8月11日(金):
227ページ 所要時間3:50 ブックオフ200円
著者30歳代(1975年頃生まれか?)。
東京生まれ.ジャーナリスト.ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒,ニューヨーク市立大学国際関係論学科修士課程修了.国連婦人開発基金,アムネスティ・インターナショナルNY支局員を経て,米国野村證券に勤務中に9・11同時多発テロに遭遇,以後ジャーナリストとして活躍.現在は日米を行き来しながら,執筆活動を行っている.著書に『はじめての留学』(PHP研究所),『グラウンド・ゼロがくれた希望』(扶桑社文庫),『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』『ルポ 貧困大国アメリカ』,『ルポ 貧困大国アメリカII』(岩波新書),『もうひとつの核なき世界』(小学館),ほか多数.
2度目(3度目か?)。感想は5か5+で迷った。5年前だったら5+に間違いない。フェイスブックの力を示すために、2011年1月のチュニジアの「ジャスミン革命」が紹介されている(211ページ)記事を見て、その後の中東で開発独裁体制が、ドミノ倒しのように崩壊し、政治の民主化が進むかと思えば、逆にISの台頭、混沌とした混乱、紛争、シリア難民問題など、悪い体制を倒せば社会が必ず前進するとは限らない現実を知っているので、少し印象が変わった。
「貧困大国アメリカ」シリーズ1・2・3の若者向け版である。著者の報告を読み、若者の貧困格差の拡大と経済的徴兵制、医療、教育の崩壊など今アメリカで進行している良くないことは、そのままカーボン・コピーのように日本でも起こってきていることや、「日米地位協定」による沖縄での「在日米軍の人も無げな傍若無人な傲慢さ」を見せつけられる日本の現状を考え合わせると、月並み過ぎて気が引けるが、つくづく日本ってアメリカの51番目の州だよな。そして、韓国の人は怒るだろうが、韓国は52番目の州だよな。さて、53番目と54番目はどこかなあ…53番目はフィリピンで、54番目はパナマかな?
本書が、
若者に是非読んでもらいたいテキストであることは間違いない。前回読んだ時には、できなかった付箋と横線を引きながら何度も刮目させられた。あとがきに典型的に出ているが、著者は格調の高い文章を書ける人である。
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ひとつのニュースが主要メディアを独占した時ほど、大衆に知られると都合が悪いもっと重要なニュースがかき消されるパターンはとても多いのです。164ページ
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ワイドショーやスキャンダルは、重要ニュースとセットになって出てくると見るべきでしょう。略。/センセーショナルなニュースが出た時ほど、それ以外のニュースをチェックする価値は大きい、略。特にマスコミがうんざりするほど同じニュースを流し続ける時は、そのかげに隠れたニュースほど深刻な内容であることが多いのだ。166~167ページ
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実は日本でも全く同じ問題が起きている。学生の三人に一人が学資ローンで大学に言っているが、返済できない学生の数が急速に増えているのだ。略。/滞納率イコール就職できなかった若者の数なのよ。なのに政府はそれに対して何もまともな解決策を出していない。マスコミは”自己責任”なんていう言葉をばら撒いて、若者に悪いのは努力が足りない自分なんだと思わせる。/略/学資ローンを貸す銀行とか金融機関ね。すごい献金してる。その結果、私たち若者が政治から目を離してるすきに、学費もローンの利子もどんどん上がって、いつの間にか学資ローンに関しては自己破産もできなくなっちゃった。197~198ページ
【内容紹介】
メディアが流す情報を鵜呑みにしていては、社会の真実は見えてこない。9・11以後のアメリカで、人々の恐怖心と競争を煽ってきたメディアの実態を実際に体験し、取材してきた著者が、「情報を読み解く力」を身につける大切さを若い世代に向けて解説する。同時にそこにこそ〝未来を選ぶ自由〟があると説く。
以下、前回読んだ時のものを再掲する。
「 169冊目 堤 未果「社会の真実の見つけかた」(岩波ジュニア新書;2011) 評価5 」
2012年03月03日 07時41分24秒 | 一日一冊読書開始
(2012年)3月2日(金):
227ページ 所要時間5:40
今日は。図書館で予約していた本が一度に5冊も手に入った。大量大量!である。かなり嬉しかった。
テキスト。著者の文章には、志操の気高さと複雑で重層的な社会の真実に迫ろうとする強い気概を感じる。一読だけでは、勿体無い。縦横に線を引いて、折り目を入れて読みたかったが、他人様の本なのでそれはできない。付箋をして針ねずみ状態にしたけれど、読んだ端から忘れていく自分の頭の悪さにストレスが溜った。
本書は、「ルポ 貧困大国アメリカ(Ⅰ)・(Ⅱ)」 (岩波新書;2008、2010)を引き継いだ内容になっている。著者自身の取材を基にして、
本書でしか知り得ない全く手垢の付いていない<現在のアメリカ社会の問題点>を生々しく切り取って見せてくれる。
本書に出てくるアメリカ人は、あまり幸せそうではない。「普通に生きる」ことすら難しい現実の中で苦しみながら肩で息をしている感じの人々が大勢登場してくる。そういえば、最近ニュース映像のアメリカ人の表情も確かにあまり冴えないよなあ、と納得させられる。「一部の富裕層を除いてほとんどの国民がワーキングプア」という行き過ぎた二極化が進んでいるのだ。但し、本書では多くの人々を生き難くくしているアメリカ社会の構造・からくりを解き明かすだけではなく、その中で挫けない高齢者、新しい道を打開していこうとする若者の姿や肉声もたくさんレポートされている。取材の中心は現代アメリカ社会なのだが、日本の今と近未来について深く考えさせられる。著者も、それを意識してか、後半では「アメリカではこうだが、日本ではこうなっている」という形で、日本の現状との照合を積極的に行っている。
たとえば、本書の前半を読んでる時、しきりに橋下大阪市長の言説が頭に浮かんできて仕方なかった。ブッシュ=小泉=橋下の嫌な図式が浮かぶのだ。アメリカでは2002年春、ブッシュによって
市場原理中心の教育政策である「落ちこぼれゼロ法」が施行。全国一斉学力テストの実施、学力ノルマ基準を満たせず「落第」とされた場合、責任と非難は現場の教師一人ひとりに集中し、減給・解雇が行なわれる。公立学校も、国からの予算カット、廃校、民営化(チャータースクール)に追い込まれる。これによって、現在公立学校の先生たちの多くが、国から要求される子どもたちの学力ノルマ達成とワーキングプア化して余裕を失った保護者からの大量の難くせに追い詰められて<低廉な給与>と<疲弊の極み>でバーンアウト(燃え尽き)が急速に進行している。この政策は、2014年までに全米の公立高校の九割近くが「落第」になる見通しで、教育現場を荒廃させたというだけで完全に失敗に終わっている。
この教育現場に市場原理を導入というのは、橋下大阪市長の言説とほぼ同じである。彼の教育政策はパフォーマンスではあるが、その破綻は実施する前から既知の事実なのだ。「公的予算削減と競争市場主義が生む教育格差が、民主主義を弱体化させれば、結局は国にとっても膨大なコストになる」ということだ。
そもそも、橋下徹弁護士とは、何者ぞ?。TV番組「行列云々」に出ていた時、彼は、おくびにも教育政策になど言及したことはない。なぜ、彼は長い時間と育むゆとりの必要な教育の現場に土足で踏み入り、市場原理で現場の取り組みを簡単に切って捨てて見せる<見世物>にしてしまったのか。この一事をもってしても、俺は断じて橋下市長を信じられない。さらに、
「選挙で勝った多数派の横暴を抑え、少数派の意見の尊重を命ずる」憲法の精神を踏みにじる橋下市長が間違いなく蹉跌することを、俺は確信する。でなければ、日本社会は間違いなく深層のコア部分が深く傷つき取り返しのつかないことになるだろう。民主主義は手間暇がかかって、ぱっとしないものだ。でも大切に守り育てていかなければならないのだ。
著者は
「教育が人間を育てる種まきだとしたら、すぐに結果が出なくても、その子の中にある善きものが機が熟し花開くのを信じて待つ余裕を、先生や親たちが持てるかどうか。その環境を整えることが、国や行政の役目だろう。競争で追い立て、数字で切り捨て、市民をモノのようにバラバラにする社会では、種は枯れてしまう。/私が出会った大人たちは、それをちゃんとわかっていた。真実を教えることよりも、それを自分で見つけるやり方を教える方がずっと大切だということを。「待つ」ことの価値が、決して数字で測れない大きなリターンをもたらすことを。」と述べている。
「経済徴兵制」について、「「テロとの戦い」を高らかに掲げ、軍事予算を拡大しながら社会保障を削ることで貧困層の若者から選択肢をとり上げて、出口をふさぐ。/イデオロギーではなく自己責任で入隊させるこの「経済徴兵制」というしくみを作ったブッシュ大統領は、その後「テロとの戦い」で利益を上げた数々の業界から高い評価を受けた。
■目次
第1章 戦争の作りかた-三つの簡単なステップ
恐怖が判断力を失わせる/現れた敵/「戦争がはじまるぞ」/人はイメージと思いこみで動かされる/戦争を作り出す三つのステップ/本当に大事な情報が見せてもらえなくなる/メディアをうのみにしているあいだに法律が変えられる/戦争にお金が使われれば,学生より兵士が増えていく/「君には,夢をかなえる価値がある」/貧しい子どもは軍へ,中流の子どもは借金づけに
第2章 教育がビジネスになる 奇妙な出来事/全米に広がる教師のインチキ合戦/教師と公教育バッシングになった教育改革/落ちこぼれゼロ法で肥満児が増える/なぜ教師の二人に一人が五年以内に辞めるのか?/障害を持つ生徒にも同じノルマ/孤立する教師たち/ベビーシッターより安い時給/オバマのRace to the Top(全米予算レース)/七年でかけ金が二倍になる投資「チャータースクール」/21世紀の新しいベンチャー型チャリティー/公教育は悪,チャータースクールは善/そして日本の教育現場は?
第3章 メディアが見せるイメージはウソ? ホント?
テレビは信用できない/マスコミは出演者とお金の流れを見る/一行ニュースの落とし穴/世界が恐れる謎のハッカー集団/世界中のニュース報道を比べてみる/ニュース監視NGOを利用する/大手メディアとインターネット―どちらが信用度が高い?/当事者の声を聞くともうひとつの世界が見える/ウィキリークスつぶしが示すもの/スキャンダル報道の裏にある重要ニュース/国会のホームページを見ると新聞・テレビのからくりが見える/大手メディアとローカルメディアを比べてみる
第4章 社会は変えられる
「人生で一番ワクワクしたオバマ選挙」/社会を変える高齢者たち/「しあわせになりたきゃ選挙に行け」/「選挙と選挙の間こそが本番なのよ」/若者が政治から目を離しているすきに/「最高の投資商品があるんです,若者の教育ですよ」/「ネットがある時代に生まれて本当に良かった」/いろいろな意見を聞いて結論を出す/ライブ(対面)の力/自由にモノを言える場を守る/教育現場から社会を変える/英語は最強の武器になる/誰でも真実を見つける力を持っている