ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF) | |
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ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF) | |
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ディック「高い城の男」の精神的続編と自称?ということで、
読まずには置けません的なピーター・トライアスの小説。
ディックの設定をほぼベースにした世界で、
「高い城の男」のその後の時代を描いているのだが、
その進化というか変化の方向はなんというか、21世紀日本向き。。。
サイバーパンクの後にゲームやロボットアニメの感覚を取り込んで
なんとなくどこかで見た感じのあるノリで進んでいく。
日系の軍人であり忠誠心もなくはないが、
複雑な出自を持ち、どこか醒めた現実認識を持ち、
無能な側面を発散しながらも一点突破的にやたら優秀な資質もある。
大切なものを守ろうとする気質を持ちながら、クールで諦念とともに笑いながら賭けに挑む。
みたいな、ピントの定まらない人物像をどんと中心に持ってくるあたりも非常に現代的。
てことで、よく考えられた設定や、想像上のテクノロジーが帰結する現実をしっかり描写する腕は大したもんであるが、
まあなんというか、若い作品て感じはしたな。。
いったい何が正義なんだよ?という葛藤はあるが、
そもそも正義とは何なんだ?と考える俺は一体何者なんだ?
みたいなディック的問いの続編ではないと思いました。
読後感がマルドゥックに似ている。。。。
一つだけ具体的な難癖をつけるとすると、、、
昭子さんが「左手はやめろ」っていうところは、
えーと、作者はバイオリンを弾く人ではないんだろうと思いました。
(本当のところは知らん)
左手が最重要みたいな考えは、バイオリニストは抱かないよねえ。。。
エンタメ読書には最適。
楽しくあっという間に読み終える。
↓こちらは銀背の新シリーズ版の同書
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) | |
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最近さらにこいつの続編が出たので、そのうち読むです。
(こちらも銀背と文庫の2バージョンで出てますね〜)
本書と著者については
大森望先生によるちゃんとした解説がありますので、
そちらもぜひ。