー・ハンコックのハッスルぶりがニクイというか、水を得た魚ですよねぇ~。思わずニンマリしてしまうほどです。

B-2 Sack Of Woe
 キャノボール・アダレイのオリジナル人気曲を痛快なシャッフル4ビートで演じるバンドのドライヴ感が、まずは凄い勢いです。ビリー・コブハムのドラムスが、やはり強烈ですねぇ~♪
 肝心のジョージ・ベンソンは得意のオクターヴ奏法も混ぜ込んで、ハードバップの真髄に迫っていますが、痛烈に襲いかかってくるブラス&リード陣のリフと対決するが如き閃きは流石! 正統派ジャズギタリストとしての凄腕を発揮しつつ、大衆的な快楽も同時に追求するあたりが、ジョージ・ベンソンの本領だと思います。

B-3 Groovin'
 これまた嬉しい選曲で、オリジナルはラスカルズが1967年春にヒットさせたブルーアイドソウルの決定版! 山下達郎の偏愛曲としても知られますが、実はこのアルバムの裏ジャケットに記載のデータでは、録音が1967年2月となっていますから、これは楽曲が世に出た直後のセッションになるのでしょうか?
 このあたりの謎は、楽曲の良さに目をつけたプロデューサーの嗅覚の鋭さか、あるいはジョージ・ベンソンのお好みなのか、ちょっと興味深いところです。
 肝心の演奏はオリジナルバージョンのラテンソウル風味を活かしつつ、よりメロウなムードと黒っぽいジャズ感覚を強めた快演♪♪~♪ 素敵なテーマメロディをオクターヴ奏法でフェイクしていくジョージ・ベンソンはアドリブも絶好調で、後のクロスオーバーでブレイクを果たしたスタイルが、既に出来上がっている感じです。
 バンドアンサンブルもシンプルなアレンジの良さが厭味無く、これも演奏時間の短さが残念至極です。

B-4 Low Down And Dirty
 オーラスは、このアルバムでは一番長い演奏で、スロ~なブル~スを素材にジョージ・ベンソンがジャズ&ソウルの保守本道を追求し、超一流ギタリストとしての腕前を堪能させてくれます。
 そのタメと粘っこいフィーリング、感情が激したような早弾きフレーズの熱さ、さらにツッコミと和みのバランスの良さ! じっくりと4ビートを熟成させていくバンドメンバーとの協調性も見事ですし、こういう当たり前の事が一番難しいのかもしれませんが、ジャズ的な快楽も良いもんだなぁ~、と実感されるのでした。

ということで、ソウルポップス系のA面、モダンジャズ味が強いB面という感じですが、それが各々「What's New」と「Groovin'」で緩和されるというアルバム構成も秀逸で、聴き通しても飽きません。

そして何よりもジョージ・ベンソンのギターの上手さと凄さが、気楽に堪能出来ると思います。

後にCTIから出る諸作に比べると、その密度の薄さが気になることは否めませんが、如何にも1960年代後半という、適度にダサい雰囲気が当時の歌謡曲のアレンジに流用されたとおりのお洒落感覚でもあり、サイケおやじは結局、この時代の「音」が大好きです。

今日はこれから、もう一度、聴きますよ♪♪~♪

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