OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

But Beautiful の大名演♪

2008-04-01 17:29:36 | Weblog

今日から新年度といっても、基本的には変化無しです。新人もそれなりでしたし、各方面の挨拶も平穏な雰囲気でした。

こういう平和を大切にしたいですね。

ということで本日は――

Beautiful ! / Charles McPherson (Xandu)

モード~フリー、あるいはジャズロック~ソウルジャズを経てクロスオーバーやフュージョンが主流となっていた1960年代中頃から1970年代のジャズ界において、それでもひたすらにビバップに拘りぬいていたのが、チャールス・マクファーソンという黒人アルトサックス奏者です。

もちろんそのスタイルはチャーリー・パーカー直系の頑固節! それゆえに決してツブシのきくタイプではありません。しかしそういう生真面目なところが気に入られたのか、有名なプロデューサーのドン・シュリッテンによって、1960年代後半にはプレスティッジに多くのリーダーセッションを残しています。

そして1970年代になって、ドン・シュリッテンが自ら起こしたザナドゥにチャールス・マクファーソンが吹き込みを敢行するのも、当時の流れからして必然的な運命だったと思います。

ちなみにザナドゥが新作として録音していたのは、4ビートの基本を大切にしたモダンジャズの保守本流でしたから、まさにチャールス・マクファーソンにはぴったりの舞台で、このアルバムの味わい深い仕上がりもムベなるかな!

録音は1975年8月12日、メンバーはチャールス・マクファーソン(as)、デューク・ジョーダン(p)、サム・ジョーンズ(b)、リロイ・ウィリアムス(ds)という、なかなか胸が躍る人選♪ 特にデューク・ジョーダンは当時、スティープルチェイスから出した魂の復活盤「フライト・トゥ・デンマーク」のウルトラヒットで人気が沸騰の頃でしたから、告白すれば、私はデューク・ジョーダンが完全なお目当てだったのですが――

A-1 They Say It's Wonderful
 ジョン・コルトレーンが畢生の名演を残している美メロの名曲ですから、さて、チャールス・マクファーソンがどのような泣き節を聞かせてくれるのか、大いに期待していたのですが……。
 ジンワリとしたスローテンポではなく、明るめのビバップスイングになっていたので、私には完全な肩透かしでした……。
 変形ラテンビートのようでもあり、迷い道のイントロ吹奏からグイノリ気味に展開する演奏は、それなりに魅力的な意図があるのかもしれませんが、どうにもやりきれません。
 カラ騒ぎするサム・ジョーンズのベースも電気増幅が気になりますし、チャールス・マクファーソンのアルトサックスも力みがあって、本来の歌心が活かしきれないもどかしさ……。
 と、不遜な事ばかりの感想ですが、デューク・ジョーダンの明るくて、やがて哀しいピアノの響きが心に染入るのでした。

A-2 But Beautiful
 ところが、これが素晴らしい名演です!
 曲は、これも有名なスタンダードで、ビル・エバンスの名演も残されておりますが、個人的にはこのバージョンが最高に好きです。
 デューク・ジョーダンのピアノはイントロから伴奏、そしてアドリブまで気分はロンリー♪ そしてチャールス・マクファーソンのアルトサックスがシミジミとした情感を湛えて忍び泣きです♪ 情熱のメロディフェイクも厭味になっていません。
 じっくりとしたスローなグルーヴを作り出すベースとドラムスの的確な助演も印象的で、このアルバムの中では決定的なトラックになっています。必聴! あぁ、何度聴いても感動してしまいます。

A-3 It Could Happen To You
 イントロからチャールス・マクファーソンのアルトサックス独演に寄り添うデューク・ジョーダン♪ 2人の心が通い合ったテーマ演奏からサム・ジョーンズのベースが控えめに躍動し、快適なテンポの4ビートが始れば、気分はビバップ天国です♪
 決して派手な演奏ではないのですが、心を込めたチャールス・マクファーソンの真摯な吹奏、そして美メロのアドリブに撤するデューク・ジョーダンが本当に素敵です。
 また軽めのサム・ジョーンズに余計な手出しをしないドラムスという縁の下の力持ちが良い味、出しまくりなのでした。

A-4 Lover
 ここでようやく、如何にもビバップというアップテンポの演奏が出てきます。リズム隊のハッスルぶりが微笑ましく、チャールス・マクファーソンも幾分細い音色でツッコミ鋭いフレーズを吹きまくっていますが、エキセントリックな部分は感じません。むしろ若干、タガが緩んだ雰囲気が心地良く、素直にノセられてしまうんですねぇ♪
 しかもデューク・ジョーダンが当時の好調さをモロに出した熱演ですし、リロイ・ウィリアムスのドラミングもビバップを完全伝承した騒がしいスタイルが逆に新鮮だと思います。

B-1 This Can't Be Love
 ベースとアルトサックスによる、ちょっと不穏なイントロから、あの軽やかにお洒落なテーマメロディが浮かび上がるという仕掛けがニクイです♪ リロイ・ウィリアムスのブラシもハッとするほど良い感じですねぇ。
 そしてデューク・ジョーダンが素晴らしすぎる歌心と絶妙に個性的なピアノタッチでアドリブ先発を務めれば、チャールス・マクファーソンは力みが良い方向に作用した名演を披露♪ ほどよい泣き節と真性ビバップのアドリブフレーズはモダンジャズの魅力をたっぷりと伝えるものでしょうね。

B-2 Body & Soul
 これまたジャズの世界では夥しい名演が残されているスタンダード曲ですから、それほど期待もしないで聞いていると、まずデューク・ジョーダンの妙に明るいイントロに???の気分……。
 そして全くの正統派でテーマメロディを吹奏するチャールス・マクファーソンの潔さ! 自然体の自信が滲み出た感動とでも申しましょうか、けっこうグッときます。
 う~ん、チャールス・マクファーソンはバラード吹きの名人なのか!? あまりに素直過ぎて、好きというには赤面しそうな良さがあるのでした。

B-3 It Had To Be You
 これも極めて正統派のモダンジャズ演奏で、快適なテンポでスイングし、泣きのアルトサックスを聴かせくれるチャールス・マクファーソンの魅力が全開しています。
 それは同じパーカー派でも、ルー・ドナルドソンのような明るさもなければ、ジャッキー・マクリーンのような青春の情熱でもなく、フィル・ウッズのようなエネルギッシュなものとも、明らかに違います。なんというか、ちょっとネクラで内向的なメロディ展開と音色の泣きが、実に琴線に触れるんですねぇ♪
 ですからどんなにリズム隊がハードにスイングしても、この演奏のようなシンミリとした余韻が残り、せつないフィーリングが充満していくのでしょう。その相手役としてはうってつけというデューク・ジョーダンも快演だと思います。

ということで、今日では忘れられかけた1枚ですが、当時のジャズ喫茶では一時的に鳴りまくっていたアルバムです。まあ、それはおそらくデューク・ジョーダンの参加ゆえのことでしょうねぇ。全体としては地味な仕上がりですから……。

ただし、この中の「But Beautiful」は素晴らしい名演だと思います。仕事に疲れて帰宅した深夜とか、人間関係に悩んで落ち込んだ時……等々、人間として生きる場合に避けられない時にこそ、こういう「恋のせつなさ、素晴らしさ」を歌い上げたアルトサックスが心に滲みるのでしょうね。

続く「It Could Happen To You」へ繋がっていくところも、メロメロになる甘さがたまりません。

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