もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

5 017 「揺らぐ世界 中学生からの大学講義4」(ちくまプリマー新書:2015)感想5

2015年10月04日 02時30分08秒 | 一日一冊読書開始
10月3日(土):    桐光学園・ちくまプリマー新書編集部・編

233ページ   所要時間 3:55    図書館

本書を読んだ後、確かに世界の見え方が変わった。感想4のつもりだったが、感想5にしたくなった。いずれも独自の視点でしっかり書かれている(橋爪がいまいちだが…)ので、甲乙つけがたいが、藤原帰一の論考が、2011年のエジプトのムバラク政権倒壊と、1985年のフィリピンのマルコス政権の倒壊が、全く政治的背景のないピープルパワーによる民主化運動によってもたらされたと紹介されている。そして、いずれも政権を倒した後、古臭い政治勢力が取って代わって急速に陳腐化してピープルパワーが勢いを失っていく様子が指摘されていた。読んでいて、このピープルパワーのありようが、今回の日本の政治デモの盛り上がり方と重なり合って見えて参考になり面白かった。
 各論者(橋爪以外)の話は何か、とても新鮮だった。岡真理『”ナクバ”から60年-人権の彼岸を生きるパレスチナ人たち』を読むとイスラエルという国に対する意識が変わった。ここまでひどいとは! 川田順造『人類学者として、3.11以後の世界を考える』も、読み終えた後に何か余韻が残った。立花隆も、森達也も、伊豫谷もよかった。

【目次】
立花隆   『ヒロシマ・ナガサキ・アウシュビッツ・大震災』9−44
岡真理   『”ナクバ”から60年-人権の彼岸を生きるパレスチナ人たち』45−76
橋爪大三郎 『世界がわかる宗教社会学』77−105
森達也   『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』107−135
藤原帰一  『民主化とピープルパワー-フィリピンからエジプトまで』137−169
川田順造  『人類学者として、3.11以後の世界を考える』171−203
  「自分の目で見/自分の心で感じ/自分の頭で考え/友だちや家族と話しあって判断し/勇気をもって実行する人になって下さい」
伊豫谷登士翁『グローバルに考えるということ』205−230

紹介文:紛争、格差、環境問題…。グローバル化が進んだ世界は、多くの問題を抱えて揺らいでいる。これらの状況を理解する視点は、どうすれば身につくのか?多彩な先生たちが、ヒントを与えてくれる。
毎日新聞書評:複数の有識者による「中学生からの大学講義」シリーズの第4巻。講師は、評論家の立花隆▽京都大大学院教授(現代アラブ文学)の岡真理▽社会学者の橋爪大三郎▽映画監督の森達也▽国際政治学者の藤原帰一▽文化人類学者の川田順造▽一橋大名誉教授(社会学・経済学)の伊豫谷登士翁(いよたにとしお)−−の7人。グローバル化が進む世界を理解するうえで、さまざまな補助線を与えてくれる。
 立花は「情報操作」という戦争の一側面から「ヒロシマ・ナガサキ・アウシュビッツ・大震災」の共通点を解き明かしつつ、「トラウマティックな体験」を経たポスト震災世代に期待する。岡はイスラエル建国に伴う「大いなる破局(ナクバ)」を中心に、「アラブ人」とは誰か?や国際社会で「人間の尊厳」を否定されたパレスチナ人の現状を解説する。橋爪の「世界がわかる宗教社会学」は無意識のうちに人々の行動様式となっている宗教について、平易な言葉で説明。まさに宗教がわかると、世界がわかる格好の入門編だ。
 各章扉に添えられた、イラストレーター南伸坊による講師の似顔絵と、各章末の書きおろしの「若い人たちへの読書案内」がうれしい。(な)(2015年04月19日 東京朝刊)


立花隆「東大生はバカになったか」
ジョン・ガンサー「死よ驕るなかれ」
石牟礼道子「苦海浄土」
パール・バック「大地」舞台は中国の三世代
アーサー・C・クラーク「幼年期の終り」
ジョージ・オーウェル「象を撃つ」
ウィリアム・ゴールディング「蠅の王」
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トルストイ「アンナ・カレーニナ」
E・H・カー「歴史とは何か」

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