もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

4 097 山本おさむ「今日もいい天気 原発事故編」(双葉社:2013) 感想4+ 

2015年06月20日 00時48分47秒 | 一日一冊読書開始
6月19日(金):
  305ページ   所要時間 3:05    図書館

著者59歳(1954生まれ)。漫画家。 本書は新聞「赤旗」日曜版の連載1年分をまとめたもの。

著者は、埼玉県に仕事場を置いたままで、妻の実家がある福島県天栄村に引っ越して田舎暮らしに充実した生きがいを感じていた。しかし、移住6年目、2011年3月11日の震災で、福島原発事故に遭って以来、平和な日々の生活は一変する。

著者の住む天栄村は、福島原発から70kmだが、放射能被害は看過できないレベルである。しかし、強制避難をさせられる場所ではない。著者夫婦はとりあえず、埼玉県の仕事場近くに家を借りて自主避難生活を始めるが、そこからは災難に遭った人たちが直面する困難、出費、苦労、苦悩がずっと続くことになる。

天栄村では、避難した著者夫婦とは違って、多くの人々が子どもも含めて踏みとどまっていたが、それは同時に多くの放射能被爆を覚悟することでもある。著者夫婦も、天栄村での生活を捨てる気にはどうしてもなれず、何度も帰還し、その度に痛い目に遭い、問題点を手探りで考え、悩みながら、村への帰還を模索する。

たとえば、著者は原稿書きの合い間を縫って福島の家に戻って、一人で大きな穴を掘り、熱中症と放射能の恐怖に怯えながら“除染”作業に取り組むが、その果てしない作業の途方も無さを思い知らされるのみであった。国や自治体の“除染“を待ち切れず、愛犬の被爆を抑えるために家に接する大きな木3本を切り倒し、敷地内の3分の1を業者に頼んで自主“除染”をする。これは数十万円の出費である。

一方で、東電や、民主党政府のその場しのぎの無責任な対応が描かれ、著者の怒りが描かれていた。東電による自主避難者である著者に対する賠償金が総額わずか16万円ぽっちなのにも呆れ果てた。これまでにも避難生活と埼玉・福島の二重生活で大きな出費を積み重ねてきている(おそらく数百万円)。政府も東電も、本当の被害と全く向かい合おうとしていない。

著者は、「自分たちは福島原発の被災者としては比較的軽い方である自主避難者である」と抑制的に断っているが、それでも事故はこれほど人生計画の変更をもたらすのだ。そして、この文脈の中で、忘れもしない民主党総理の野田汚物が2012年6月福井県大飯原発を再稼働したのだ。著者と一緒になって、俺もあの時の怒りが蘇ってきた。

紹介文:不便ではあるけれど、美味しい空気、さわやかな風、人々のあたたかさ、濃密になっていく家族のつながり。幸福なはずの田舎暮らしが突如と破れた!3.11福島原発事故。山本家の避難、帰還、怒り、狼狽、絆…。細密な筆致の中に満腔の怒りを込めて描く!新聞「赤旗」で大好評連載された同作品が待望の単行本化。
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