OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

まさに進化系だったイエス

2009-08-12 11:19:52 | Rock

Yes (Atlantic)

今と違って海外情報が不足していた1970年代、特に洋楽関連で広く行われていたイベントがフィルムコンサートとかレコードコンサートでした。

これはファンクラブやレコード会社、あるいはオーディオ専門店が主催する集まりで、有料の時もありますが、ほとんどがプロモーションを兼ねた無料が多かった所為もあり、青春時代のサイケおやじは楽しみにしていたものです。特にレコード会社の宣伝担当者が配る新譜情報のチラシとか、時にはシングル盤のサンプルまでもらえたんですよ♪♪~♪

さて、本日ご紹介のアルバムは昭和45(1970)年にあった、そういうイベントで邂逅した1枚で、プログレの名門バンドとして今も活躍を続けるイエスのデビュー盤! 本国イギリスでは1969年に発売されていたものですが、我国では翌年に出たということです。しかもジャケットは掲載したイギリス盤とは異なり、メンバーが古い建物の前に立っているという、あまり冴えたものではありません。ちなみに邦題は「イエスの世界」という帯がついていましたですね。

しかし内容は、まさにサイケおやじの感性にジャストミート!

ジャズとロックの美しき融合というか、非常に作り込まれた世界でありながら、アドリブパートの自然発生的なノリが、全く未体験の世界でしたし、コーラスの美しさも絶品♪♪~♪ そして曲そのものも知っているメロディがあって、つまりは他のバンドによる有名曲がイエス流儀にカパーされていたのです。

 A-1 Beyond And Before
 A-2 I See You
 A-3 Yesterday And Today
 A-4 Looking Around
 B-1 Horold Land
 B-2 Every Little Thing
 B-3 Sweetness
 B-4 Surviva

まずA面では私の大好きなザ・バーズのカバーバージョン「I See You」が圧巻! ちなみに当日はアルバム全篇が聴けたわけではなく、選ばれた曲だけが流れたのですが、その初っ端が、この演奏でした。アップテンポのジャズビートで、イントロから弾きまくられるギターもオクターヴ奏法やフレーズ展開が完全にモダンジャズ! しかも見事なコーラス主体の歌メロの処理も素晴らしく、タイトなドラムスに蠢くベースという、これがまた私の好きな世界なんですねぇ~~♪

イエスの結成は1968年の初頭らしく、メンバーはジョン・アンダーソン(vo,per)、ピーター・バンクス(g,vo)、トニー・ケイ(key)、クリス・スクワイア(b,vo)、ビル・ブラッフォード(ds,per,vib) というのが当時の5人組でしたが、ご存じのように彼等はメンバーチェンジの度に新しいバンドを派生させ、またイエス本体も様々に飛躍充実した活動を展開していくという流れも、全てはここからがスタートでした。

そして私をこの時点で歓喜悶絶させたのが、トニー・バンクスのモロにジャズっぽいギターと千変万化に凄いビートを叩き出しているビル・ブラッフォードのドラムスで、前述「I See You」でのアドリブパートの強靭なノリは、ちょうど本格的にモダンジャズを聴き始めていたサイケおやじをグッと惹きこんだのです♪♪~♪ まさに歌入りロックジャズ、ここにあり!!! あぁ、4ビート、最高っ!!!

しかし、決して当時のニューロックという本質も忘れておらず、クライマックスへと疾走していく激動の盛り上がりも痛快! もう、この一発だけで、シビレまくりでしたよっ!

さらにもう一丁、驚かされたのが続く「Yesterday And Today」での、一転して爽やかな和みの世界です。綺麗な曲メロを透明感溢れるボーカルとコーラスで聴かせる、そのミディアムテンポのノリも心地良く、生ギターとピアノの響きも素敵ならば、隠し味としてのヴァイブラフォンも潔く、また絶妙のアクセントを強調するベースやジャズっぽいエレキギターも素敵です。

おまけにB面から選曲された「Every Little Thing」は、ご存じビートルズの隠れ人気曲を過激にロックジャズ化したトンデモバージョンなんですが、初っ端から猛烈にアグレッシプなバンドのアンサンブルとアドリブの縺れ合いから一瞬の隙をついて飛び出すテーマメロディ、そしてなんと「Day Tripper」のギターリフまでもがサービスされるという快感が、たまりません♪♪~♪ もちろん綺麗なコーラスワークも当然が必然ですし、タイトなロックビートがポリリズムに進展していく流れも凄いの一言です。嵐のようなバンドの勢いをさらに過熱させるクリス・スクワイアのエレキベースも実に最高ですし、ちょいと懐かしい響きのオルガンとか、とにかく1960年代ロックが確実に「1970年代」へと進化した喜びが満喫出来ると思います。

しかしご推察のように、当時のサイケおやじは、これほど夢中になったアルバムさえ、お金が無くて買えませんでした……。そこで数年後、リベンジの意味をこめて入手したのが、本日掲載のイギリス盤アナログLPなんですが、このジャケットのトッポイ漫画のようなデザインは???

今日の歴史では、有名グループの全く売れなかったデビュー盤として最右翼のひとつになっていますが、それもムペなるか……。しかもド頭に収録された「Beyond And Before」が、個人的にはアルバムの中で一番につまらない曲と演奏なんですねぇ……。

このあたりは十人十色の心持なんでいしょうが、なんというか無難というか、纏まり過ぎというか……。他の楽曲の演奏が驚異的なだけに、実に勿体ないと思います。

イエスの魅力とは、当時の流行だったブルースロックっぽさが全く無いことかもしれません。その意味ではサイケおやじの嗜好に合っていないのは確かです。しかしこの頃のロックジャズ系の演奏は本当に好きです。

「Looking Around」でのバロック系バードロックは第一期ディープ・バーブルよりも鮮やかですし、大衆狙いの楽しいアートロック「Horold Land」や我国のGSが十八番にしていたクラシックと歌謡曲の融合を想起させられる「Sweetness」にも捨てがたい魅力があります。

そしてオーラスの「Surviva」はフュージョンロックの先駆けとでも申しましょうか、ピンピンに活躍するクリス・スクワイアのエレキベースとビル・ブラッフォードの既にしてクリムゾンライクなドラミング、そして作り込まれたギターサウンドと曲の展開が、その後のイエスを予感させてくれますよ。

ただし告白すると、そうした大艦巨砲主義は決して好きではなく、ここで楽しめるようなイエスが、私にとっては一番です。

今となっては完全に無かったことにされているアルバムかもしれませんが、このジャズっぽさ、現実的なプログレ感覚は最高ですよっ!

機会があれば、ぜひとも聴いていただきたい1枚です。

コメント
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