OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

真っ白なサンタナ

2009-07-17 12:48:07 | Rock

Welcome / Santana (Columbia)

本日はジョン・コルトレーンやビリー・ホリディ、そして石原裕次郎という偉人の命日ですから、本来は所縁のレコードを聴くべきなのかもしれませんが、現在のサイケおやじには、なんとかこのアルバムを引っぱり出すのが精一杯でした。

というのも、この作品は当時、東洋思想に基づくと思われる宗教に帰依していたカルロス・サンタナが、より高次元の精神性を求め、その過程では晩年のジョン・コルトーンのような所謂スピリチュアルな演奏に踏み込んでいた頃に作られたものだからです。

録音は1973年5~6月に行われ、その直後には伝説の来日公演もあったことから、既にそのステージで聞かれた曲も入っているという、リアルタイムを体験していたファンには忘れ難いアルバムだと思います。

ただし、それゆえにラテンムードの快楽性に期待した従来からのファン、あるいは後追いで聴き進んでいる皆様にとっては、なにかと人気が低い作品のひとつだと言われているのですが……。それでも発売された昭和48(1973)年としては、最も進歩的なフュージョンロックだったのです。

 A-1 Going Home
 A-2 Love, Devotion & Surrender
 A-3 Samba De Sausalito / ソウサリートのサンパ
 A-4 When I Look Into Your Eyes / 君の瞳
 A-5 Yours Is The Light / 輝ける光
 B-1 Mother Africa / 母なるアフリカ
 B-2 Light Of Life / 聖なる光
 B-3 Flame-Sky
 B-4 Welcome

まず当時の流行というか、このアルバムにしてもLP片面に収録の演奏に曲間がほとんどありません。つまりひとつの流れで楽しんで欲しいというミュージシャン側からの「強要」があるんですねぇ。

実は既に述べたように、このアルバム発売前の来日公演では、会場に「御香」が焚かれ、演奏が始まる前には黙祷の時間までが設けられていたというのは、今でも凄いと思います。つまり完全にミュージシャン主導の主張に、リスナーやファンがついていけるかが大きな分岐点だったのです。

ちなみにこのアルバムでの演奏メンバーはカルロス・サンタナ(g,vo,per)、マイク・シュリーヴ(ds,per)、ホセ・チェピート・アリアス(per) だけが公式デビュー当時からのメンバーで、後は助っ人軍団! その中にはフローラ・プリム(vo)、アーマンド・ペラサ(per)、ジョー・ファレル(fl,sax)、ジョン・マクラフリン(g)、レオン・トーマス(vo,per)、トム・コスター(key)、リチャード・カーモード(key)、ダグ・ローチ(b) 等々、ほとんどがジャズフュージョン系のミュージシャンが加わっていたのですから、その演奏もまた、おのずと傾向が決まっていたというわけです。

まず初っ端の「Going Home」は、有名なドボルザークのメロディを極めて精神性を強くして演奏したインスト曲ですが、荘厳なオルガンの響きや勿体ぶったギターの使い方、等々は明らかにアリス・コルトレーンあたりが作り出す大袈裟なムードに一脈通じています。これを胡散臭いと感じてしまえば、ここで針を上げるのが正解でしょう。ただし前述した初来日公演のスタートも、やはりこの曲でしたから、避けては通れません。

確かに大袈裟な思わせぶりが終わり、そこへ被さるように流れてくるカルロス・サンタナの官能的なギター、そして十八番のラテンパーカッションのフュージョン的な使い方が冴える「Love, Devotion & Surrender」は、快楽的なメロディと宗教的な歌詞の対比が面白いといっては不謹慎でしょうが、演奏が実に気持ち良いんですねぇ~♪

さらに続くのが如何にもフュージョン期のサンタナが証明される「ソウサリートのサンパ」で、エレピのアドリブがこれまた気持ち良く、数人が参加した打楽器の饗宴がさらに気分を盛り上げてくれますよ。

また「君の瞳」や「輝ける光」は来日公演でも披露されたボーカル主体の親しみ易い曲で、レオン・トーマスやフローラ・プリムのボーカルもフィール・ソー・グッドな軽さが憎めないところですが、演奏パートの充実度は一部の隙も無い完成度! キメのリフとキーボード中心のアドリブパート、さらにリズムの熱気は流石だと思います。特に「君の瞳」の後半におけるファンキーなグルーヴは、もっと聴いていたいところで終わるのが残念なほどです。

そして気になるカルロス・サンタナのギターソロは、「輝ける光」になってようやく本格的に楽しめるという憎い仕掛けが賛否両論でしょう。正直、ここでやっとサンタナらしくなったという気分なんですよっ♪♪~♪ そうしたところが、このアルバムを不人気にしている要因なんでしょうねぇ……。しかし、これが実に気持ちE~~~♪ サンタナ、最高っ!

そういう高揚感はB面へと見事に引き継がれ、ハービー・マンとサンタナが共作した「母なるアフリカ」ではポリリズム系打楽器の乱れ打ちが痛快ですし、それが宇宙的な広がりとなった後の静寂からスタートする「聖なる光」の内側から湧いてくる信頼のパワー! これを実にヤバイというか、アブナイものに感じるのはサイケおやじだけでしょうか?

そしてお待たせしましたっ! いよいよ始まる「Flame-Sky」はカルロス・サンタナ対ジョン・マクラフリンの魂の兄弟が、官能と情熱のギターバトル♪♪~♪ いや「バトル」というよりも「コラポレーション」といった方が穏やかなんでしょうが、この妥協の無い精神の交流は圧巻!

このあたりは2人が本格的に共演を果たした前作アルバム「Love Devotion Surrender」の熱演をさらに昇華させんとする意気込みが素晴らしく、バックアップするメンバー達も気合いが入っています。ちなみに「泣き」を大切にしているのがカルロス・サンタナ、よりアグレッシヴな「エグ味」を全面に出すのがジョン・マクラフリンだと思いますが、それでも2人の気持はひとつ! う~ん、やっぱり凄い11分半は至福です。

こうして迎える大団円は、ジョン・コルトレーンが傑作アルバム「クル・セ・ママ (impulse!)」で演じていた名曲オリジナルの「Welcome」です。もちろんカルロス・サンタナのギターはジョン・コルトレーンが吹いていたサックスのフレーズを丁寧に蘇らせんと奮闘し、ここでもバンド全員が気持ちをひとつにした熱演を聞かせているのですが、それがイノセントなジャズファンやコルトレーンのコアなマニアからは白眼視されているのも、また事実でしょう……。

ロックの奴らがコルトレーンの聖域を踏みにじった!?!

なんて、当時は真剣に言われる場面があったんですよっ!

ですからサイケおやじにしても、なんとなく「うしろめたい」気分で聴いていたのは否めないわけですが、それでもサンタナの魅力は絶大♪♪~♪ ラテンフュージョン、大いに賛成です。

ちなみにジャケットはサンタナ版「ホワイトアルバム」として、掲載画像は白紙撤回って感じですが、アナログ盤ジャケットの表面には「Welcome」の文字が型押しが浮かび上がっております。撮影、下手ですみません。

しかし、こういう真っ白な決意表明は尊いと思うのですが……。

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