■Caravan c/w Bulldog / The Ventures (Liberty / 東芝)
毎年、殊更この時期になるとエレキインスト物が聴きたくなるサイケおやじは、つまるところ昭和40(1965)年の師走に加山雄三主演の傑作映画「エレキの若大将」を鑑賞し、忽ちシビレまくった前科前歴があるからに他なりません。
もちろん、当時は日本中にエレキブームが蔓延拡大中でしたから、過言ではなく、ビートルズよりも人気が高かったベンチャーズの魔力にガンジガラメだった所為もあり、とにかくエレキの虜になっていたのは嘘偽りもありません。
ですからベンチャーズのレコードは何れも「聖典」であり、中でも本日掲載のシングル盤は極みの1枚として、その頃のサイケおやじが連日連夜聴き狂った愛聴盤でありました。
あぁ~、今でもこれを書いていて、思わず熱くなってしまうのは、まずA面の「Caravan」がロックをベースにラテンのリズムとジャズ系4ビートを混在両立させた名演である事は言わずもがな、モズライトを弾いては強烈なテクニック、例えばダブルノートのプリングオフやスピード感溢れる半音下降のスケール、さらには三連フレーズの端正な暴虐(?)等々、とにかくこれを完コピ出来れば、即プロは間違いなしとまで言われた華麗なギターがノーキー・エドワーズの真骨頂!
加えてメル・テイラーのモダンジャズも顔負けのスリリングなドラムス、激しいビートを提供するドン・ウィルソンのリズムギターとボブ・ボーグルのベースがあってこそ、これがベンチャーズならでは凄まじいロックグルーヴでありましょう。
実際、この「Caravan」はジャズの王様だったデューク・エリントン楽団の代表作として知られていたんですが、リアルタイムの我が国エレキバンドはプロアマを問わず、とにかくベンチャーズスタイルの同曲をやらねばならないという切迫感に苛まれていたほどの影響力があったんじゃ~ないでしょうか。
しかし、言うまでもなく、これは至難!
リードギターも当然ながら、リズムギターとベース&ドラムスのノリが合わないと、全く悲惨な結末は不可避の決定版ですからねぇ~~~。
ちなみにベンチャーズのスタジオ録音による「Caravan」は、この時点までに2バージョンあり、最初は1960年に発売されたデビューアルバムに収録された、これはリードを弾いているがノーキー・エドワーズかボブ・ボーグルか、ちょいと判然としませんが、それなりにジャズに傾きが感じられる落ち着いた仕上がりになっているのに対し、このシングル盤に収録されたのは1963年頃の録音にしてはド派手な大傑作♪♪~♪
これがロックのギターインスト、その完全証明として人類遺産は確定と思うばかりです。
また、B面収録ながら、これまた極みのロックインストになっているのが「Bulldog」で、オリジナルはファイアーボールズが1960年に大ヒットさせた曲ではありますが、翌年にカバーしたベンチャーズのこのバージョンこそが強烈無比!
もちろんここでもリズムギターを要とし、ベース&ドラムスで作り出すノリの物凄さは絶品ですから、リードギターが決して主役ではないという趣が所謂ベンチャーズサウンドの秘訣かもしれません。
そして、それがあるからこそ、ライブの現場においてノーキー・エドワーズが同曲で披露する例のブリッジ外奏法が冴えまくるのでしょう。
そのあたりの名演は、特に当時の日本公演から作られたライブアルバムや映画でも堪能出来る幸せの瞬間でもありますので、どうか皆様にも存分にお楽しみいただきとうございます。
ということで、ベンチャーズが唯一無二の存在として屹立しているのは、バンドとしての一体感というか、強靭なロックのグルーヴをバンド全体で放出発散させていたからだと!?!
これは実際にエレキバンド、あるいはロックバンドをやった皆様であれば共感していただけると思いますが、グループとしてのリズムやビートが纏まっていないと、幾らリードのパートを練習しても収まりが悪いのは必然ですし、逆にそれがある程度出来上がっていれば、ボーカルだろうが楽器演奏であろうが、リードのパートはそれなりにカッコがついてしまうんですよねぇ~。
ベンチャーズが基本、4ピースのバンドであるという真実に鑑みても、その大切さが伝わってくるものと確信している次第です。
最後になりましたが、掲載の私有盤に写るベンチャーズのステージにおける雄姿は、同時に手の届かない楽器や機材への憧れでもありました。
つまり少年時代のサイケおやじは学校での掃除の時間、箒でエレキのバカ大将だったというわけです。