8月13日(日):
380ページ 所要時間2:00 古本87円
著者40歳(1963生まれ)。兵庫県生れ。関西学院大学社会学部卒業後、地方紙記者、博物館学芸員を経て、ノンフィクションライターに
楽しかった。内容に勢いがあった!。美味しそうな誘惑に満ちた読書体験となった。感想4+は、1ページ15秒の文字通りの流し読みだったので、5を付けるのはかえって失礼かと遠慮したものである。4時間ほどかけてもう少し丁寧に読めば、間違いなく5を付けていた。
(追記:翌8月14日、一晩おいても読後の後味がいいので、やっぱり感想5に変更しときます。悪しからず。)
元々、夜の11:25から眺め読みを始めたので、最後までいけるとは思っていなかった。結局読書の成否は、体調と本の内容で決まる。体調とは具体的には眠気、睡魔のことである。年のせいにしてはいけないのかもしれないが、近年これが決定的な影響力をもつのだ。今日は、深夜だが意外と頭が冴えていて細かい内容は無理だが、どういうことがどういう風に書かれているのかがよくわかった。
もう一つの本の内容であるが、本書は圧倒的な労作にして、かつ筆者が読者の手を取って踊るように楽し気に新しい世界に誘ってくれる感じだった。「放る(捨てる)もん」という間違った俗説が一般化しているように
「ホルモン」”内臓肉”料理は、被差別部落や在日コリアンなどの限られた人々の食文化として日本では考えられてきた。
しかし、著者は自ら”ホルモン奉行”と称し、その名に恥じない形で関西を中心に北は仙台、南は沖縄まで日本中の本場?に足を運び、時には毎日ホルモンしか食さない徹底したホルモニストや屠場・食肉センター、焼き肉店主、辻調理師学校の先生らと深く交流して自らの目と耳となによりも舌でホルモン文化の多様性と奥深さ、何よりも美味しさを紹介していく。
さらに、伊、米、中、仏、ブラジルへと雄飛し、ホルモン王国韓国に乗り込んで感嘆の声をあげ、帰国後すぐに大坂の鶴橋に走って、取材中心の消化不良のストレスを大いに解消するのである。しかし、読んでいるこちらの方が著者のグルメ旅に魅せられてストレス一杯になってしまった。
日本ではマイノリティの”ソウルフード”、サブカルチャー的食文化扱いだが、実際に豊かな中身を見れば、また日本から一歩飛び出せば、ホルモン料理をめぐる
風景は簡単に反転するのだ。牛や豚ほかの内臓を捨ててしまうことが多い日本の食文化に疑問を投げかけ、執筆当時日本で焼き肉業界にダメージを与えていたBSE騒動を、アメリカ、ヨーロッパと日本の牛の飼育環境は全く違うことを指摘し、日本でBSEにかかるためには「どんなに悲観的に考えても、総理大臣になれる確率よりも低いことになる」とわかりやすく説くのである。
俺は、著者の他の本も何冊か読んでいるが、正直「おっ!?腕を上げたなあ」と感じた。文庫本の解説で、在日のミュージシャン趙博(チョウ バク)さんが、「日本初のホルモン社会学本」と呼び、2005年のPB(ピースボート)で意気投合して
「カムイに学びチエちゃんのように生きんかい!」と二人で吠えた、エピソードを読んで俺は大いに膝を叩いて「そのとおり! ほんでからくれぐれもシブタレやテツみたいになったらあかんよ」と相槌を打っていた。
俺はつい先日、
「カムイ伝」第一シリーズ全15巻をアマゾンで大人買いしたところである。勿論内容は読んで知っているが手元に置いておきたかったのだ。
「じゃりン子チエ」は、49巻まで所有している。俺の感性の根っこはじゃりン子チエ(特に30巻ぐらいまでは)に心から共感できることにあると思っている。
【目次】 牛の巻(郷土料理編ーホルモンの歴史&ムラに伝わる郷土料理/部位編ーこんなとこまで食べる!?ホルモニストと食べる珍しい部位の数々)/豚・馬・猪の巻ー馬刺ししか知らないアナタに贈る、バラエティ・ホルモン!/油かすの巻ー牛の腸を脂ごと揚げてつくるこの食材、これがまた、ええ仕事してまんねんでー/サイボシの巻ー美味なる馬肉の燻製。どこでつくられてるかって?それは読めばわかる!/世界の巻ー伊、米、中、仏、ブラジルetc…。各国でホルモンは大活躍!/韓国の巻ー焼肉の本場に奉行が飛んだ。奉行と「ホルモンの友」の珍道中!/怒りの奉行の巻ー「BSE」騒動を斬る! メディアも農水省も、ほんまアホでっせ…/沖縄の巻ー豚王国のおばあがつくる、内臓を使った中身汁。とくとご賞味あれ/牛タン(舌)の巻ーザ・キング・オブ・ホルモン タン(舌)タウン・仙台で、奉行がみちのく一人旅
【内容情報】
ホルモンと一口に言っても種類は様様、食べられ方も千差万別。その文化的背景は知れば知るほど奥深い。ホルモンを使った郷土料理の知恵を学び、魅惑の食材、油かすやサイボシを紹介。BSE騒動に憤りつつ、日本各地、果ては米国、韓国など海外の内臓食事情も現地調査。「鍋奉行」ならぬ「ホルモン奉行」を名乗る著者の、ホルモン食文化の多様さと美味しさを伝えるルポルタージュ。
「カムイ伝」
追記(8月14日):ちなみに「カムイ伝」には意図的かどうか知らないが、「穢多部落」を「非人部落」とする根本的間違いが存在する。作中の被差別部落は「穢多部落」である。しかし、そうだとすれば、一揆首謀者で苔丸(スダレ)が落とされる身分は「非人」のはずなので、「非人部落」としておかなければならない。この部分のねじれは、当時の各藩ごとの身分制度の多様性というだけで解消できるものなのか。知りたいが、当然ながら尋ねられる人は周りに誰もいない…。今さら専門書で研究する元気はない。戦後日本の国民的代表作と言っても過言でない「カムイ伝」の矛盾の謎はこのまま続くのだろうか。