そしてゴダールの「新ドイツ零年」につなげようという意図はかっこよかったが、
こ・こいつは手強かった。
「アルファヴィル」のレミー・コーションが再登場。
ベルリンの壁の崩壊後、西への出口を求めてさすらうが、なかなか道は見いだせない。
くすんだ色彩でつづるレミーの足取りに、
さまざまなソースからの引用が随所に差し挟まれる。
ロッセリーニの無防備都市やドイツ零年からの引用はわかったが、
あとは、ナチスの蛮行のドキュメンタリー映像や、他の古い映画からの引用、
詩や小説からとおぼしき朗読や文字の引用、
ディーラーなどの絵画の引用から成っている。
音声も文字も、フランス語、ドイツ語、英語が錯綜し、とても字幕では追いつかない。
これらの多重化されたメッセージをなんとか理解しないとこの作品はつらいだろう。
タイトルのとおり、テーマはドイツに象徴されるヨーロッパとアメリカの歴史なのだ。
積み重なるイメージによって壁崩壊後にも意識される歴史の壁にさえぎられ、
レミーは西にたどり着けないのだろうか。
レミーの歳の取り方が疲弊したドイツの歴史そのもののようだ。
わずか60分あまり。
凝縮された歴史への言及という感じは「映画史」にも通じる感覚あり。