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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

1969年のマイルス、熱い映像!

2008-09-01 15:39:13 | Miles Davis

昨日、今日と防災訓練に駆り出されました。中国でも先月末に再度の地震がありましたし、我が国は局地的に集中豪雨で被害が続出! これまでは「訓練」と割り切って、笑いながらやっていた時もありましたが、今回ばかりは神妙な参加となりました。

被災された皆様には、心からお見舞い申し上げます。

ということで、本日も新ネタから――

Miles Davis Quintet Live in Copenhagen & Rome 1969 (Jazz Shots)

何時の時代も前向きなマイルス・デイビスが一番揺れていたというか、モダンジャズとロックとソウルの狭間でスリリングに自己のサウンドを模索していたのが1969年頃じゃなかったでしょうか?

歴史的には名盤「In A Silent Away」と不人気な大ヒット盤「Bitces Brew」を出してロックファンにもアピールしていた時期ですが、イノセントなジャズ者から疎んじられはじめたのも、この頃だったと思います。

しかし前述のスタジオ録音盤はともかくとして、ライブの現場で残されたブート音源あたりを聴くと、これはジャズでしかありえない熱気が充満していますねっ♪

で、本日ご紹介のDVDは、そんな時期の欧州巡業から2ヶ所で撮影収録された映像が楽しめる強烈なプレゼントです。もちろんこれまで一部はブートで出回っていましたが、一応は正規商品ということで、リマスターも極力徹底しています♪

メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ウェイン・ショーター(ss,ts)、チック・コリア(p,key)、デイヴ・ホランド(b)、ジャック・ディジョネット(ds) という、これも「黄金のクインテット」と呼んで差支えない5人組です――

Live in Copenhagen (1969年11月4日)
 01 Bitces Brew
 02 Agitation
 03 I Fall In Love Too Easily
 04 Sanctuary
 05 It's About That Time into The Theme
 一応チャプターが打たれて上記の曲が演奏されています。しかし当時のマイルス・デイビスのバンドでは、これがメドレー形式というか、ラストテーマを端折って次のテーマを提示しつつ、演奏が進行していく流れがスリル満点に楽しめます。
 ちなみにこの映像はカラーですから、マイルス・デイビスのサイケな衣装も鮮やか♪ 気になる画質は「B+」程度ですが、それほど酷いとは感じないと思います。しかもカメラワークや構図ギメが相当に良いんですねぇ~♪ 普通、ジャズの映像作品は、どうしても演奏の「音」が中心になってしまうので、画面を観てると飽きたりしますが、これはそんな事の無い優れものだと思います。
 そして音質もバランスの良い好録音ですから、おそらくテレビ用のソースかもしれません。
 さて気になる演奏は厳かにスタートして激烈なフリーに突入する「Bitces Brew」、それが一転して痛快な4ビートでスイングしまくる「Agitation」の連続技で完全KOされます。
 マイルス・デイビスも新しい感じのフレーズを吹いていますし、ウェイン・ショーターは誰も立ち入れない独自の境地を披露! ロックビートも交えて激烈に敲きまくるジャック・ディジョネットは、動く映像で見るとさらにカッコイイです。
 またチック・コリアはエレピ中心に演奏していますが、これが唯我独尊というか、嬉々として自分の好き放題な展開ですから、個人的には良い意味で笑ってしまう瞬間もあります。一切の妥協をしないデイヴ・ホランドの頑固さも見事ですね♪
 そして後半はマイルス・デイビスがリードしてフリーを現実回帰させる「I Fall In Love Too Easily」、ちょっと神妙な「Sanctuary」が続いた後、「It's About That Time into The Theme」で再び地獄のグルーヴが炸裂します。
 あぁ、それにしてもこの緊張感と弾けっぷりは流石、当時の最先端バンドだけあります。ここまで約53分近く、全くダレることのない展開は、これもひとつのジャズ黄金期でしょうね♪

Live in Rome (1969年10月27日)
 06 Bitces Brew
 07 Miles Runs The Voodoo Down
 08 I Fall In Love Too Easily
 09 Sanctuary into The Theme
 10 Directions
 11 Masqualero
 こちらはローマでの映像で、これまでにもブートで出回っていたソースをリマスターしたものです。しかし残念ながらモノクロですし、演奏そのものに編集が施されているので、やや煮え切りません。カメラワークは秀逸なのに、けっこう良いところで切って、次に繋げる編集が強引というか……。ちなみに画質は「A-」でしょう。
 それでも音的にはバランスの良い録音ですし、演奏は一級品! 豪快にして緊張感満点というバンドの勢いが凄いです。特にリズム隊は怖いですねぇ~。ロック&ソウルのノリが見事な「Miles Runs The Voodoo Down」とか、ジャズの保守本流を感じせてくれる「Directions」あたりでは、マイルス・デイビスも煽られ気味で大熱演!
 もちろんウェイン・ショーターもマジギレの奮闘なんですが、なぜかこっちのパートでは冷遇されているというか、アドリブの途中なのに無残にも編集のハサミが……。あぁ、勿体ない! ジャズは一期一会なんですぜっ!
 それでも「Directions」のテーマの入り方なんて、もう絶句してしまう最高のカッコ良さ♪ もちろんマイルス・デイビスも強烈な存在感ならば、ジャック・ディジョネットは親分の顔色なんか気にしていないブッ敲きですよっ♪ 思わず叫びたくなるほどテンションが高いです。
 そしてチック・コリアは十八番のラテン系フレーズまで出してくれますし、オーラスの「Masqualero」が瞬間的に終ってしまうのは、本当に悔しい限りという熱い、本当に熱い演奏なのでした。

ということで、これも「お宝」です。電化マイスルというにはちょいと早く、しかし従来のモダンジャズからは一歩抜きんでた過渡期の演奏とはいえ、実はマイルス・デイビスが一番ヤル気のあった時代かもしれません。

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なにをいまさら

2008-02-20 17:24:49 | Miles Davis

今日はタイミングが悪いというか、思いっきり仕事に振り回されました。正直言って、疲れた……。

ということで、本日は――

Kind Of Blue / Miles Davis (Columbia)

今更、私などが云々するアルバムではないほどの名盤です。まさにモダンジャズの金字塔!

メンバーはマイルス・デイビス以下、当時のバンドレギュラーだったキャノンボール・アダレイ(as)、ジョン・コルトレーン(ts)、ビル・エバンス(p)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) というだけで、完全降伏でしょう。

録音は1959年の春、なんと発売前から名盤という噂があったそうです。確かに、これは名盤の中の大名盤でしょう。

しかし今日では、オリジナルアナログマスターにピッチの狂いがあったということで、CDでは正確な演奏スピードに補正されているそうですが、う~ん、なんだかなぁ……。

なにしろ、それが発覚したのは発売されてから30年以上たっての事です。とすれば、その間にミュージシャン側がそんな事に気がつかないわけが無く、それでも放置していたのですから、現行CDの演奏が正確なピッチだとしても、それはオリジナルとは言えないでしょう。

ですから、この名盤はアナログLPで聴くのが正しいのです。

ちなみに、その裏ジャケ解説はビル・エバンスが担当しておりますが、なんと「All Blues」と「Flamkenco Sketches」の曲名を取り違えて説明しているという???がありますね。

まあ、いろいろとやってくれるのが名盤の必要充分条件かもしれません。

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マイルスはカッコイイ!

2007-11-11 17:44:25 | Miles Davis

早朝から仕事の連絡とか、全然、和めない日曜日でした。ケイタイなんか発明した奴を怨みた~い!

ということで、ジャズの基本的な素晴らしさを感じる、これを――

Miles Davis In Europe (Columbia)

トランペッターはカッコイイ!

それはジャズの花形プレイヤーですから、まあ、当たり前なんでしょうが、そのスタイルのカッコ良さを知らしめてくれたのが、このマイルス・デイビスのアルバムでした。

とにかくビシッとキメたスーツ姿のマイルス・デイビスが、スポットライトを浴びながら、体を反らせてトランペットを鳴らす、そのクールなカッコ良さ!

このジャケットを見たのは、まだロクにジャズも聴いていない時期の私でしたが、当にモダンジャズのカッコ良さだと直感させられたんですねぇ~♪

内容はタイトルどおり、マイルス・デイビスが正統派4ビートの素晴らしいバンドを率いて演じたライブ盤です。

録音は1963年7月27日、フランスのアンチーヴジャズ祭での音源で、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ジョージ・コールマン(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウイリアムス(ds)という、言わずもがなの面々です――

A-1 Introduction
 当然ながらフランス語によるバンド紹介ですから、エルビアン・クックがピアノなんですねぇ~。思わずニンマリです。

A-2 Autumn Leaves
 皆が大好き♪ マイルス・デイビスが十八番のスタンダードですが、原曲はもちろんフランスのシャンソンですから、二重の大サービスを狙ったんでしょうか? これにもニンマリです。
 マイルス・デイビスはミュートで、思わせぶりなメロディフェイクの至芸を披露していますが、絡みつくようなロン・カーターのベースを筆頭に、暗黙の了解に満ちたリズム隊が素晴らしいですから、緊張感に満ちた展開にはゾクゾクしてきます。トニー・ウイリアムスのブラシも実に良いですねぇ~♪
 そして演奏が盛り上がったところで登場するのが、ジョージ・コールマンというわけですが、その刹那に激を飛ばすトニー・ウイリアムスのシンバル&タムが、若造の憎たらしさで最高! もちろんビートはグイノリに変化していますから、ジョージ・コールマンも全く油断出来ない雰囲気で熱いフレーズを迸らせるのです。
 またハービー・ハンコックも熱演で、分かり易いフレーズで真っ向勝負の姿勢は潔いかぎり! もちろん個性は充分に発揮しています。う~ん、トニー・ウイリアムスが小賢しいぞっ!
 するとマイルス・デイビスが抽象的なイメージでラストテーマを入れてきますから、もはや辛抱たまらんの世界なのでした。

A-3 Milestones
 猛烈なスピートで突入するテーマのカッコ良さに、ウォ~~! と反応する観客の雰囲気が最高♪ マイルス・デイビスは徹底的に突進する姿勢ですから、リズム隊も懸命です。
 またジョージ・コールマンが流れて止まらないという恐ろしさで、リズム隊を圧倒していくのも凄いところです。
 このあたりは、まだまだ発展途上だったトニー・ウイリアムスの未熟さといえばミもフタもありませんが、それでも強烈なアクセントとツッコミで反撃する場面が多々あって、熱くさせられます。
 そしてハービー・ハンコックのアドリブパートも激烈というか、やはり当時のトップバンドだった新しい勢いが見事だと思います。

A-4 Joshua
 当時のマイルス・デイビスにとっては新しい演目でしたから、緊張感が感じられるのは当然でしょうか。アドリブそのものは幾つかのキメのフレーズを中心にした単調なものですが、リズム隊のシャープな斬り込みを活かした組み立てになっているみたいですから、スリル満点です。
 ジョージ・コールマンも演奏スピードの強弱を使って新しい世界を構築していきますが、ここでもリズム隊の動きは俊敏! 共謀して圧倒的な成果を上げています。
 う~ん、はっきりとわかるテープ編集が……。

B-1 All Of You
 またまたミュートを使ってマイルス・デイビスが安らぎを作り出していきますが、背後で蠢くリズム隊に耳が行くのも、また事実です。デリケートな表現が素晴らしいマイルス・デイビスに寄添うロン・カーター、些か無神経にビシバシとキメるトニー・ウイリアムス、その両者を取持つハービー・ハンコック♪
 いゃ~、ジャズって本当に良いですねぇ~~~♪

B-2 Walkin'
 オーラスは激烈モードのブルース大会なんですが、このメンツですから全力疾走は、お約束です。特にマイルス・デイビスは例によって一本調子のフレーズ展開が、ここでは良い方向に作用して、トニー・ウイリアムスの大暴れを誘います♪
 しかしジョージ・コールマンが、些か苦しんでいます。まあ、この人の個性は、モヤモヤ展開の中にハッとするほど良い感じのフレーズを炸裂させるところですから、結果オーライなんですが……。
 またハービー・ハンコックは可もなし、不可もなし……。というよりも録音の状態がイマイチなんで、キレの良いアドリブ展開が勿体無いなぁ~。
 ちなみにこの演奏もテープ編集が施されています。

ということで、音源は元々、放送用に録られたものかと思います。所有盤はモノラル仕様なので、ステレオバージョンのミックスとかはご容赦願いたいのですが、テープ編集が施されているのがミエミエでした。

ところが近年、完全版がCDで出ているらしく、また演目が追加されたボックス物もあるというので、物欲に悩まされています。きっと音質も改善されているんだろうなぁ~。

まあ、それはそれとしてフランス国旗をイメージさせるジャケットデザインも素敵ですし、演奏の充実度というか、まだまだ発展途上にあったバンドの勢いが存分に楽しめる作品だと思います。

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名盤地獄篇

2006-08-13 19:19:55 | Miles Davis

Miles Davis In Berlin (Columbia / CBSソニー)

私がジャズを本気で聴きはじめた頃は、まだフリージャズが大手を振っていましたので、例えジャズ喫茶でも知らないレコードを聴く時には緊張しましたし、ましてLPを買うとなれば、相当な覚悟が必要でした。

それはもちろん、乏しい小遣いの中から2千円前後の出費をするわけですからねぇ……。しかし純粋に聴きたいという欲求からは逃れることが出来ません。

実は私はウェイン・ショーターというサックス奏者が大好きなんですが、ご存知のようにこの人はハードバップ、モード、フリーからフュージョンまで、何でもござれの天才なので、その変幻自在なスタイルゆえに、危険度も大きいのです。

例えば、参加メンバーのほとんどがマイルス・デイビスのバンドレギュラーという「スプリング / トニー・ウィリアムス(Blue Note)」という作品なんか、大いに期待して買った結果として、亜空間を彷徨うような、自分としては愕然とするような内容に失意のどん底に落とされた記憶が、今も鮮明です。

尤もこの作品とて、今では愛すべき1枚になってはいるのですが、実は当時、ガールフレンドとの付き合いを天秤にかけて買ったブツだったんで、その落胆ぶりを察していただければ……。

あ~ぁ、レコード集めには全てを犠牲にしなければならないのか?

なんていう自虐的自問自答を繰り返しつつも、結局止められないのが、この奥の細道! そんな中で堂々の自身を持って買ったのが、本日の1枚です。

録音は1964年9月25日、ベルリンでのライブで、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という、所謂黄金のカルテットですが、お目当ては完全にウェイン・ショーターで、マイルス・デイビスが入っているのなら、メチャクチャは無いだろうという、つまりこの時の私にとってマイルス・デイビスとは、安心感のお守りのような存在でした。

あぁ、これ読んで激怒する人が必ずいらっしゃるでしょうねぇ……。しかしこれが本音のその内容は――

A-1 Milestones
 モードジャズに先鞭をつけた演奏として歴史の一部になっているオリジナル演奏は、キャノンボール・アダレイ(as) やジョン・コルトレーン(ts) を含む豪華メンバーによって1958年にスタジオ録音されていますが、リアルタイムのステージでは、ほとんど演奏されていなかったと思われます。
 つまりそれほどに突出した演目だったわけですが、1963年頃からのハービー・ハンコックやトニー・ウィリアムス、ロン・カーターのリズム隊を得てからは、堂々と演奏されるようになり、ここに烈しく燃えたバージョンが残されました。
 それは神経質に突っ走るトニー・ウィリアムスのシンバルに煽られ、焦りを漂わせながらも、お約束のフレーズばかり吹くマイルス・デイビスのカッコ良さ! この当時のライブで特徴的な変幻自在のテンポ設定も時折入れながら、バトンを受けるのが、私にとっては真打のウェイン・ショーターです。
 あぁ、やっぱり最高! 当時はバンドに参加したばかりなのに、全くリズム隊に遠慮することなく、自分勝手にテンポを変えたり好き放題に吹きまくるフレーズには、フリーもロックも内包した恐ろしさが感じられます。
 もちろんリズム隊は、そんな自己中心的な奴を許しておくはずもなく、烈しいツッコミを入れてくるんですが、悉くはね返されている様が痛快です♪
 ですから続いてリズム隊だけの演奏になると、この3人は完全に憂さ晴らし走るというわけですが、それが全体のテンションを高める結果なんですから、ジャズって本当に素敵だと思います。

A-2 Autumin Leaves / 枯葉
 これこそマイルス・デイビスには欠かせない切り札的なスタンダード曲♪ もちろんミュート・トランペットの妙技を聴かせてくれますが、録音状態の所為か否か、音の強弱が烈しく、消え入りそうになった次の瞬間に爆裂的に大きな音が鳴り出すのですから、リスナーは必要以上の緊張感に苛まれると思います。
 もっともそれがマイルス・デイビスの狙いかも知れません。確かにこの緊張感があってこそ、泣いている音色に酔える部分がありますから……。
 トニー・ウィリアムスのブラシやツボを外さないロン・カーターのベースも秀逸で、マイルス・デイビスと一緒になっての締め括りの大盛り上がりは、本当に強烈です。
 そしていよいよ登場するウェイン・ショーターも驚愕の名演です! それは強烈な変態フレーズの連発と脱力寸前の思い入れ、フリーに見せかけたメロディフェイク、さらに全体の構成がショーター好きな者には、ますます好きにさせてくれるもので、全てが8分2秒目からのキメのフレーズに集約されている物凄さです。
 またここで全体がかなり元曲から離れてしまった演奏を、見事に皆が知っている「枯葉」に引き戻すハービー・ハンコックも流石です♪ 多分メンバー中で一番の保守派であろうこのピアニストの存在ゆえに、マイルス・デイビスも安心して危険分子のウェイン・ショーターを入れることが出来たのではないでしょうか。

B-1 So What
 マイルス・デイビスの演目では定番の盛り上がり曲ですから、全員が忌憚の無い爆裂ぶりを堪能させてくれます。
 中でもトニー・ウィリアムスの張り切りは、何時だって最高です! ヤケクソのバスドラ、神経質なシンバル、合の手を超越したタムとスネアのコンビネーション! この時、弱冠18歳なんですよねぇ~♪ あまりの事にマイルス・デイビスの怒りの一撃も、虚しく空を切るばかりです。
 そしてそれが一層激烈になるのが、ウェイン・ショーターが登場してからのパートです。ここでは相当にジョン・コルトレーン風のフレーズが繰り出されますが、トニー・ウィリアムスにとっては馬耳東風! ならばと、ウェイン・ショーターは十八番の変態フレーズを連発して対抗するのですから、これにはハービー・ハンコックも成す術無しのアドリブ地獄です。
 その中でクールにビートを刻むロン・カーターが一番印象的な演奏でもありますが、これがジャズ最高! と叫ぶ瞬間なのでした。7分5秒目あたりからの一体感なんて、最初からの仕込みでしょうねっ♪

B-2 Walkin'
 これも人気演目の中の大名演です。最初っから激烈なアップテンポがお約束ながら、ここでの荒っぽいトニー・ウィリアムスは完全に演奏をぶち壊す寸前ですから、マイルス・デイビスもキメのフレーズだけで、得意の思わせぶりを聞かせることが出来ません。完全に若造に煽られているマイルス・デイビス、いつまでも若くは無いことを自覚させられたはずですが……。
 そのトニー・ウィリアムスがますます増長するのが、次のパートでのドラムソロです。何時もよりは空間を切り詰めた感があるものの、リスナーには至福の一時でしょうか。
 しかし不幸の種は幸福の絶頂で蒔かれるというか、続くウェイン・ショーターはそんなトニー・ウィリアムスに冷や水を浴びせるような意地の悪いフレーズばかりを吹きまくりです。そう、もはやこれはフリー寸前! ロン・カーターがルートの音をしっかり出しているので、辛うじて踏み止まっていますが、ハービー・ハンコックまでもが、それに同調してメチャクチャに走りそうで、恐いものが漂います。
 しかし流石、自分のパートでは変幻自在の物分りの良さを発揮し、ビル・エバンスでは無い新感覚のピアノトリオ演奏を披露してくれます。あぁ、ここでの3人は、もう最高です。

B-3 Theme
 前曲に続いて演奏されるバンドテーマで、ロン・カーターが短く一人舞台を演じ、アッという間に終わる物足りなさが逆に素敵です。トニー・ウィリアムスなんか、叩き足りない欲求不満がアリアリですからねぇ~♪

ということで、これはウェイン・ショーターのワンホーン盤にマイルス・デイビスがゲスト参加というのが、私の聴き方です。実際、異議ありとは思いますが、この頃のマイルス・デイビスって、常に同じようなフレーズしか吹いていませんし、特にアップテンポ物では完全な金太郎飴状態……。あれっ、モードって自由にアドリブ出来るはずだよねぇ~? なんか自分からワナに陥ったマイルス・デイビス?

私は何故、マイルス・デイビスが相方にもうひとりのホーン奏者を入れるのか、不思議でした。だってお客さんはマイルス・デイビスを観に来るわけだし、レコード会社だってマイルス・デイビスが良いソロを演じたテイクを使っているわけですからねぇ……。マイルス・デイビス四重奏団でOKでは?

しかし、こう毎度、同工異曲のフレーズしか吹かないのでは、その理由も肯けます。つまりお客さんが飽きてしまうから……。とにかくこの当時のマイルス・デイビスに必要だったのは、変幻自在の極北というホーン奏者だったのでしょう。それにはウェイン・ショーターがうってつけ! もちろん、その根底に潜む広範な音楽性にも目をつけたに違いありません。

もちろん結果は、庇を貸して母屋を取られる寸前だったわけですが♪ まだまだここでは猫を被ったウェイン・ショーター、そして腹の探り合いをしていないマイルス・デイビスということで、素直に激烈な演奏を楽しむことが出来るのでした。

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間違えられたブツ

2006-07-24 17:15:37 | Miles Davis

ネットで頼んでいたブツがドカッと入荷♪ 昼飯もそこそこにルンルンしながら開封していたら、全く身に覚えの無いものが……!

宛名を見たら、誤配でした。

でも、そのブツが問題なんですよ。夫婦生活に使うと思われるような物品とか下着類、精力剤……等々が!

まあ、よく確かめもせずに開封した私のミスなんですが、相手に謝るにしても、お互いに顔が悪いというか、なにせ本当の受取人はカタイ人という評判ですからねぇ……。

いやはや、困ったと思いつつ、猫耳のバカ秘書に口止めをして宅急便屋に電話した私ではありますが、まずは本日の1枚として、これを――

Filles De Kilimanjaro / Miles Davis (Columbia)

ジャズの帝王と呼ばれたマイルス・デイビスの諸作中、最も聴かれていないアルバムが、本日の1枚じゃないでしょうか? まあ、「オン・ザ・コーナー」という怪盤もありますが、そっちはラップの元祖扱いでの人気もありますから。

で、この邦題「キリマンジャロの娘」というアルバムは、マイルス・デイビスが1960年代に黄金のクインテット=ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスと共に極限まで追求した王道ジャズを、さらに進化させようと悪戦苦闘した記録から作られたものだと思われます。

それは結論から言うと、この後に発表される名盤「イン・ナ・サイレントウェイ」や「ビッチズ・ビリュー」という歴史になった作品を鑑みて、この「キリマンジャロの娘」は別に出なくても何ら問題無いとさえ、私には思えるのです。

まあ、最初からあまりにも極論で額に汗が滲むわけですが、しかし実際、このアルバムの魅力はリーダーが煮え切らないところでは?

録音は1968年6月と9月、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p,key)、ロン・カーター(b,el-b)、トニー・ウィリアムス(ds) に加えて、チック・コリア(p,key)とディブ・ホランド(b,el-b) が新たに参加し、入り乱れたセッションになっています――

A-1 Frelon Brun / Brown Hornet (1968年9月24日録音)
 チック・コリアとディブ・ホランドという新作組が参加した演奏で、そこにトニー・ウィリアムスが入ったリズム隊によるドドスコ・ビートのイントロから、ジャズでもロックでも、ましてやジャズロックでもないリズムに煽られて、ネクラの作り笑いのようなテーマが提示されます。
 アドリブの先発はもちろんマイルス・デイビスで、どこか苦しそうに十八番のフレーズばかりを吹いていきますが、チック・コリアの不気味な伴奏が印象的です。
 しかしウェイン・ショーターにとっては、こういう雰囲気は得意中の得意ということで、後のウェザー・リポートのようなフレーズまで繰り出しています。
 そしてチック・コリア! フリーとロックの狭間に存在するブラックホールを捜し求めるような味が、完全に……???
 全体に試行錯誤から抜け出せない迷い道だと思いますが、これをアルバム冒頭に据えたプロデュースは流石なんでしょうか……? ただしトニー・ウィリアムスのトラムスは壮絶! 大音量で聴くと印象が変わってしまう魔法が秘められています。
 やっぱりド頭で正解か!?

A-2 Tout De Suite (1968年6月20日録音)
 ここではハービー・ハンコックがエレキピアノ、ロン・カーターはエレキベースを弾いているようです。つまりバンドが新しい挑戦を始めた記録ですが、演奏そのものは全く今までの王道路線で、テーマはスローテンポで神秘的なものが追求されています。
 またアドリブパートでは全員が自在なリズムを使いながら、あくまでもマイルス・デイビスの目論見を看破しようと奮闘しますが、当の本人はそうした緊張感を楽しんでいるかのような快調さです。その鋭さにはトニー・ウィリアムスが一番良い反応を聴かせていることも、特筆すべきだと思います。
 そしてウェイン・ショーターが、また物凄いです。トニー・ウィリアムスの激烈なドラムスを物ともしない泰然自若ぶりには、呆れ果てる他はありません。リズム隊も完全にキレています。暗黙の了解を超えた心的交歓♪
 そこへいくとハーヒー・ハンコックは保守的というか、それが長所ですねっ♪ ジャズ者は和み、ロック&ソウルファンは驚愕でしょう。あぁ、最後はゴスペル!
 さらにトニー・ウィリアムスは、後のライフタイムを彷彿させる爆発ぶり! これではロン・カーターが可哀想というか、終始、細切れ状態なのでした……。

A-3 Petits Machins / Little Stuff (1968年6月19日録音)
 マイルス・デイビス作となっていますが、実はギル・エバンスから大きなヒントを貰った演奏で、従来の4ビート路線を継承しつつ、ジャズの王道を突っ走るバンドは最高です。
 もちろんハービー・ハンコックはエレキピアノを弾かされていますし、ロン・カーターも純粋4ビートはやってくれませんが、トニー・ウィリアムスのドラムスがどうしても暗黙の了解で、オフビートから抜け出せないようです。
 それゆえに烈しい演奏が逆に安らぐというか、ガチガチのジャズファンなればこそ、これは安心できる仕上がりになっています。
 ジャズは最高だぁ! と声を大にして宣言出来ますねっ♪

B-1 Filles De Kilimanjaro / Girl Of Kilimajaro (1968年6月21日録音)
 このアルバムタイトル曲は不思議な明るさがあり、次作「イン・ナ・サイレントウェイ」への繋がりが感じられます。
 なにしろトニー・ウィリアムスのドラムスがモロですし、一応データではハービー・ハンコックがエレキピアノとなっているのですが、私にはチック・コリアのように聞こえてしまうという……。
 肝心のマイルス・デイビスは煮えきっていません。尻つぼみというか……。
 しかしそれをバネに反撥するのが、ウェイン・ショーターのディープなテナーサックスで、もう完全にウェザーリポートになっていますねっ♪

B-2 Mademoiselle Mabry / Miss Mabry (1968年9月24日録音)
 思わせぶりが先行したソウルゴスペルで、どこまでもスローな展開にはイライラさせられますが、反面、時折入るキメのフレーズやショック療法的なビートの嵐が、待ちきれない快感になっています。
 こういう展開はマイルス・デイビスが散々やってきたものと、ビート感覚は違っても本質は同じなので、ウェイン・ショーターも安心して自己中心の美メロアドリブを存分に聴かせてくれます♪
 さて、問題はリズム隊で、このエレキピアノはデータではチック・コリアとされていますが、本当か? ハービー・ハンコックじゃないのか? 曲調からすればジョー・ザビヌルかキース・ジャレットが最適なんでしょうが!
 まあ、それはそれとして、ここでもトニー・ウィリアムスが最高ですねっ♪ もちろん4ビートなんて叩いてくれませんが、激情にまかせたように見せかけた計算づくの一撃が、たまりません!

ということで、これは全曲がマイルス・デイビスのオリジナルという意欲作ですが、肝心のリーダーがオトボケをかましたり、脱力する部分があったりで、いやはやなんともです。

しかしトニー・ウィリアムスとウェイン・ショーターが物凄い出来栄えで、存在感満点なんですねぇ~♪ それゆえにマイルス・デイビス名義で出す必要があったのか? という疑問がつきまとうのです。

まあ、契約問題とかもあったのでしょうが……。

結局、次作の「イン・ナ・サイレントウェイ」があまりにもカッコ良く、出来すぎだったのが、このアルバムの致命傷というか、後追いで聴くと如何にもジャズのドロ臭味が目立ちます。

ただしトニー・ウィリアムスが本当に凄まじく、大音量で聴くとスカッとするのも、また事実♪ いつの日か傑作盤へと衣替えする可能性を秘めているのでした。

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