Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「オケ老人!」細川徹

2016-11-28 02:53:23 | cinema



監督・脚本:細川徹
撮影:芦澤明子


オケやってるし
ほぼ実際オケ老人だし
知っている人も出てるということだし
杏ちゃん初主演映画ということだし
軽いノリの映画を見たい気分だし

ということで、オケの練習の帰りに
楽器持ちで映画館に突撃しました。

が、
結果的には大号泣(^^;)
そんなに泣くかこの映画で、というほどの大号泣。

映画としては割と他愛ない演出の他愛ないドラマなんだよね
テレビドラマのノリに近い。
音楽的にはダメダメな老人たちがあの程度の練習で
あんなに上達するとは思えないとか
それに対してフランスのマエストロがああも簡単に感動するもんかしら
とかリアルなところでは実に突っ込みどころが多い。

しかし号泣。

考えたら、そもそも音楽だけで十分感動的なわけですよ。
そこに老人たちの滑稽ながらも努力する姿とか
若者の熱意とか純真とか
そういう演出を上乗せされているんで、
ワタシなんぞはイチコロに泣くんですな。

何しろもう冒頭、杏ちゃんがオケ演奏を聴いて感動する姿を見ただけで
滂沱。
そこから老人たちが、初めてここまで通った!とか感動するところとか
野々村さんが音楽を始めるに至った経緯とか
ラジオを直すエピソードとか
気の強い孫娘の純真とか
いたるところで涙腺決壊

あの老人たちが指揮をガン見してる!と言っては泣き


ということで、嗚咽が漏れないように我慢するので大変疲れました。
終映後ヘトヘト。
今年の大泣き大賞をあげたいくらいです。


***

次第に冷静になってみると、
脚本でなかなか面白いところがあったなと。

伏線と思わないようなエピソードが、後々回収されて
おお、あれと繋がっていたのか〜という面白さがいっぱい。

それと、言葉によらないコミュニケーションを演出するところが何箇所かあって、
それを杏ちゃんとか、孫娘黒島結菜ちゃんとかが見事に演じているのが素晴らしい。

絵的にはそれほど印象深いところはないかも。
オケの演奏会でのステージの上はあんなに暗くはないよと思ったが、
考えてみると梅フィルの演奏会とリハーサルの舞台をわざと暗く演出していたのかもしれない。

撮影は意外なところで黒沢清作品を多く取っている人。(芦澤明子)
時間の経過を風景の色づきの移り変わりで表現するところとか(まあありがちだけど)
大胆で面白かった。
あと超狭い寿司屋の客席での宴会でも切り返しカットがあって
あれはどうやって撮ってるんだろうと素人的に感心する。

***

楽器の演奏フォームについては、
楽器をやる人はもちろんアラが気になるのは仕方ないにしても、
ワタシはそういうのは映画の質を大きく左右しないだろうと思う。

むしろあそこまでそれらしく楽器を弾く姿を演じられる役者たちは素晴らしいと思う。
その大変さは楽器をやる人が一番よくわかっているだろう。

その点で一番驚いたのは
光石研がバイオリニストを演じて、全然違和感ないということだったかも・・・

老人のみなさんはそうそうたるお歴々で、
みごとですねえ。


@TOHOシネマズ日本橋



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「狂気の巡礼」ステファン・グラビンスキ

2016-11-12 18:47:58 | book
狂気の巡礼
クリエーター情報なし
国書刊行会


すみませんまだ前半読んだだけですが。。。

実はポーとかラヴクラフトとかあまり読んだことがないので、比較文化的にどういう水準にいるのかはっきりとはわからないのですが、ポーランドのポーと称されるグラビンスキの、日本での本格的なリリース第二弾は、まさにタイトル通り、これは相当狂ってます。
ポーやラヴクラフトもこの水準なんですよということであれば、やはりそちらもちゃんと読んでおくべきでしょう

狂気とはこういうもののことだと深く納得させる短編が次から次へと。
いやーすごい。

特にビビったのは3つ目の「接線に沿って」。
自分の行動や思考の動きと、外部からの影響について、楕円と接線で説明するところが、とにかく狂っている。
主人公の奇矯な行動や死の暗いイメージよりも、その背景にある認知の仕方が、もうイかれているのが恐ろしい。

こういう発想を記述できるグラビンスキ自身も相当恐ろしい。考えて捻って出てくるものなのだろうか。だとしたら作家というのは底知れぬ能力を持っている。

ということで、一編は割と短めなのに読むのにすごく時間をかけてます。頭クラクラするので。


全体を貫くテーマの一つが、場所の持つ狂気の力。催狂気性(と勝手に名付ける)。
「狂気の農園」はそのテーマど真ん中の作品。
心霊スポット的なヤバい場所は、確かにここにいたらマズイという第六感を刺激する。こういう感情は世界共通に持っているんだな我々は。

こういうテーマで世界のアンソロジー作ったら面白いと思う。すでにありそうだけど。

あとワタシの読書体験的に連想するのは、埴谷雄高の「死霊」でしたね。手触りは違うけど、狂い方に通じるものがあると思う。


後半も楽しみです。

芝田さん色々な作品を世に届けてくれてありがとう。


あーあと、装丁が良いですね。
こういう雰囲気の装丁は80年代にも流行った感じです。


こちらも!
動きの悪魔
クリエーター情報なし
国書刊行会
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渡辺未央「MIO*」「CRAZY LOVE」

2016-11-07 00:45:49 | music
いろいろな目論見から、ウチのCD棚を漁っているのだが、
懐かしいアルバムが出てきたので。

友人A氏に昔むかし教えてもらった渡辺未央という人のアルバム。
教えてもらった時点ですでに中古での入手だったかもしれん。



ここに2枚のCDの写真がありますが、
右が「MIO*」で多分デビューアルバム
左が「CRAZY LOVE」で2枚目

この2枚の間のアーティストイメージの違いすぎる違いというのは
かなり有名です(渡辺未央ファンの間ではね。。。)

1枚目はちょっと清純な感じのイメージで
収録曲も素朴な印象の歌モノがメイン

2枚目は見た感じは蓮っ葉な感じだけど
音作りはよりとんがり系オシャレなものを目指しつつも
清純な感じは隠しきれないぜってとこですね。


楽曲とアレンジが素晴らしいので、
ボーカルが多少怪しくてもむしろそれが味わいとなって
独特の作品になったりする
その見本のような佳作です。

楽曲は佐藤奈々子、日向敏文、JUN KAGAMIが手がけているのです。
と言ってもこの3名がどういう人なのかワタシは知りません。
音楽的には素晴らしい人たちであることは間違いないです。

「MIO*」から「風の中の友達(きみ)」を
このすごい線の細いボーカルが素敵です。

渡辺未央 風の中の友達(きみ)


由緒正しくアルファレコードからのリリースですが、
残念ながらこの先はなかったようです。
今どうしているんだろう未央さん。

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