Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「おとなのけんか」ロマン・ポランスキー

2017-01-26 00:29:54 | cinema
おとなのけんか [Blu-ray]
クリエーター情報なし
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


おとなのけんかCARNAGE
2011フランス/ドイツ/ポーランド/スペイン
監督:ロマン・ポランスキー
原作戯曲:ヤスミナ・レザ
脚本:ヤスミナ・レザ、ロマン・ポランスキー
出演:ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリー

面白いですが、脚本勝負の作品という感じ。
舞台とは違う映画的なリアリズムをがっちり守っている。
『毛皮のヴィーナス』もやはり戯曲を原作としているので、
近年のポランスキーはこういうタイトなものを作りたいのかもしれない。

理性的かつフレンドリーに始まったふた組の夫婦の会話が
時折絶妙に漏れ出す本音の気配から徐々にほころび出す展開は
もう可笑しくて最高である。

ロングストリート家はどちらかというとアート志向で昔ならヒッピーになっていそうな夫婦。
一方のカウアン夫妻は、もっと現代的なビジネスマンタイプ。
この二つの典型の対比がまた絶妙な気がする。
多分アメリカの人が観ると、これすごく笑えるんじゃないのかなあ。

敵対するだけじゃなくて、時折男同士あるいは女同士で急に共感しあってみたり、
味方のはずの夫婦間で突如諍いが起きたりと、
4人の関係性がどんどん移り変わるのもお見事!


ジョディー・フォスターが、顔を真っ赤にして筋を立てて怒る顔が実に素晴らしい。
演技とは思えん。

タイトルロールで、遠景でこのお話の重要な背景が提示されるのが
映画ならではの演出ですね。
アレクサンドル・デプラ?デスプラ?の音楽も多分タイトルロールとエンドロールでしか流れない。


79分という短さも良い。
セザール賞の脚本賞を受賞しているそうです。

ブルックリンを舞台としているが、撮られたのはパリということです。
ポランスキーはアメリカに行けないからね。。。


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「ローズマリーの赤ちゃん」ロマン・ポランスキー(再観)

2017-01-24 02:29:11 | cinema
ローズマリーの赤ちゃん リストア版 [Blu-ray]
クリエーター情報なし
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


ROSEMARY'S BABY(1968アメリカ)
監督:ロマン・ポランスキー
原作:アイラ・レヴィン
脚本:ロマン・ポランスキー
音楽:クリストファー・コメダ
出演:ミア・ファロー、ジョン・カサヴェテス 他


前回観たのはそんなに前ではないんだけど、もののみごとに内容を忘れていた。
恐るべき記憶力。

最初はグラビンスキ的に、家に何かが憑いている系かしらと思ったが、
違った。
怪しい隣人系ということでは、『テナント』と驚くほど似ていた。

『テナント』との違いは、最後までそれ妄想だよね、ということになるか、
妄想だと思ってたら現実なんじゃね?となるか。


ポランスキーのこの手の作品の面白いところは、
画面の端々に不安の要素をどんどん投入していくところで、
冒頭からあのマンションを見に来た若夫婦の軽やかな足取りとともに
廊下の床のタイルが剥がれているところをアップにして見せたり、
エレベータボーイがなんとも不穏な目つきでふと振り返るところとか、
室内で案内する管理人が、ふと口を閉ざし廊下の奥の家具を見るとか、
地下の洗濯場で出会う少女が見せる首飾りのアップ(うわっ不吉だとすぐわかる)とか、

列挙していくと何日もかかる。

それから、やはり『テナント』でも見られた手法だけど、
モチーフを執拗に何度も繰り返して提示する技がカッコ良い。
何度もなんども隣人が怪しげなドリンクを持ってきて飲ませるとか
怪しいものを食わせるとか、怪しい薬を飲ませるとか。
この繰り返しが、ローズマリーの感じるストレスを実感持って観客に伝えている。

こういう手腕をポランスキーはどこで身につけたんだろう。
『水の中のナイフ』1962からわずか6年しか経っていない。
『反撥』は幻想サスペンス的要素があったと思うが、
『袋小路』や『吸血鬼』はだいぶタッチが違う。

驚く他なし。

そういうサスペンス的な細部の設計は、『テナント』や『チャイナタウン』
あるいは『フランティック』へと響いていく一つのポランスキー的な脈だね。

『袋小路』や『吸血鬼』みたいなコメディタッチも得意な感じだし、
『テス』や『戦場のピアニスト』のような大河ドラマもできるし、
最近は『毛皮のヴィーナス』『おとなのけんか』のような室内劇も好きみたいだし、
多彩だよね。

***

今回の謎は、ローズマリーはなぜ中盤で髪をベリーショートにするのか?
ということなんだけど。。。

例の夢を見て、その後に妊娠がわかり、
でもそれが隣人に知れて無理やり医者を変えさせられる。
その後。

それまでの若妻とは違う存在になったんだということなのか
衰弱をよりはっきり印象付けるための演出なのか

確かにそれまではいかにも美しい魅力的な女性という立ち位置だったのが、
不安と猜疑心に取り憑かれ思わぬ行動力を発揮する女性に変貌していく、
それを効果的に印象付けるものと思う。

それ以上の意味づけがあるならば是非教えてください。


***

ラストというか、ローズマリーの赤ちゃんの実像は出てこないんだけど、
もちろんそれが素晴らしいセンスというものであって、
ミア・ファローの、作品内で最大レベルの驚愕顔をもって何事かを表現しているわけです。
このセンスこそ、映画の素晴らしさだと思うのよね。
それがどう素晴らしいかは、後によりはっきりとしたやり方で
『ゴーストライター』のエンディングで示されている。

なんでも見せちゃう映画がもしかしたら流行りなのかもしれないが、
ワタシにとっては断然こういうのが好みね。


*****

ところで、ミア・ファローといえば、わしらには
ビートルズと一緒にインドに行った、あのミア・ファローですよね(笑)
そしてもちろんプルーデンスの姉!

ミアは後のウディアレン作品での姿はほとんど観ていないので、
ちょっと色々観てみたくなりました。

ビートルズからみでは、この映画の舞台となるマンションは
ダコタハウスでのロケということです。
ジョンが住んでいたところで、この前で射殺された。。


夫役のジョン・カサヴェテスは、言うまでもないですが
映画監督としてもすごいですよね。


あと、音楽はクリストファー・コメダとクレジットされている
クシシュトフ・コメダ
冒頭の女声スキャットは、全くアメリカ映画らしからぬヨーロピアン調
(しかも東欧チック)
実に素晴らしい。
劇伴もこれはヒッチコックを意識したかなという作風あり
奇妙な音響作品あり、で素晴らしい。

コメダはこの作品の後事故にあってしまい、
ポランスキーとの最後の作品になってしまった。
とても残念。



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2016年を振り返る~極私的映画ランキング~

2017-01-07 18:04:51 | cinema
2016年を振り返る~極私的映画ランキング~

毎度言うことですが、ワタシの映画鑑賞スタイルは劇場に足繁く通うというよりは、旧作中心にDVDでというものなので、年間公開作のランキングはできません。
なので、新旧作とりまぜてのすた☆脳内限定ランキングをやって喜ぼうという私的企画です。

という文章自体、昨年のランキングページからコピペしてるくらい毎年言ってますw

という例年の枕詞ではじめますが、
あまり人の参考にもならないし話題に同調することもできない企画なのでやめちゃおうかと思ってたんですが、
とらねこさんが楽しみにしてくれているということでしたので、
ひとりでも読んでくれるのなら続行するかと。


・・・と、ここまでが昨年からのコピペです(笑)

・・・と、ここまでが昨年からのコピペ(笑)

・・・とここまでが昨年からのほぼコピペです。

****

さてと、昨年もほとんど映画を観ませんでした(ええっw)
ので、観たものを多分簡単に列挙できますね。

『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』セドリック・クラピッシュ
『ジプシーのとき』エミール・クストリッツァ
『アリゾナ・ドリーム』エミール・クストリッツァ
『毛皮のヴィーナス』ロマン・ポランスキー
『蜂の旅人』テオ・アンゲロプロス
『コレクションする女』エリック・ロメール
『シン・ゴジラ』庵野秀明
『神々のたそがれ』アレクセイ・ゲルマン
『デスペア』ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
『イレブン・ミニッツ』イエジー・スコリモフスキ
『出発』イエジー・スコリモフスキ
『バリエラ』イエジー・スコリモフスキ
『オケ老人!』細川徹
『ダーク・シャドウ』ティム・バートン

ほらっ簡単だった。
こうしてみると実に時流と関係なく観たいものに頑なに執着している感があるな。。
日和ったのは『シン・ゴジラ』くらいではなかろうか。


で、いきなり
第1位『イレブン・ミニッツ』イエジー・スコリモフスキ
やはり新作に投票するのが良いですね。
絶妙なエピソード繋ぎが素晴らしいし、それぞれがほとんど明示的には語られないけど
なんか伝わるという匙加減が巧妙すぎる。
ついでに過去作への連続性も盛り込まれていたりして、かっこよすぎ。
スコリモフスキは常に現在が最高なのかも。

第2位『出発』イエジー・スコリモフスキ
で2位もスコリモフスキ。
これはJ.P.レオー主演の古い作品ですが、実に愛すべき映画。
荒削りでありつつも繊細かつ大胆。これを今まで見ていないというのはまずかろう的な。
ゲリラ的撮影や即興風なシーンもあり、巧妙な脚本技もあり。
何度でも観たい。
クシシュトフ・コメダの過剰とも言える音楽がもう最高なのだ。

第3位『アリゾナ・ドリーム』エミール・クストリッツァ
いやこれいい映画なんですよ。
クストリッツァにしてはキレイすぎるとも、お祭りが足りないとも言えるかもしれないけれど、
何もそう毎度同じものを期待しなくても良いわけで、
むしろユーゴの情勢もアメリカンドリームの終焉も歩み寄れない人と人の間の愛情も
全部重層的に詰め込んでくるクストリッツァらしさはちゃんと備わっている。
リリ・テイラーも良いし。
スコリモフスキがいなければ1位。


あとは・・・順位をつけるのは難しいかも。

『ジプシーのとき』エミール・クストリッツァは、やっと観れたのと、ローカルなテイストとともにのちに大きく開花する祝祭と混沌の要素が芽生えているのが面白いのだが、次点感あり。

『毛皮のヴィーナス』ロマン・ポランスキーは、ポランスキー最高なんだけど、彼の作品ではもっと好きなものがあるので、ここではランク外。

同様にアンゲロプロスも今回はランク外。アンゲロプロスにしては仕掛けが地味なのよね。

ロメールも面白い映画だったのだが、彼の場合、一連の作品群が一つの作品みたいな気がしてしまう。

『神々のたそがれ』ゲルマンはこれまたすごいパワーだし、汚い映画なので私好みなんだけど、
手法が『フルスタリョフ〜』と同じな気がして、それも別にいいんだけど、まあなんとなくランク外。

ファスビンダー『デスペア』もファスビンダーにしてはスマートな印象。不器用なファスビンダー好きとしては、もうちょっとかも。
でもまあ十分不器用な要素はあるが。。

クラピッシュも好きよ〜



てなことで、昨年のランキングでした〜
完全に世間からは取り残されておりました〜〜w

本年も宜しくお願い申しあげます。

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「テナント/恐怖を借りた男」ロマン・ポランスキー

2017-01-02 01:06:28 | cinema
テナント/恐怖を借りた男 [DVD]
クリエーター情報なし
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


すげー遂にDVD出た~と感動して買ったが1年以上積んであったこいつを観ました。
心のふるさとポランスキーにはずれ無しというわけですが、
やはり面白かったですねー

周りが俺を陥れようとしている!みんなグルだ!
という、それが真実なのか妄想なのかよくわからんというような設定は、
ベタといえばベタなんだけど、やはり好きなんだよね。体質的に。

でもまてよ?このトレルコフスキ君のケースは、むしろ
それ絶対妄想だよっていう内容だな。。
本当に周囲が彼を陥れようとしているのではないか?と
観客に思わせるような要素はなにもない・・・

ということで、虚実の閾が揺らぐことで盛り上げるサスペンスではないのだな。
妄想が出来上がっていく様子を内面から描いている、その怖さだと思う。


完全に想像だけど、ローラン・トポルもポランスキーも
気難しい隣人に恵まれるということは、これだけヤバいことなんだよな、
という実感をベースに不条理サスペンスを仕立てたのではないかしら。
パリの住宅事情的にはこういうトラブル?は多そうだし、
その身近なわずらわしさをネタにひとつ書いてやったという感じ。

確かに隣人たちは気難しい性格を普通に振りまいているだけで、
そしてそれがこの映画では一番怖い(苦笑)
村八分にするための嘆願書に署名を求められるとか
自分もいつのまにか告発されてるとか
怖い~

だから、具体的な陰謀的行動は特に出てこないんだけど、
とにかくどんどん追い詰められちゃうというところが面白いと思うのよね。

***

細部が豊かでとてもよい。

くりかえし出てくる、誰かがドアをノックする、という状況。
それぞれはそんなに変な用事ではないんだけど、これが執拗に繰り返されることで、
どんどんストレスが溜まっていくのがよくわかる。
(ステラの家でもそれが反復されて、またすこし頭のねじがいかれる・・)

テーブルを動かそうとしてボトルを割ってしまうとか
朝起きてベッドから降りようとすると、散乱した食べ残しが足の裏に付くとか、
いわくつきの水道の蛇口をひねると、水道管が振動して壁に掛けられた鍋がカタカタ鳴るとか
警察で出した身分証明書がボロボロだとか
村八分にあう家族の娘がすごい無表情だとか
警察の人がめちゃめちゃ高圧的だとか
そういうあらゆる細部に不安なものを忍ばせていく技はとてもよい。

ストーリー的な不安だけでなくてそういう細部が生理に訴えるような不安でどんどん観客も追い込んでいくのですね。


あと、後半にいくにつれて、どんどん変なエピソードがさしはさまれていくのもよい。
アパートの玄関はいって明かりをつけたらいきなり誰かがいて仰天するとか、
熱が出て夜中にトイレ(問題のトイレ!)にいくと壁に象形文字が書いてあるとか、
公園の池で子供をひっぱたくとか
どんどんヤバくなってくる。

そうやって重層的にヤバさを織り込んでいく丹念なところが好きですね~

****

最後に、大きな円環がつながって、恐怖が輪廻するんじゃん??という終わり方は
実に好みです。
あそこでなぜ叫んだかが一気に理解されて幕となる、素晴らしい終わり方。

もうベタ褒め。


あの病床での恐怖を象徴する姿は、即座にシュヴァンクマイエル的な怖さ
=東欧的な恐怖の図像なんだろうと思わせる。
最後にアソコにむけてアップになるのもシュヴァンクマイエル的。
おそらくポランスキーは初期のシュヴァンクマイエルの短編を観ているのではないか?
と勝手な想像をしてみる。

シモーヌがほぼ全く生前の姿を見せないのも周到。


*****

イザベル・アジャーニはおいしいポジションでありつつも、あまり本筋には貢献してない印象。
「アデルの恋の物語」の翌年の作品ながら、イザベルの印象は全く違うね。

撮影はスヴェン・ニクヴィストなんだけど、
このDVDではかなり鮮明な映像。ビデオ作品風な質感もあり、あまりニクヴィスト的でない、
DVD化するときの問題なのかどうか?




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