もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

3 036 唐沢寿明「ふたり」(幻冬舎文庫;1996) 感想3+

2013年12月01日 22時02分33秒 | 一日一冊読書開始
12月1日(日):

206ページ  所要時間 2:40    ブックオフ50円

著者33歳(1963生まれ)。好きな俳優さんなので、ブックオフで見つけた時に買っておいた本である。役者にも人生がある、という当り前のことを教えてくれる。

けっこう面白かった。読んでる途中、紋切調のこわばった文章なので、「これはきっとゴーストライターが取材しながら、まとめたんだろうな。そんなのバレバレだ」と思っていたら、最後に文章構成協力者の名前が出ていて、「あっさり認められちゃったなあ」って感じである。

ただし内容は、基本的に唐沢寿明に対する超ロングインタビューをまとめた訳であり、多少の脚色はあっても唐沢寿明の実話なので、一人のトップ俳優の半生記とも言えて興味深く読めた。

「ふたり」という書名は、唐沢と山口智子のことだと、ずっと思い込んでいたが、人生の節目に必ず手を差し伸べてくれる人との出会いがあり、「ふたり」だったこと。また、本名の唐沢潔(本当は陰気)と芸名の唐沢寿明(なじめない明朗さ)の「ふたり」の統合をめざした意味も込めた書名ということらしい。

唐沢さんは、中学で役者を志し、工業高校を2年生で中退。家も飛び出して、新宿で寝泊まりし、半ばホームレス化しつつ、役者の道に邁進し、あらゆる生活を役者になるために集約した生き方をした。十代後半から二十代前半に下積みと「金が無い」貧乏を舐め尽している。その間、仲間と劇団を立ち上げたり、芸能プロ(東映アクション・クラブ)やオーディションに出続けるがまったく芽が出ないで、辛酸を舐め尽している。映画『メイン・テーマ』野村宏伸、映画『優駿』緒方直人、映画『ダウンタウン・ヒーローズ』中村橋之助、他永瀬正敏、織田裕二らに次々負けていくのも、「ああこの世代なんだなあ」と思った。

陰気で暗い唐沢潔は、負けん気が強過ぎて、かえって役者として見られる自分に気づけるのが遅かった。それが、橋爪貴志子さんや、浅野ゆう子さんに出会い、芸名“寿明”を使い始め、やがて25歳でNHK純ちゃんの応援歌に出演、主演の山口智子(24歳)と共演し、8年間の交際につながる。その後、32歳で山口と結婚。山口智子は、役者である前に人間として、女性としてやはり格の違う魅力を放っていたようだ。唐沢が、彼だけに見せる山口の魅力を引き出していた部分もあるのだろう。

月並みだが、「若い時分の苦労は買ってでもしろ」というが、唐沢は典型的な「役者バカ」であり、決してサラブレッドでないが、役者への信念を持ち続けたことでチャンスを一気にものにできたのだと思う。TVドラマ『白い巨塔』に「幸運とは、チャンスに対して準備できていることだ」(だったかな…?)という言葉があったが、変幻自在とどこかしらの可笑しさを湛えながら唐沢寿明の演技には安定感・安心感を覚えるのはやはり、厳しい下積み時代を若さで乗り切った経験があったのだと納得できた。ただ、家族との関係については、やや壊れているような気がするが、これは彼の壊れた父親の影響かと思う。


※本日頑張りました。久しぶりに閲覧数400を超えました。
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