やっぱり今日も忙しい!
朝、今日はアレやって、コレ片付けて、云々と思惑を先行させても、昼過ぎには全く見当違いの仕事に追い回されている自分が、ねぇ……。
ということで、本日は――
■Lonely Town / Tommy Flanagan (? / 日本キング)
通称「名盤請負人」とまで敬われたピアニストのトミー・フラナガンは、ある時期まで、リーダー盤よりもサイドメンとしての実績が上回っていたシブイ名手でした。
それが1970年代にパブロやエンヤという主流派ジャズのレーベルと契約し、持ち前のセンスの良さとモダンジャズ正統派の本領を発揮したアルバムを発表するに至り、ついに人気ピアニストの座を決定的にしたのです。
もちろんそれまでのトミー・フラナガンは、「オーバーシーズ」という決定的な名盤を吹き込んでいましたが、やはりジャズ者にとっては、もっとリーダー盤を聴きたいという欲求があったのです。
そしてそんな時期に、驚愕の発掘盤として登場したのが、このアルバムです。
録音は1959年3月10日、メンバーはトミー・フラナガン(p)、ジョー・ベンジャミン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) というトリオですから、たまりません!
しかも日本独占発売というか、当時、この音源の権利を持っていた日本のキングレコードから1979年に発売された時には、ブルーノート・レーベルの製作とされていたのです!
しかしプロデュースはアルフレッド・ライオンでもフランシス・ウルフでもなく、ケネス・カーヴという人物になっていたことから、現在では、どうやらユナイテッド・アーティスツで製作されたというのが、定説になっています。
まあ、それはそれとして、リアルタイムで話題となったのは、ドラマーがエルビン・ジョーンズという、トミー・フラナガンとは切っても切れない縁の豪腕名手だったからです。前述した「オーバーシーズ」を始め、モダンジャズ全盛期の名盤の多くで共演していた2人ですからねぇ~♪
またベースのジョー・ベンジャミンも、モダンジャズ一辺倒ではなく、歌伴からビックバンドまで、なんでもござれの、これまた名人です。
そして演目が、これまた凝っていて、クラシックやミュージカルの世界では超有名なレナード・バーンスタインの楽曲集♪ つまり、ある種のトータルアルバムというわけです――
A-1 America
ベースとドラムスの静かな掛け合いからテーマメロディが導きだされ、一転、エルビン・ジョーンズの強烈なポリリズムのドラミングが響き渡ります! そして、もうこうなれば、トミー・フラナガンもテーマ弾奏に余裕を聞かせながらも、胸中は熱くなっているのでしょう、なかなか迫力のあるブロックコード弾きのアドリブという、ちょっと珍しい展開になっています。
土台を支えるジョー・ベンジャミンのベースも、なかなか粘っこいリフとビートで、侮れないと思います。
A-2 Lonely Town
非常に美しいテーマメロディがスローでじっくりと演奏されます。
もちろんそれは、トミー・フラナガンのソロピアノ主体ではありますが、ジョー・ベンジャミンのアルコ弾きも絶妙の彩りになっています。
う~ん、それにしても滲み出る哀愁と気分はロンリーな雰囲気……。最高としか言えません。
演奏は中盤からエルビン・ジョーンズのヘヴィなブラシと粘っこいジョー・ベンジャミンのベースが主導権を握り、トミー・フラナガンが洒脱なアドリブで歌心を披露♪ だんだんと白熱していくトリオの一体感が、本当に見事です。
A-3 Tonight
ミュージカル「ウエストサイド物語」の中でも、特に有名な楽曲ですから、様々なジャズバージョンが残されていますが、ここでは正統派ピアノトリオとしての貫禄と熱気が存分に楽しめる快演になっています。
特にトミー・フラナガンはコロコロと玉を転がすようなスイング感とテンションの高いコード付けが流石♪ また終盤でのベース&ドラムスを交えた掛け合いでは、トリオの実力がたっぷりと披露されますが、それにしてもジョー・ベンジャミンは再評価されてしかるべき名手だと思います。
もちろんエルビン・ジョーンズのブラシには、重くてシャープな凄みがありますよ♪
B-1 It's Love
これも素敵なメロディのスロー曲♪ こういう場合のトミー・フラナガンのセンスの良さは言わずもがなですが、エルビン・ジョーンズのシブイ伴奏も特筆ものでしょう。またジョー・ベンジャミンも脇役に徹したサポートが最高です。
あぁ、こういうピアノトリオを聴く喜びこそ、モダンジャズの魅力ではないでしょうか。夢見るように素晴らしい演奏だと思います。
B-2 Lucky To Be Me
あの名盤「オーバーシーズ」を彷彿とさせる、なかなか力強い演奏です♪
そのキモは、もちろんエルビン・ジョーンズのブラシですが、全身のバネをフル活用したようなドラミングそのものが、凄すぎます!
トミー・フラナガンも早めのテンポで歌心満点のフレーズばっかりを弾きまくりですし、ジョー・ベンジャミンの強いビートもたまりません♪ ズバリ、名演です。
B-3 Glitter And Be Gay
ちょっとクラシック風のマイナーワルツです。
トリオの演奏は、ちょっとバラバラな雰囲気ですが、これで良いんでしょうねぇ……。なんとなくMJQみたいなところも感じます。
ただし中盤からはグルーヴィな演奏に移るんですから、このトリオは、やはり狙っていたんでしょうか。トミー・フラナガンは自分だけの「節」を存分に出してはいるんですが……。
B-4 Make Our Garden Grow
いきなりエルビン・ジョーンズのマレットが炸裂!
呆気にとられていると、トミー・フラナガンのピアノとジョー・ベンジャミンのアルコ弾きによって、なかなか思わせぶりなテーマが演奏されていきます。これがなかなか、劇的で良い感じ♪
演奏時間が短いのが勿体無い限りですが、アルバムのラストには相応しいと思います。
ということで、ちょっと聴きにはピンッとこない演奏が多いのですが、聴き込むうちにハッとさせられる瞬間もあったりします。なによりも「トミフラ節」がたっぷり♪
アイテムとしては、結局、日本だけの発売だったようですし、CD化されているかも不明なんですが、数少ない1950年代のトミー・フラナガンのリーダー盤ということで、当時は歓迎されたと記憶しています。
ただし売行きはイマイチだったらしく、現在では海外のコレクターまでもが血眼になって探しているとか!
ブルーノートでもないのに、ブルーノートのロゴとレーベルを使ってしまった稚気というか、下心も、今となっては憎めない感じですね。