■夢回帰線 / 石川ひとみ (キャニオン)
未だネットなんてものが無く、テレビやラジオが全盛だった昭和の時代には、それを支える宣伝業界との「持ちつ持たれつ」が現代以上に大切にされていましたから、芸能界だって無関係であるはずはなく、そこに出演する芸能人のイメージとか、使われる音楽やファッション等々が絶大な影響を及ぼしていた事は、あらためて述べるまでもないと思います。
ですから、明らかに最初からCMソング用に企画制作された楽曲があったり、逆に起用される芸能人に歌わせるためだけに発注される楽曲の夥しさは、現代の比ではなかったと思われるんですが、そんなこんなもレコード産業が元気だった時代の証かもしれません。
さて、そこで本日取り出したのは、石川ひとみが昭和60(1985)年5月に出したシングル盤A面曲「夢回帰線」で、これは某化粧品メーカーのイメージソングとして用いられていたので、テレビやラジオから耳にする機会も多く、それなりに浸透していたメロディだったんですが、それがレコードで聴いてみると、個人的には相当に印象が異なっていたんですねぇ~~!?
これは作詞:岡田富美子&作曲:松田良とクレジットされていますが、全体の雰囲気はAOR系ニューミュージックで、少~しばかりエスニック風味が入ったメロディラインは石川ひとみが持ち前の美声にジャストミートしていますし、既にアイドルから脱却していた(?)彼女には、曖昧な大人の世界観が滲む歌詞の世界も違和感がありません。
しかし、何よりもレコードで聴いて驚くのは、ヘヴィなビートが入ったフュージョンサウンドの作りでして、これは如何にもチト河内の「らしい」仕事に他ならず、なかなか思わせぶりな音使いがニクイところでしょうか。
そ~ゆ~ツボがテレビやラジオからの放送音声では絶対に伝わらなかったのが、当時の実状であればこそ、少なくともレコードを買ったであろう石川ひとみのファンには、嬉しいプレゼントになっていたのでしょうか。
そんなこんなの不粋な推察をしてしまうのが、まあ……、サイケおやじの天邪鬼であり、しかし石川ひとみの綺麗な節回しには、自然と心が癒されるのですから、感謝 (^^♪
これまた、微妙に思わせぶりなジャケ写のイメージも、可愛さ余って憎さ百倍と申しましょうか、やっぱり石川ひとみのアイドル性は消えずと思うばかりでございます。