OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

フランス風ハードバップ

2007-08-23 15:00:41 | Weblog

やれやれ、今日からまた、家族や親戚がやってきて……。

それはそれで楽しいんですが、独り暮らしの我侭に馴れきった私としては、いや、多くは語りません。

まあ、今日は感謝知らずの私ということで、ご容赦下さい。そこで――

Modern Jazz au Club St.Germain / Bobby Jaspar (Barclay / Universal)
  

ボビー・ジャスパーはベルギー生まれの白人テナーサックス奏者で、フランスで活動した後に渡米、その直後から J.J.ジョンソン(tb) のバンドに雇われたほどの実力者です。

本場アメリカでのレコーディングでは、その J.J.ジョンソンのアルバムやウイントン・ケリー(p) の人気盤「ケリー・ブルー(Riverside)」があまりにも有名ですね。

さて、このアルバムはフランス時代のリーダー盤で、オリジナルは見たこともありませんが、同じ内容のアルバムがアメリカでも「Bobby Jasper And His Allstars (EmArcy)」として発売されているほど、素晴らしい演奏が聞かれます。

私もそれを持っているんですが、実は盤質が悪くて……。

と嘆いていたところ、数年前にユニバーサルがスタートさせた「Jazz in Paris」という再発シリーズでCD化されるという嬉しい出来事がありました。もちろん即ゲットして聴いてみると、これがリマスターも素晴らしい♪

録音は1955年12月27&29日、メンバーはボビー・ジャスパー(ts,fl) 以下、Rene Urtreger(p)、Sacha Destel(g)、Benoit Quersin(b)、jean-Louis Viale(ds) という実力派が揃っています――

01 Bag's Groove
 ミトル・ジャクソンが書いた、今やモダンジャズの定番演目になっているブルースで、ここでは、リズム隊が阿吽の呼吸で作りだしたイントロから素晴らしい演奏が楽しめます。
 テーマ部分のアンニュイな雰囲気は、如何にもパリという感じ♪ そしてアドリブ先発の Sacha Destel が、なかなか粋なギターを披露すれば、ボビー・ジャスパーはスタン・ゲッツ~ズート・シムズ系のスカスカな音色と流麗なフレーズで、思わせぶりなアドリブを演じます。
 また Rene Urtreger を中心としたリズム隊が、かなり黒っぽい雰囲気も醸し出しているのが要注意でしょうか。ミディアムテンポながら、けっしてダレないグルーヴが凄いと思います。

02 Memory Of Dick
 アメリカから巡業中にパリで客死したピアニストのディック・ツワーディックに捧げられたボビー・ジャスパーのオリジナル曲ということで、快適なテンポの演奏ながら、どこか胸が締めつけられるような哀しみがこめられた名曲・名演になっています。
 もちろんアドリブパートも秀逸で、「泣き」のフレーズばっかり弾く Rene Urtreger、せつないフレーズとブルーな音色のボビー・ジャスパーは、もう最高です!
 このアルバムの中でも、特に優れた演奏でしょう。必聴!

03 Milestones
 マイルス・デイビスが書いたビバップ曲で、もちろんモードの代表曲「Milestones」とは違います。
 とは言え、ここでの演奏はビバップのエキセントリックなところは無く、むしろソフトでスマートな印象に撤しています。なにしろボビー・ジャスパーのテナーサックスは、モロにスタン・ゲッツになっていますからねぇ~♪ こういうの、私は好きです♪
 しかし Rene Urtreger のビアノは厳しいですねぇ。ですから Sacha Destel も気が抜けない雰囲気で、結果オーライだと思います。

04 Minor Drops
 アップテンポのハードバップ曲で、初っ端から快調なアドリブを披露するボビー・ジャスパーが、たまりません♪ Sacha Destel のギターもエッジ鋭くドライブしていますし、リズム隊も当時の欧州勢にしては相等に派手だと思います。
 これがルディ・ヴァン・ゲルダーあたりの録音だと、もっと強烈な印象になったかもしれません。

05 I'll Remember April / 四月の思い出
 お待ちかね、ボビー・ジャスパーのフルートが楽しめる演奏です。粋なアレンジが効いたジェントルな雰囲気は、全くフランスのバンドらしいなぁ~♪ と独り納得しています。
 Sacha Destel の「らしい」伴奏もたまりませんし、アドリブソロも決して雄弁ではありませんが、惹きつけられるものが確かにあります。

06 You Steppde Out Of A Dream
 アップテンポの演奏ですが、抑制の効いたボビー・ジャスパーに対して、やっぱり熱くなってしまった Sacha Destel が憎めない存在感♪ もちろんボビー・ジャスパーはスタン・ゲッツ直系のスタイルで歌心を追求していますが、リズム隊との相性もイマイチで残念……。 

07 I Can't Get Started
 前曲での汚名挽回か!? と思わざるをえないボビー・ジャスパーの快演が楽しめます。それはソフトな音色と歌心に満ちたスローな演奏で、お馴染みのテーマメロディが柔らかに変奏されるという匠の技♪
 控えめな助演に撤する Rene Urtreger のビアノも「味」の世界で、ちょっとジョン・ルイスしているあたりに好感が持てます。
 それと Sacha Destel が歌心たっぷりのアドリブで最高♪
 先日ご紹介した「Grand Encounter」との聞き比べも、一興だと思います。

08 A Night In Tunisia
 オーラスはエキサイティングなハードバップ大会! ラテンリズムを駆使したテーマ演奏からスリル満点のブレイクと続くあたりは、本場アメリカの演奏に追いつけ・追い越せという雰囲気があって、非常に良い感じです。
 ボビー・ジャスパーは独自の個性を滲ませていますし、Sacha Destel が、これまた熱い! 正直、スタン・ゲッツ&ジミー・レイニーのスタイルを模倣しているんでしょうが、かなりハードバップ寄りの演奏に聞こえるのが時代を象徴しているようです。

ということで、黒人ジャズがお好みの皆様には明らかに薄味でしょうし、米国西海岸派マニアにはスマートさが足りない仕上がりかもしれません。しかし異国のハードバップというか、私にはフランス独特の味わいが感じられて気に入った演奏です。

このあたりは録音の按配にも要因があるんじゃないでしょうか? 既に述べたようにルディ・ヴァン・ゲルダーが録っていたら、別の印象になったのは明らかだと思います。

全体的にはカッコイイという意味でのクール♪

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