■Jazz New York / Manny Album And His Jazz Greats (Dot)
音楽界の作編曲家はスタジオセッションの現場では音楽監督も務めることが多いようで、例えばクインシー・ジョーンズあたりは、駆け出し時代からプロデューサー的な役割も強く担っていたのでしょうか、そこには特にお気に入りの凄腕を集めることが出来るようです。もちろんそれは、そのまんま、セッションの成功へと繋がるわけです。
今では忘れられた存在かもしれないマニー・アルバムにしても、第一線で活動していた1960年代初頭までのセッションには、同様に凄いメンツが参集しています。
そして本日ご紹介の作品はタイトルどおり、ニューヨーク派のバリバリを集めて作られた痛快な1枚!
録音は1958年4月、メンバーはアート・ファーマー(tp)、ニック・トラビス(tp)、ドナルド・バード(tp)、ボブ・ブルックマイヤー(v-tb)、ジーン・クイル(as,cl)、アル・コーン(ts)、ズート・シムズ(ts)、ペッパー・アダムス(bs)、ジェローム・リチャードソン(fl,ts) ディック・カッツ(p)、エディ・コスタ(p,vib)、ミルト・ヒントン(b)、ジョー・ベンジャミン(b)、オシー・ジョンソン(ds) 等々を中核にしたオールスタア編成のビックバンド♪♪~♪ もちろんマニー・アルバムのアレンジは分かり易くて爽快な魅力に溢れ、さらに各アドリブ奏者の個性を存分に活かせる度量の大きいものですし、ソロオーダーやメンツの構成が原盤裏ジャケットに明記されているのも嬉しいところです。
A-1 Thruwqy
オシー・ジョンソンの張り切ったシンバルワークに導かれ、痛快に弾けるアップテンポの演奏で、豪快に炸裂するバンドアンサンブルと名手達のアドリブ競演が最高です。
それはドナルド・バードのトランペットからホブ・ブルックマイヤーの温もりトロンボーン、そしてアル・コーンのハードドライヴなテナーサックスへと受け継がれ、東海岸録音ということもあって、モダンスイングとハートバップの両方の味が楽しめるのでした。
A-2 They All Laughted
ガーシュイン兄弟が書いた楽しいスタンダードが、より一層のウキウキ感で演奏されています。とにかく巧みにアレンジされたテーマアンサンブルの浮かれた調子とハーモニーの素晴らしさには、ジャズの魅力がテンコ盛りですよっ♪♪~♪
アドリブパートではジーン・クイルやニック・トラビスが上手さを発揮していますが、純朴にして力強いペッパー・アダムスのバリトンサックスも強烈で、オトポケ調も入ったバンドのアンサンブルと絶妙のコントラストがたまりません♪♪~♪
A-3 In A Mist
ジャズ創成期の有名トランペッターというビックス・バイダーベックのジャズ史に残るオリジナルとされていますが、実際、この曲はモダンジャズ期に入っても多くのバージョンが残されていて、ここでの演奏も秀逸なひとつです。
タイトルどおり、ちょっとモヤモヤした不思議系のテーマメロディがエディ・コスタのヴァイブラフォンやミュートトランペット主体のアンサンブルで演じられ、浮遊感いっぱいのハーモニーと芯の強いスイング感が最良のスパイスとなっています。
ミディアムスローの展開ですが、決して飽きることがないのは、膨らみのあるアレンジとアドリブパートの充実によるものだと思います。
A-4 Fresh Flute
これまたタイトルどおりにフルートを主体としたマニー・アルバムのオリジナル曲で、
その主役はジェローム・リチャードソンですから、軽妙なスイング感の楽しさは保証付き♪♪~♪ ちょっとカウント・ベイシー調のアレンジがニクイですねぇ~♪
それはディック・カッツのピアノにも責任があるというか、なかなかの快演ですし、ボブ・ブルックマイヤー、ニック・トラビス、そしてジーン・クイルのアドリブも冴えていますが、ここでのテナーサックスは誰でしょう? 原盤解説ではアル・コーンとなっていますが、個人的には??? もしかしたらジェローム・リチャードソン?
まあ、それはそれとして、豪快にして緻密なバンドアンサンブルも聴き易く、実に楽しいですね。
B-1 Dot's Right
初っ端からエディ・コスタのピアノが活躍するダイナミックな演奏で、低音域からガンガンに突っ込んでくる例のアドリブが、痛快なバンドアンサンブルにバックアップされる仕掛けには、本当にジャズを聴く喜びがいっぱい♪♪~♪
さらにジーン・クイル、アル・コーン、アート・ファーマー、ペッパー・アダムスが極上のアドリブを聞かせてくれますし、それを彩るアレンジも冴えまくりのカッコ良さです。
B-2 Hebe, The Cups Please!
原盤解説によれば、アート・ファーマーとニック・トラビスが互いにミュートトランペットの妙技を競ったとされているとおり、音の区別は明快なれど、どちらがどちらなのか、そのあたりの不思議を追及するのも楽しい名演です。
ミディアムテンポのグルーヴも見事なリズム隊と一糸乱れぬバンドアンサンブルにも、思わず夢中にさせられますねぇ~♪ 最後に登場するボブ・ブルックマイヤーのオトボケにも拍手喝采です。
B-3 The Nether Regions
些か物騒な曲タイトルですが、演奏そのものはグルーヴィな感覚が横溢したモダンジャズですから、その低音域を活かしたアレンジやバンドアンサンブルが、意想外の良さかもしれません。
アドリブパートはペッパー・アダムスの唯我独尊というバリトンサックス、山城新伍のような独り言ギャグのボブ・ブルックマイヤー、おそらくはアル&ズートと思われるテナーサックスの連続アドリブが披露されます。そして意外なほどにファンキーなディック・カッツのピアノが不思議な味わいを醸し出し、結果オーライの大団円となるのでした。
ということで、アルバム全部が明快にスイングした曲ばかり♪♪~♪ あんまりにも分かりが良すぎて、逆に物足りないところは贅沢というものでしょう。もちろんその部分は、各アドリブ奏者の奮闘が補ってくれますから、実にバランスのとれた演奏ばかりだと思います。
個人的にはオシー・ジョンソンの安定して、なおかつスリル満点のドラミングに強く惹きつけられますねぇ~♪ この人も我が国では全くの無視状態ですが、再評価を望みたいところです。
肝心のマニー・アルバムは、ジャズの楽しさや醍醐味をストレートに伝えてくれるアレンジが流石だと思います。日頃は天の邪鬼なサイケおやじも、これには素直に脱帽して感服しています。
ちなみに先日ご紹介した「The Jazz Greats Of Our Time Vol.2」は西海岸派を起用していましたから、そのスマートで爽快な仕上がりが印象的でしたが、それよりも後に行われたこのセッションは比較すると、当然ながらハードバップの色合いが強くなっています。しかし何故かハードボイルドな味わいはそれほどでもなく、逆にリラックスしたムードが支配的なんですねぇ~。
時代的にはベニー・ゴルソンあたりのソフト系ハードバップが人気を集めつつあった頃ですから、充分に肯ける仕上がりなのかもしれません。