OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

アルおじさんのグルーヴ

2007-03-30 16:13:49 | Weblog

実質的な年度末ということで、なんか忙しない1日が過ぎています。

去り良く人、新しく挨拶に来る人……、来客多数で気持ちも引き締まりました。

ということで、やはり本来のジャズモードに立ち返り――
 
This Is Uncle Al / Jesper Thilo (Music Mecca)

全くイケてないジャケットに写っている黒人が「アルおじさん」こと、Alvin Queen という黒人ドラマーなんですが、リーダーの Jesper Thilo は白人のテナーサックス奏者です。

この人は欧州を中心に活動していて、そのスタイルはモダンスイングというか、中間派ハードバップというか、とにかく王道の歌心と楽しいドライブ感が素敵♪

このアルバムはそんな魅力が存分に楽しめるワンホーン盤で、録音は2001年9月29&30日、メンバーは Jesper Thilo(ts)、Olivier Antunes(p)、Jesper Lundgaarrd(b)、Alvin Queen(ds) というガチンコな面々が揃っています――

01 Some Of These Days
 いきなり古くて楽しいスタンダード曲が、思いっきり居直ったように演じられますから、たまりません♪
 まずリズム隊が強力で、特に若手の Olivier Antunes が遠慮会釈の無い激烈なアドリブを聞かせれば、背後からはベテランのベース&ドラムスがビシバシと襲い掛かってきます。
 すると Jesper Thilo が温故知新のテナーサックスで、存分に自己主張! 滑らかでモリモリと吹きまくる、これが王道ジャズの底力でしょうか! ところがリズム隊が超モダンなんですから、烈しく楽しい黄金期の全日本プロレスのような演奏になっています。

02 We Will Be Together
 これがまた、王道路線を邁進するミディアムテンポのバラード演奏です。
 Jesper Thilo は泣きのフレーズと低音域を上手く使った雰囲気奏法で押し通す、それなりの貫禄を聞かせてくれますが、ここでも Olivier Antunes が新しい感覚を披露していますので、なかなか新鮮な雰囲気です。
 もちろんドラムス&ベースもピアノとグルになっていますからねぇ~。なんかリーダーが浮きそうで……。
 つまり、そこが良いんです♪

03 Frelimo
 これは楽しいジャズサンパ♪
 Jesper Thilo は軽めの音色で楽しくノリまくりなんですが、リズム隊が本性剥きだしのガチンコぶりなんで、油断出来ません。歌心優先のリーダーに負けじとビート感優先で弾ける Olivier Antunes のビアノが痛快!
 もちろん Alvin Queen もパワー派の面目躍如というか、決して潔いとは言えないドラムソロが逆に泥臭くて、好感が持てます。

04 Dardanella
 ゲッ、これは1970年代モード?
 と思った次の瞬間、Jesper Thilo はこれ以上無いほどの和み感覚でテナーサックスを鳴らしてくれます。サビの展開でグイノリになる仕掛けがニクイところ♪ 本当に自信満々という吹奏が新しい感覚のリズム隊を圧倒しているのでした。
 
05 Indiana
 するとこれが、リズム隊の逆襲というか、お馴染みの名曲を勢い満点にスイングさせた快演になっています。
 しかも原曲がビバップ誕生の経緯を秘めたコード進行なので、ここでの思いっきりの良いバンド演奏は痛快そのもの! Jesper Thilo が烈しくブローすれば、リズム隊が阿吽の呼吸で煽りまくりです♪
 もちろん Olivier Antunes のビアノは若手らしい斬新なアイディアに満ちていますし、Alvin Queen も負けじと大車輪ドラムソロ! この人はケニー・ドリューのバックとかで有名ですが、こんな爆裂演奏が一番合っているように思います。
 最後にはタネ明かしのビバップテーマが出ますよっ♪

06 If I Could Be With You
 これはシブイ! ベッシー・スミスが歌っていた片思いのラブソングですからねぇ~♪ 個人的にも大好きな名曲です。
 それを Jesper Thilo は、最初からベースとの2人芝居♪ 続けてドラムスとピアノが入ってからは、少しずつ熱い心情吐露に移ります。変幻自在のリズム隊も素晴らしいですねぇ~♪ 
 Olivier Antunes のビアノは、もちろん最高ですが、ツボを押えた Jesper Lundgaarrd のベースがソロに伴奏に、素晴らしいかぎりだと思います。
 また中盤で飛び足すボーカルは誰でしょう? 完全に味の世界で、ホロリとさせられます。そしてラストテーマを抜群の解釈で聞かせてくれる Jesper Thilo のソフトな歌心にも感涙するのでした。
  
07 Day Dream
 お馴染みデューク・エリントン楽団の十八番ですから、迂闊な解釈は出来ない有名曲を、Jesper Thilo は情緒満点に熱く吹いています。ゆるやかなリズム隊も良いなぁ~~~♪ と再認識のスローグルーヴがたっぷりです。
 一般にこういう吹奏は、テナーサックスだと低音サプトーンを期待してしまうのですが、Jesper Thilo は中高域を主体に別種のムードを醸し出しているんですねぇ~♪
 また Olivier Antunes がエバンス派の本性を現す瞬間も楽しめますし、Jesper Lundgaarrd のベースが野太く雄弁なソロを展開して存在を示すのでした。

08 Bohemia After Dark
 こんな人気ハードバップ曲を臆面も無くやってしまうこのバンドは、どうなっているかと言えば、Jesper Lundgaarrd を中心としたリズム隊のテーマ演奏が心地良く、特に Alvin Queen のブラシが気持ち良過ぎます♪
 そのまま続くアドリブパートも最高にグルーヴィで、Jesper Lundgaarrd がもう最高です! 野太く歌うベースの王道!
 そして Olivier Antunes が、これまた良い! ファンキーな歌心と新主流派っぽいノリが絶妙のブレンドになっています。もちろん背後で煽る Alvin Queen のゴスペル調のドラムスも突進力満点! あぁ、何時まもでも聴いていたいです。
 肝心の Jesper Thilo はちょっと古臭いフレーズとノリを意図的に使ったような温故知新のハードバップに撤していて、リズム隊のミスマッチが強烈な印象を残しています。
 
09 Turn around
 ゲッ、オーラスはオーネット・コールマンが書いたブルースの隠れ名曲じゃ!?
 このマイナーなんだかメジャーなんだか、ちょっと不思議なテーマを、このバンドは極めて真っ当なハードバップで演奏してくれますからねぇ~♪
 そのグルーヴの源は、粘っこいミディアムのビートを敲き出している Alvin Queen でしょうか、ハッとするほど素晴らしいです!
 そして Jesper Thilo も、そのあたりは百も承知のモリモリ吹奏で、暑苦しいばかりのフレーズ連発に撤しています。また Olivier Antunes もグッとくるグルーヴィピアノを披露♪ なんて最高なんだっ! 思わず叫びそうになりますよ♪

ということで、ジャケットの内輪ウケとは裏腹に内容は秀逸! 熱くてグルーヴィなリズム隊と温故知新のテナーサックスが徹頭徹尾、ジャズの楽しさを追求した演奏ばかりです。

そして個人的には若手白人ピアニストの Olivier Antunes を見つけた喜びに浸っています。この人の出自や履歴は知らないのですが、とにかくこの名前があれば、その作品は迷わずゲットする所存です。

ちなみにこのアルバムのジャケットはデジパック仕様の4面見開きという豪華盤なんですが、中身に掲載の写真がこれまた???という勿体無さ……。ただしリーダーの Jesper Thilo は、テナーサックスが小さく見えるほどの大柄な白人おやじということが確認出来ます。

う~ん、やっぱりなぁ、とここでの吹奏に納得しきりです。

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