12月21日(日):
【日刊ゲンダイ】
今朝の朝日新聞朝刊の【考論:長谷部恭男(早大教授)&杉田敦(法大教授)】がとても良い。長谷部先生、初めて読んだ時は、朝日の記者と大人気ない喧嘩をしていて、「どうかな…?」と思ったが、その後の発言は僭越だが、なかなかどうしてしっかりしている。安倍自民を「保守ではなく、おっちょこちょい」と評するなど洒落っ気もあってとても良い。月一回の杉田先生との【考論】はいつも楽しみにしている。
今の朝日新聞は、編集委員に曽我豪のような“安倍様のポチ”を抱えるなど、社と記者の力量が随分と落ちている。一方で、アウトソーシング(外注)の投稿・対談記事は充実している。外注記事で、社の気骨を何とか維持しているというのも情けない限りだが、この外注記事がなければ、俺はとっくの昔に朝日に限らず新聞購読自体を止めているだろう。
今回の
【考論:与党大勝と低投票率 衆院選から見えたもの】も良かったが、特に後段のやり取りが、心に響いた。今の民主党は、党再建を目指して、細野だ、前原だ、岡田だと、昔の名前ばかりが先行しているが、
いずれも「<第二自民党>を目指す」方向性では、何も変わっていない。安倍自民を「観念的」保守だと批判した前原の民主党は「現実的」に総選挙で大敗したではないか!もうそろそろ目を覚ませよ! その路線では、ダメなんだよ!
国民が求めているのは、自民党の<分断の政治>に対抗する、
「国民の生活が第一の<包摂の政治>」だ! これ以外には、国民の期待に応える民主党再生の道はない。「維新」という<第三自民党>と一緒になりたい奴らは、さっさと一緒になればよい。その代わりさっさとしてくれ。時間をかけるな、遅すぎる!
そして、残った人々は、いっそ小沢さんの「生活」や「社民党」、さらに「オール沖縄」などと一緒になって、真の国民目線に立ち、歴史修正主義を明確に否定して、侵略戦争を認め、中韓・米との信頼回復に努めて、バランスある外交を回復し、東北の震災被害、福島原発の被害ときちんと向き合って、福島・沖縄・障害者他弱者・マイノリティを<棄民>化しない、
人間本位の社会の構築に向けたビジョンを明示してくれれば、新鮮さとともに多くの国民に明確な政治的選択肢を提示することになるだろう。
「立派な国に住めて、おまえらは幸せだ。感謝しろ。そして、お国のために生命・財産を差し出せ」という安倍自民の<国家主義>に対して、「幸せだと思える人がたくさんいる国こそが、良い国なのだ」として国民の福祉を第一に考える<リベラル・社会民主主義>の政治を回復して、政治的選択肢として国民に提示すればよいのだ。
難しいことではない。
2009年の鳩山由紀夫内閣のマニフェストと首相施政方針演説(本ブログのカテゴリー
「考える資料」に掲載中)にもう一度立ち戻って、国民に再度「国民の生活が第一」の理念を掲げてくれさえすればいいのだ。そして、この次政権を取り戻したときには、霞が関の官僚やアメリカとの関係でもう少しずる賢く立ち回り、簡単に約束を反故にしたり、政権放棄しないことを国民に少しだけ丁寧に説明してくれればいいのだ。鳩山民主には
高校授業料無償化政策など見るべき政策は、確かにあったのだ。
2009年の鳩山内閣の政策は、確かに一度は国民の間に周知徹底され、支持されたのだ。もう一度勇気を持ってこの政策を盾にして、明らかに自民党とは違う政策を国民に提示してくれればよいのだ。そのためには、自民党と比べて何の新味もない「維新」と合流することを中止して、逆に「維新」内のリベラル勢力を吸収して、「生活」、「社民」と連立を組むのが理想だが、「生活」、「社民」との連立に反対する勢力とすっきりと袂を分かって、2009年の鳩山政権のマニフェストを掲げて、新しい「民主党(名前は何でもよい)」を旗揚げすればいい。繰り返すが、
国民が求めているのは、自民党の<分断の政治>に対抗する、「国民の生活が第一の<包摂の政治>」なのだ!
この際、<第二自民党>の野田汚物や前原詐欺師、長島戦争屋のグループには、お望み通り、すっきりと<第三自民党>の「維新」と合流してもらった方が良い。
さもなければ民主党は、いつまでたっても国民の目から信頼できない<国民欺瞞の泥船>にしか見えない。次回の選挙も必ず負ける。間違いない。同じ負けるなら、未来のある負け方をすべきだ。あと、労働組合の本分を忘れた「連合」は、何を考えているのだろう。分からない…?。いずれにせよ、しっかりと新しい「民主党(名前は何でもよい)」を支えるべきだろう。
(※
120929② 懐かしき鳩山総理大臣「施政方針演説」(2010年1月29日) 2012年09月30日 00時00分27秒 | 考える資料)
【考論:与党大勝と低投票率 衆院選から見えたもの】 2014年12月21日05時00分 朝日デジタル
14日投開票の衆院選は与党が大勝し、安倍晋三首相は長期政権に向けて足場を固めた。長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)と杉田敦・法政大教授(政治理論)の対談では今回、記録的な低投票率となった選挙から何が読み取れるのかを語り合ってもらった。
■「無難にお任せ」消費者感覚 杉田/棄権の影響、有権者気づかず 長谷部
長谷部恭男・早稲田大教授 衆院選直後に実施された朝日新聞の世論調査で、自民党が大勝した理由を二択で聞いたところ、「安倍首相の政策が評価されたから」は11%だけ。「野党に魅力がなかったから」が72%と圧倒的でした。低投票率の理由は「投票しても政治は変わらないから」が43%と最も多かった。
杉田敦・法政大教授 有権者は政策よりも、「安定感」で自民党を選んだかのようです。これは、自分たちと意見が近い政治家を代表として議会に送り込むという、政党政治本来の姿とは違う。とりあえず無難な「業者」にお任せという消費者感覚です。
政治の根幹は、限られた財源を何に使うか、つまり、パイをどう分けるかにあります。パイの分け方次第で社会は変わり、得する人も損する人もいる。自分の場合はどうだろうかと考え、より望ましい政策を掲げる政党に投票する。それが政党政治です。ところが自民党は今回、昔のように経済成長でパイを大きくできると訴えた。そして有権者も、パイが大きくなれば、分け方はどうあれ、その分け前にあずかれると期待した。これは分け方をめぐる政治を見えなくする、一種の脱政治化です。選挙戦術としては成功しましたが、先送りされた問題はいずれ露呈するでしょう。
長谷部 与党の「熱なき大勝」と、戦後最低の投票率。これはやはり、選挙制度の影響が大きいと思います。自公の議席が定数の3分の2を超えたことを「多すぎる」と思っている人は59%。小選挙区比例代表並立制は、好みの政党に投票したり、入れたい政党がないと棄権したりしていると、思わぬ結果を招く。多くの有権者はまだそのことに気づいていないのではないでしょうか。
杉田 しかし、そもそも消費者的な有権者には、特定の政党や候補者とつながる意識が低い。だとすると、制度の特性に気づいたところで、どこかを勝たせすぎないように戦略的投票をしようとか、投票に行こうという動機は生まれないのではないでしょうか。
半数近い人が棄権しているのは極めて深刻な事態ですが、お任せでいいという消費者に、商品を選びに店に足を運ぶべきだと説いても、通じにくいでしょう。
■「何とかなる」の意識、根強く 長谷部/野党の役割、はっきりしない 杉田
長谷部 日本の有権者は、憲法と市場という、政治に外側から枠をはめる二つのメカニズムへの信頼が高いのかもしれません。権力の均衡と抑制をはかる日本国憲法に任せておけば、極端な政治は行われないはずだ。市場メカニズムに任せておけば、効率的な富の配分が達成されるはずだ。自分たちが真剣に考えたり動いたりしなくても、きっと何とかなるはずだと。
杉田 憲法や市場への信頼なのか、従来言われてきた「お上意識」なのかはともかく、「何とかなる」という漠たる感覚は確かにあって、それが、脱政治化に寄与しています。
そこで、野党の役割をどう考えるかです。有権者は、野党はブレーキ役だけ果たせばいいと思っているのか。それとも、可能なら政権交代を望んでいるのか。どうも判然としません。
長谷部 有権者の思いとは関係なく、政権交代は必要です。自らの権威主義的な体制の方が効率的だとアピールする中国に対して、日本が「我々の政治システムの方が優れている」と言うためには、政権交代がないといけない。民意によってチームを代え、別の政策を試すことができるのだ、これは権威主義的な体制ではできないだろうと。
杉田 しかし現実はそう簡単ではありません。自民党に対抗する軸を見つけられない理由は、野党の無能さだけではない。経済がグローバル化し、一国の政治にできることが限られている中で、斬新な経済政策はなかなか打ち出せない。有権者にしてみれば、「だったら自民党でいいじゃないか」と。
長谷部 とはいえ、違いがないわけではない。民主党政権時代の高校の授業料無償化が典型です。成熟した民主主義社会では、そうした細部を見つつ、政権交代を通じて中長期のバランスをとり続けるしかない。新しい人を出す。そこから新しいアイデアが生まれる。それを失ったら、デモクラシーの明日はありません。
■弱い部分に冷たい社会 杉田/「包み込む政治」提示を 長谷部
杉田 気になるのは、生活が苦しい中で、人びとの関心が目の前の経済に集中していることです。エネルギーのあり方や財政赤字の解消など、負担を伴う長期的な問題は無視されがちです。皮肉なことに、改憲を目指す安倍さんたちにとっても、この国民の意識は「悩みの種」かもしれない。石原慎太郎さんも引退会見で、憲法に国民の関心がないと悔しがっていましたし、彼が率いた次世代の党は2議席しか獲得できませんでした。
長谷部 日本の有権者にとって、ナショナリズムの優先順位は決して高くないということでしょう。
杉田 ただ、極端なナショナリズムに向かうかは別にしても、人々が不安と不満を抱え、社会の弱い部分に冷たくなってきていることは否定できません。
苦しい時には「横」や「下」と連帯するよりも、自分より「上」についていき、「おこぼれ」を期待するということでしょうか。パイの偏った分け方を変えるべきなのかもしれないのに。
長谷部 「囚人のジレンマ」と呼ばれる状況と似ています。みんなで協力しあえば、全員がほどほどの利得を得られるはずなのに、切り離されたまま各自の利害だけ考えて行動すると、みんないいように扱われる。そのジレンマから抜け出すには、お互いに連絡を取り合い、共通の利益の獲得を目指して協力すればいいのです。私たちは独房に入れられているわけではないのですから。
杉田 そうした連携や協力を社会に広めるのが政治家のひとつの役目ですが、いまは逆に、分断をあおる政治家の方が人気を得がちです。不安の時代だからか、リーダーシップのあり方が劣化している。逆説的にも、アベノミクスがもし成功したなら、政治のあり方も変わるでしょう。
長谷部 良くも悪くも、政治はイメージです。相手が「分断の政治」なら、こちらは「包摂の政治」でいくと。そのイメージをクリアに提示できる政治家が出てくれば、政治の消費者を再び主権者に変えることができるかもしれません。
杉田 朝日の世論調査では、首相が進める政策について「不安の方が大きい」が52%。「この道しかない」と笛を吹く羊飼いに、全幅の信頼を寄せているわけではありません。
長谷部 そうですね。羊飼いに「白紙委任」した羊の運命はどうなるか、それは有権者の側も、十分わかっているでしょう。 =敬称略