■ノー・ノー・ノー / Human Beinz (Capitol / 東芝)
楽しい音楽を聴くのに理屈は不要!
それが文字通り「音楽」のひとつの真実だとすれば、本日ご紹介のヒューマン・ベインズが演じた「ノー・ノー・ノー / Nobody But Me」は極みの名曲名演でしょう。
とにかく基本はノーザンビートのR&Bをロックっぽく仕立て上げた、これは如何にも1960年代中後期に流行ったガレージロックの典型で、しかもノーテンキ塩梅が突き抜けているのですから、我国でも相当にヒットしましたし、当時のGSでもカパーしているグループが多かったと記憶しています。
まあ、騙されたと思って、聴いてみて下さいませ。
思わず腰が浮く、その強烈なビート感と最初っからひたすらに「ノー、ノー、ノー」を連呼する歌詞の単純明快さは、ロックの最も根底に潜む快楽性の高さを引き出したものと思います。
しかも、これには大きな元ネタがあって、その原題どおりの「Nobody But Me」は、アイズリー・ブラザーズが既に1963年に出していたオリジナルのカパーであり、ここでは歌詞を印象的に変えることにより、全く独自のヒット曲にしてしまったのが、その真相!?
ちなみにヒューマン・ベインズはジョン・ディック・ベリー(vo,g)、ジョー・マークリン(vo,g)、メル・パチュータ(vo,b)、マイク・テイトマン(ds) を一応の顔ぶれとして、アメリカはオハイオ出身のバンドですから、そうしたノーザンダンサーの黒人音楽にもストレートに反応していたものと思われます。
そして同時に、このシングル曲をヒットさせた1968年の最先端ムーブメントであったサイケデリックな感覚と共に、もうひとつの流行であったバブルガムのお気楽さを上手く融合させたところは侮れません。
結果的に、ほとんど「一発屋」のヒューマン・ベインズが、この「ノー・ノー・ノー / Nobody But Me」によって今も忘れられていないのは、そうした「芸」の抽出度が高かった所為でしょう。
ですから近年でもタランティーノ監督のヒット映画「キル・ビル」に使われたり、再発CDが出たりする現実は、およそ「ロック史」なぁ~んていう後追い研究からは遊離した、あくまでも一般リスナー側からの永劫性の証です。
また、当然ながら、これはやっても楽しい名曲というか、サイケおやじは煮え切らない気分の時、独りエレキを弾きながら、思いっきり「ノォ~ノォ~ノォ~、ノノノノ、ノォ~ノォ~ノォ~♪」とシャウト(?)する青春時代が確かにあって、それは現在でも……、ふっふっふっ???
ということで、しかしこれは決して簡単な演奏ではなく、強いビートを打ちだすベースとドラムスの一体感、ボーカル&コーラスのカッコ良さ、さらにはファズ効きまくりのギターソロ! そういうものがビシッとキマってこそ、最高のロックになっているのです。
前述「ノォ~ノォ~ノォ~、ノノノノ」のパートだって、卓抜なリズム感が無ければ、セ~ノッで始めるバンド演奏の中では、思わず躓いてしまう事は必至でしょう。
このあたりは結局、サイケおやじが如何に筆を弄そうにも、皆様には実際に聴いていただく他はありませんが……、告白すれば、自らの稚拙なバンド実体験による失敗談のひとつでもあります。
それでも、こういう素敵なビートロックが流行っていた現実は、真摯にお伝えしたいというわけです。
来日していたんですね。
http://www.youtube.com/watch?v=TOqyuWYsL8s&feature=related
少しは話題になったのでしょうか?
コメントありがとうございます。
ご紹介のライブバージョン、この収録レコードってリアルタイムで発売されていたんでしょうか?
肝心の来日も、記憶にないんですがねぇ……。
それでも「ノー・ノー・ノー」は絶対に不滅ですよ。
またスタジオレコーディングされたアルバムは2枚ほど残されていますが、小細工の無い、ストレートなフィーリングは捨てがたいんで、ぜひとも聴いてみて下さいませ。
ただし68年でなく69年3月、渋谷公会堂で1回のみ公演。
TV「ザ・ヒット・パレード」にも出演。
同年、日本国内のみ、ライブ・アルバム発売。
永く、「68年」の誤表示とともにブート・アイテムでしたが、2010年、正規CDとして再発、今でも手に入ります。
当時、本国ではすでに落ち目のこのバンド、最後に日本でひと稼ぎ、というのが来日の真相だったそうです。とは言え、最近、再評価の動きもあるようですし、一度しっかり聴いてみたいと思います。
コメント&情報、ありがとうございます。
う~ん、来日は1969年でしたか……。
当時から外タレの「ライブ・イン・ジャパン」物は作られていましたが、流石にヒューマン・ベインズのLPは実際に見たこともありません。
ご紹介の正規盤CD、気になってきました(笑)。
ヒューマン・ベインズは特にデビューアルバムが、良い意味での粗雑感が大きな魅力だと思いますので、ぜひっ!