もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

6 068 福岡伸一「ルリボシカミキリの青」(文春文庫:2010)感想4+

2017年05月14日 04時11分04秒 | 一日一冊読書開始
5月13日(土):    副題「福岡ハカセができるまで」

253ページ     所要時間4:10     ブックオフ 87円

著者51歳(1959生まれ)。青山学院大学理工学部教授(分子生物学専攻)。東京生まれ。京都大学卒。ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授を経て現職。分子生物学の最前線で研究活動を続ける一方で、難解な概念をわかりやすく解説した著作を数多くものし、サイエンスの魅力を一般読者に伝えつづけている。2006年、第1回科学ジャーナリスト賞受賞。主著に『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書、サントリー学芸賞・新書大賞)など分子生物学者。

1ページ30秒を目指したが、付箋に鉛筆まで持って「読んで」しまって。あえなく失敗読書となった。

分かりやすくて、筋の良い、美しい文章を書く人である。最前線の研究・実績・能力に裏打ちされた学者が、読者を意識してこれだけの文章を書けるのだから、現役の生物学系サイエンス・ライターとしては最高峰の一人と言って間違いはない。

本書は、『週刊文春』連載のコラム「福岡ハカセのパラレルターンパラドクス」(2008年5月~)の70回分ほどを再編集したエッセイ集である。生命・生物の本質を「動的平衡」状態とみなす著者の思考方法は応用性・汎用性が高く、生物学の話も面白いが、政治、社会、国際関係、医学など様々なテーマで面白い話が聴けてとても良い。

本書には、世界観を根本的に変えるヒントがたくさん詰め込まれている。俺自身、自分の”終活”を意味あらしめるために、ヤマアラシの様な付箋や、線を引いた部分を今後折に触れて読み返していきたいと思う。

たくさんの興味深い内容を紹介する時間はないが、楽しく読めた。著者はアメリカでの研究員生活を経験しているが、やっぱり外国での留学体験を持つってことは大事だよな。と素朴に思う。日本語を大切にする著者の経歴に外国経験があるのって、何か印象が良い。あと、著者が京都大学の学生だったのは、何か嬉しい。京大って何か良いよね…。

【目次】第1章 ハカセの研究最前線/第2章 ハカセはいかにつくられたか/第3章 ハカセをいかに育てるか/第4章 理科的生活/第5章 『1Q84』のゲノムを解読する/第6章 私はなぜ「わたし」なのか?/第7章 ルリボシカミキリの青

【内容紹介1】センス・オブ・ワンダー。朽ちかけた木の襞に、ルリボシカミキリがすっとのっていた。嘘だと思えた。
しかしその青は息がとまるほど美しかった。しかも見る角度によって青はさざ波のように淡く濃く変化する。それは福岡ハカセがハカセになるまえの、ぎれもないセンス・オブ・ワンダーの瞬間だった。
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私は虫を集めて何がしたかったのだろう? フェルメールでさえ作りえなかった青の由来を、つまりこの世界のありようを、ただ記述したかったのだ
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科学の興奮、生命の不思議:・ウイルスは、私たちの遺伝子が分離してできたものだった/・アオスジアゲハとクロアゲハの幼虫は、食べる葉が違う/・「脳死」と「受精卵利用」によって、ヒトの命の時間は縮まっている/・ハチミツの濃度は死海の塩水よりも高い/・遺伝子のコピーミスで、生物は進化する/・だが、コピーミスをするがゆえ、人類は「がん」の呪縛から逃れられない --このテキストは、単行本版に関連付けられています。

【内容紹介2】花粉症は「非寛容」、コラーゲンは「気のせい食品」!?生物学者・福岡ハカセが語る、最先端の生命科学から探求心の育て方まで。明晰かつユーモラスな筆致に理系は苦手というあなたも思わず膝を打ち、腑に落ちる。ノスタルジックに描かれるセンス・オブ・ワンダーの気づきも深い余韻を残す、傑作科学エッセイ。
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