懸案だったけれどやっと観た。
「イノセンス」は、「面白いけれどもうひとつ踏み込みが欲しい」
という欲張りな感想だったのだが、
こっちのほうは、詰め込みがすっきりしている分、
描く世界の肌触りをきめ細かく描いていて、ぞくぞくさせるし、わかりやすい。
ネット経由で会話しながらの戦闘シーン、ぼそぼそした事務的な会話、
生の感情のこもった会話、様々な音声が、シチュエーションに応じて変調させられ、
重層化する。
そんな肌触りがよく描かれている。
一つの近未来像としての「コミュニケーションの多重化」を
感覚的に表現している。
ただ、ネット経由の音声がなぜアナログ変調してしまうのか、
突き詰めるとやや疑問。
こういう細部を突き詰めるともっと風変わりな表現がありそう。
たとえばグレッグ・イーガンのように・・・
そういえば頭のなかに多様な声が響く様は、
これはグレッグ・イーガンが好んで描く、脳神経のツール化に伴う風景に似ている。
イーガンの世界は映画化が困難だろうと思っていた。
映画的に魅力的なガジェットは溢れんばかりに登場するくせに、
肝心の最大のキモはどう考えても可視化不可能、概念や認識の物語だからだ。
でも、攻殻機動隊の映像を見ていると、このチームなら間接的ながらも
イーガンのキモを「見せて」くれるかも知れない・・・などと夢想した。
草薙少佐が「人形遣い」にダイブしてからのシークエンスなんかに
その可能性を感じた。
香港の市街の描き方なんかもイメージぴったし。
イーガンの話になってしまったが、実際イーガンとは同時代展開しているこのシリーズ。
どうしても比べてしまうと、細部の徹底した「未来化」という点では
完全にイーガンに軍配。
あのレベルでこのアニメを作り込んでくれたら、もう言うことはありませ~ん。