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日めくり万葉集(48)

2008年03月19日 | 万葉集
日めくり万葉集(48)は大伴家持(おおとものやかもち)の歌。選者は日本と中国の文化の違い、美意識を研究している朱捷(しゅしょう)さん。

【歌】
春(はる)の園(その)
紅(くれなゐ)にほふ
桃(もも)の花(はな)
下(した)照(で)る道(みち)に
出(い)で立(た)つ娘子(をとめ)

巻19・4139   大伴家持(おおとものやかもち)

【訳】
春の園の紅に美しく咲いている桃の花。木の下まで照り輝く道に出て、たたずむ“おとめ”よ。

【選者の言葉】
この歌は絵画的で視覚的。とくに“にほふ”という言葉が印象的で効果的に使われている。万葉集ではよく“にほふ”という言葉と“さかり”という言葉が一緒に使われる。

人間や自然の生命の“さかり”が“にほふ”。“にほふ”ものが“さかり”を示すという風に使われる。個人的にはゴッホの「ひまわり」という作品がエネルギーや生命力を感じて、大好きな作品。

そういう視点から見ると、この歌は画家ではないが、“にほふ”という一言で、桃の花の“さかり”と若い娘の瑞々(みずみず)しさをわずか一言でうまく絵画的に描けているなと。

“にほふ”という言葉は語源からいうと、“に”は“赤い土”。赤い土は日本のアチコチにあって、その正体は水銀の原鉱石。“ほ”というのは“生まれる”“出てくる”という意味。

だから“にほふ”というのは、赤い土が地面いっぱいにあらわれている。そういう意味だった。この歌は色がはっきりして、描きやすい歌の中でも、特に良く出来た歌ではないかと思う。

【檀さんの語り】
この歌を詠んだ大伴家持は、国司として越中に赴任していた。春が遅い北陸の地に、絢爛と咲き誇った桃の花。そのあでやかな姿に家持は、花の下にたたずむ乙女をイメージし、【樹下美人像】(じゅかびじんぞう)を思い起こしていたのかもしれない。

【感想】
この歌は訳がいらないくらいに、絵としてもイメージが膨らむ歌。若い女性の輝くような生命力と桃の花の色、そういうイメージが重なって、明るい春の華やぎがやってきた。それが視覚として、目の前に広がって見える。

春を迎えてまた自然界には新しい生命の息吹が芽生えてくる。生きる喜びがあふれている歌、という感じがした。ゴッホはひとふでひとふでに力強さがある一番好きな画家。ゴッホが描いたら、果たしてどんな絵になるのだろうか。

【調べもの】
○に【土・丹】
地・土の意を表す「な」の転。

○樹下美人図(じゅかびじんず)
樹の下に立つ女性を描く画題。
古代アジアで広く行われ、とくに唐代に流行。
正倉院宝物の【鳥毛立女の屏風(とりげりゅうじょのびょうぶ)】はその例。















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