もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

8 015 重松清「十字架」(講談社文庫:2009)感想4+

2018年10月23日 00時16分12秒 | 一日一冊読書開始
10月22日(月):      

395ページ      所要時間6:20     古本市場86円

著者46歳(1963生まれ)。

安く手に入れたと思っていたら、すでにブックオフ108円で買ってあった。本書を俺は二冊所有している。俺の本棚にはこのパターンが結構多い。何をしていることやら・・・。

どうして著者はこんなに微妙な心の機微を書き続けられるのだろう。感想4+は、終わりまで読み通してだった。「いじめ」を題材にした作品ということで、「何か良い知恵でものってないか」という気分で手に取った。しかし、描かれているのは、取り返しのつかない事実を突きつけられることばかり。いじめの傍観者にこそ焦点をあてた内容は、時として理不尽であり、そこまで責任を感じさせること自体に物語りとして無理を覚えた。

それでも著者の筆力と、いじめ見殺し自殺の傍観者への責任追及という切実なテーマに引っ張られて、最後まで読んだ。前半は、重い内容に対してあまり面白くなかった。日を改めて、後半を読んで、いじめ自殺で子供を失った親の思いに出口は無い。20年近い時の流れの中で、やや薄明がさすが、決して明るくはならない。親の悲しみは死ぬまで続く。恨みや憎悪は消えても、決して赦されることはない。面白くないが、苦痛を覚えず最後まで読み通し、それなりの満足感を覚えることができた。

著者は、何かを一義的に決めつけることをしない。でも、こういうことだったかもしれない、と多義的に捉える。それが心地よく腑に落ちる。構想4年、執筆2週間。

結婚をして、息子が生まれて、父親になった。/略。僕はいま、この子が僕の息子として生まれてきたことを、無条件に喜んでいる。誰かと比べてどうこうというのではなく、自慢の息子で、僕のなによりの誇りは、自分がこの子の父親だということにある。327ページ

【目次】いけにえ/見殺し/親友/卒業/告白/別離/あのひと
 
【内容紹介】いじめを止めなかった。ただ見ているだけだった。それは、「罪」なのですか――?/自ら命を絶った少年。のこされた人々の魂の彷徨を描く長編小説。///いじめを苦に自殺したあいつの遺書には、僕の名前が書かれていた。あいつは僕のことを「親友」と呼んでくれた。でも僕は、クラスのいじめをただ黙って見ていただけだったのだ。あいつはどんな思いで命を絶ったのだろう。そして、のこされた家族は、僕のことをゆるしてくれるだろうか。吉川英治文学賞受賞作。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 181019 一年前:171019 無... | トップ | 181023 近頃、一番聞きたか... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

一日一冊読書開始」カテゴリの最新記事