Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「髪結いの亭主」(デジタル・リマスター版)パトリス・ルコント

2011-01-27 02:29:36 | cinema
髪結いの亭主 デジタル・リマスター版 [DVD]
クリエーター情報なし
エスピーオー


ユーロスペースでデジタル上映していた。
なんだかどうでもいい映画を観たくて
これはドウデモイイ映画なんじゃないかと前から思っていた本作を選んだというわけ(笑)

しかも例によって終盤ぐうぐうと寝てしまい、
いびきもかいてたと思う
ほんとに迷惑な客だm(__)m

なので帰りにツタヤにてDVDを借り、終盤を観たというていたらく。

そして、この映画の最も味わい深い部分をすっぽり寝過ごしていたことを知り
唖然としているのだった。

あぜん。


****

デジタル上映なのでどんなもんかなと思っていたけれど、
全体のトーンを明るくやわらかく仕上げてあって
特に画質は気にならなかったのだけど、
どうだろう。

フィルムと比較してみなければわからないな。

冒頭ターンテーブルのアップからとても優しい色調でぐっと引き込まれる。
全編を調子づけるアラブ歌謡と自己流の踊りのルーツが
さりげなく示される。

こういうピースの選び方と関係の持たせ方は
とてもよい。
伏線を回収するという構造的な上手さというよりは、
少年期のエロスが床屋と結びついたり
海辺のエネルギーや少年ならではの未来への希望が
さらにそこに結びついたりと、
作品の個性的なテクスチャーを作り上げる意志と感性なのだ。

そのピースと織り綾の繊細さがよかったな。

****

ふるさとの記憶が海というところも
ワタシ的にはグッとくるのだよねー
あの大きな空間、風、砂、水の動き、そういうものが
なにやら楽天的なオブセッションをおとなになるに至っても保持させる
おおらかな資質をアントワーヌに持たせたのだろう
とか思う。

もちろん「最初の」床屋の女主人が
アントワーヌのオブセッションを形成したわけだけど、
そこにしっかり死の刻印も押したところがすごいよね。
死の姿にもまたエロスを見るアントワーヌ。

割れたガラスの上を歩いて床屋椅子に向かうとき
足先がアップになってガラスを踏みしだく音が大きく鳴る。
それは、ああ、わかってるよねー何かを、とうなずかずにはいられないシーンだ。

終焉を
愛情の先の終焉をどのような形でか
アントワーヌはマチルドに伝えたのではないだろうか
彼はとても浮世離れしていて
純粋にマチルドを愛する存在として彼女の前に現れ、彼女を魅了する。
そのお互いの純真が純真であり得たのは
アントワーヌのおおらかなオブセッションのためなのだ。

純真が儚いということのメッセ-ジは
いろいろな「客」が伝えてくれる。

突然飛び込んできて妻に平手打ちを食らう男。
彼は夫婦生活の終焉の姿を伝えるメッセンジャーだった。

万物の原型について寸劇を披露する二人組も
ぼろぶどぅーる!の詩を披瀝する男も
愛の終焉について語る者だ。

マチルドが床屋を譲り受けた元床屋が
終盤に施設での生活を語るのも
唐突に見えるけれどもやはり人間の終わりを示したもの。

マチルドは純真が純真であることを知り
それが終わるのを恐れたのだが、
その純真はアントワーヌによりもたらされたもので、
それが本物なのだということがマチルドにはわかったのだ。


あの雷雨。
冒頭にも遠い雷鳴を背景にするシーンがあった。
あの遠い雷鳴の持っていた幸福感があるために、
終盤の出来事もどこか悲しくしかし幸福な
夢の中のことのように起こるのだ。

残された亭主
クロスワードパズルをやり
慣れない洗髪をやり
自己流でアラブ歌謡を踊ってみせる。
なにも変わらない。不在の他は。

きっと自分でもそうするだろう
変わらない生活をするだろう。
亭主は床屋の女房を二度失い、
あとはパズルと踊り。

シンプルな人生のままでいること
宙づりのままでいること
ここで映画は終わるが、
アントワーヌはシンプルに生きているのだろう。

ずっと。



*****

あ、そうだ、
マイケル・ナイマンの音楽は、
ナイマン節の利いたおなじみな感じであるが、
ちょっと映画には濃厚すぎるような印象を持った。

これはまあ昔けっこうナイマンの音楽にはまったので、
音楽がどうしても立って聴こえてきてしまうというのもあるのかもしれない。

が、その濃厚さや執拗さのある音楽が
これでもかと立ち上がることで
一層映画のフォース(笑)を高めていったあの
グリーナウェイ作品におけるような
恐るべきコラボを思うと
なんとなくもったいない感じがするのだよね。




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Quand la femme tient la barre de sa vie N°2-猫沢エミライブ&トーク@TRAUMARIS

2011-01-24 05:36:07 | 猫沢エミ
Quand la femme tient la barre de sa vie N°2
-猫沢エミライブ&トーク@TRAUMARIS
2011.1.22sat

猫沢さんのライブ行って来ました。

恵比寿のTRAUMARISでの2回目のライブ+トーク
今回は前回で学習したので、
早めに行って最前列テーブル席をげと。

久しぶりに猫沢エミかぶりつき!で参戦です。



今回は、というか毎回言ってはいるのだけれど
すばらしいの一言なライブでした。

2曲目からスイッチが入ったようにサウンドがドライブし始めて、
一体感というとなんかつまらない言い方だけど
そういう感じ。

そこに乗る猫沢ヴォイスがまた今回は妙にしっくりなじんでいて
しっかりミックスした音源のよう。
音質だけじゃなくてノリも。
しっかりサウンドにささえられてのびのびと歌う歌が
現前してましたね~



ということで、なにやら急に成熟の感のある猫沢バンド。
今回はギター+ベース+アコーディオン+パーカッションという布陣で、
この編成が実によいですね。
もっと小編成でも成り立つ猫沢エミ世界だけれど、
やっぱり音の構成が充実するということも
必要なことなんだなあと実感するのでした。

最近では最強のライブでした。
この黄金編成はぜひ今後も続いてほしい!

*****

音としても歌としても最強だったのだが、
それに輪をかけて、
アコーディオン田ノ岡三郎氏のオリジナルインスト曲も披露。

ピアソラチックな、エモーショナルな、
かつ半音を多用したブロークンな旋律を持ち
ラテン+ヨーロピアンなコードでぐいぐい推進していく
まあ、すげー曲!
やっぱ彼は天才だったのだ!!

思わずサブちゃんのCD二枚をお買い上げた。

さぶちゃん



そして極めつけは!
コロムビア時代最後の名曲「SWING」をとうとうライブで!
一気に涙腺が緩み、同時に元気になった。
なつかしいということをおいといてこの曲はすごいいい曲だと思うんだよね
リズムも歌詞もメロディもみんなそれぞれの世界でスウィングしている。
(ノリがいいというダケじゃないということよ)

しかもSWING、前半はベースのファンキーなラインだけをバックに歌われるという
大胆なアレンジ。
ベース(しかもウッド)だけで歌うってスゴいムズカシイと思うんだよね。
ベースが手数の多いラインでコード感をしっかり出していたということなのか
自然でスムースな歌だったのがすごい!

もちろん中盤他の楽器がわぁっ!とはいってくるとこで
また涙腺崩壊なわけで!



てことで、素直に感動して帰ってきましたのよ~

トークの方は聴きたかったけれども
翌日オケ練参加の予定だったので
体力温存のため今回はパス。

もっと若かったら(かつお酒が飲めたら)朝までトークに付き合いたい!!


髪を切ったグル(岩見さんね)


円山さん



*******

ALASKAの恋
C'est vous sur le pont
Les Cafes
私の世界
Zo-wa-zo Oiseaux
Mon petit chat
さぶちゃんの大脱走(仮題)
Attends
I am a kitten
(三分休憩)
TABACの森
madrigal
(?)
Zobi la mouche
SWING

ノワイエ




いま気づいたのだけれど
前回のライブとほぼ同じ選曲+曲順でした。

さぶちゃんの大脱走ってのが田ノ岡さんのオリジナル

三分休憩てのは、そこで当日お店にある食べ物メニューのハナシをしたら
なんだか全体休憩モードになったので、
いきなりおやつタイムになり(笑)
猫沢さんもタバコ休憩してた(笑)
ライブ中にこういう臨機応変な展開ってのはいいよね




そういえばマドリガルの次にやった曲
タイトルはなんなんだろう?
何度も聴いた曲なのだが??
ワタシが忘れちゃってるだけなのか???
(たらったったらーらー、たらったったらーらー)
リフが5拍子のヤツ。

あとあれだな、みんなでソロ回しする曲が多めだったね。

それとー
猫沢さんの服が
今回はケモノちっくな
毛がぼわぼわしているもので
ワイルドでよかったですね~

もしかしたら「SHELL」のジャケで着てた??
と思ったけど未確認(すぐに訊けばよいのに、そういう思いつきをすぐに忘れちゃうのですねー)



あ、そうそう
次回は2月12日(土)に
やはりTRAUMARISでライブ+トークの3回目だそうですよ
迷えるジョシ(かつ終電を気にしないでいい女子)には
おすすめ!

http://necozawa.seesaa.net/
twitterも始められたそうですよ~

********

照明は
猫沢さんは暗く
後ろの壁は明るく
という斬新な(笑)

なので写真がぼよぼよですじゃ。

写真と言えば、1回うっかりストロボを激しく光らせてしまったのはワタシです^^;
すみません
歌ってる最中じゃなくてよかった。。。



あと、yukkoさん来てた?
ちゃんと認識してなかったかもで、すみません。




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MICK KARN passed away..

2011-01-05 04:39:34 | music
闘病中であった
Mick Karnが
亡くなったようです。

http://www.mickkarn.net/index.htm
"It's with profound sadness that we have to inform you that Mick finally lost his battle with cancer and passed away peacefully at 4.30pm today, 4th January 2011 at home in Chelsea, London. He was surrounded by his family and friends and will be deeply missed by all.
Posted: 4th January 2011"


ミックは元ジャパンのベーシストで
優れた彫刻家でもありました。

楽譜が読めないなど
基本的には素人であることを逆に強みにして
革新的なベース奏法とフレーズを生み出した
オリジナリティの人です。

ジャパンのベースをよくコピーしたものです。
フリマで5000円のベースのフレットを抜いて
溝をパテで埋めたのも
ミックのせいです。



ジャパン解散後も優れたソロアルバムを多数リリースしていますが、
なかなか入手しにくいものもあるようです。
なにしろサイショのソロアルバムであるTitlesを
ワタシはまだ入手していません。

ソロアルバムの中ではいまのところ
THE TOOTH MOTHERが好きです。
めちゃめちゃかっこよいですけれど、
彼のかっこよさというのは、なんというかかっこわるさと紙一重のところにあって
普通の人と同じことはやらない。
誰もがカッコいいと思えるような安心できるかっこよさではないのです。
人と同じことをして安心するような向きには理解できないかっこよさなのですね。

といってワタシがミックを理解できるクールなヤツだというわけではなく。
むしろ常にミックのことを頭の隅っこに思い、
我が身の自堕落を戒めないといけないようなヤツなのです。
そして彼の実践した、アマチュアリズム的な独自性の開拓を
共感できるひとつの方法として
微力ながら自分なりに受け継いでいきたいと
思うのです。


ミック、悲しいけれども
あなたの残した物を心に置いて
生きていくよ。




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2010年を振り返る~極私的映画ランキング~

2011-01-02 03:26:37 | cinema
2010年を振り返る~極私的映画ランキング~


毎度言うことですが、ワタシの映画鑑賞スタイルは劇場に足繁く通うというよりは、旧作中心にDVDでというものなので、年間公開作のランキングはできません。
なので、新旧作とりまぜてのmanimani脳内限定ランキングをやって喜ぼうという私的企画です。

という文章自体、昨年のランキングページからコピペしてるくらい毎年言ってますw

なのでまあ、誰にもなんの参考にもならないと思いつつの自己満足企画ですね。

********

2010年に観た映画を列挙するとこんな感じでした。

・夏と年末にオーケストラに参加したので、本数としてはぐっと控えめになりました。
・DVD中心といいつつも比率的には意外と劇場鑑賞も多かったですが、まあそのせいで財政を圧迫したため控えたというのもありますねw
・といいつつもDVD鑑賞はツタヤものは1本もなく、すべて所有しているDVDの消化試合となり、財政難の原因はここにもあるのでした。

『ゴダール・ソシアリスム』2010 ジャン=リュック・ゴダール
『映画史特別編 選ばれた瞬間』2005 ジャン=リュック・ゴダール
『フレディ・ビアシュへの手紙』1981 ジャン=リュック・ゴダール
『ウイークエンド』1967 ジャン=リュック・ゴダール
『ノルウェイの森』2010 トラン・アン・ユン
『ブリキの太鼓』1979 フォルカー・シュレンドルフ
『ピアニストを撃て』1960フランソワ・トリュフォー
『奇跡(御言葉)』1954 カール・Th・ドライヤー
『コロンブス 永遠の海』2007 マノエル・デ・オリヴェイラ
『ラ・ジュテ』1962 クリス・マルケル
『オーケストラ!』2009 ラデュ・ミヘイレアニュ
『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』2010 川村泰祐
『ソラニン』2010 三木孝浩
『旅芸人の記録』1975 テオ・アンゲロプロス
『私のように美しい娘』1972 フランソワ・トリュフォー
『柔らかい肌』1963 フランソワ・トリュフォー
『恋のエチュード』1971 フランソワ・トリュフォー
『突然炎のごとく』1961 フランソワ・トリュフォー
『アメリカの影』1959 ジョン・カサヴェテス
『サベイランス』2008 ジェニファー・リンチ
『フローズン・リバー』2008コートニー・ハント
『だれのものでもないチェレ』1976 ラースロー・ラノーディ
『アデュー・フィリピーヌ』1960-62 ジャック・ロジエ
『メーヌ・オセアン』1986 ジャック・ロジエ
『オルエットの方へ』1969-71 ジャック・ロジエ
『ウィッカーマン』1973 ロビン・ハーディ

ふりかえり総括を試みると
●年始はジャック・ロジエを満喫しました。それまで名前くらいしか知らなかったのですが、それを3本観ることができて幸せです。しかも内容が大変よかったし。
●トリュフォーを何本か観ましたね。大傑作というタイプの作品ではないと思うのですが、基本好きな世界です。フランソワーズ・ドルレアックの美しさが印象的でありつつも、『突然炎のごとく』が一番好きかな~。『ピアニスト~』の奥さん役の人もすばらしかった。
●カサヴェテス、オリヴェイラ初体験。
●『旅芸人の記録』初鑑賞。
●『ブリキの太鼓』『奇跡』再観。
●『ソラニン』で威厳を損なうほど号泣。
●そして年末はずっと鑑賞機会をうかがっていたゴダール『ウイークエンド』をついに観て笑った。
●もちろんゴダールの新作に参戦。

なとこですかね。
意外なことにファスビンダーとソクーロフを観ていない。



で、
ランキングですが、とても難しい!本数は少ないのにどれも秀作なのですねー。
かなり無理やりベスト5!

第1位『アデュー・フィリピーヌ』ジャック・ロジエ
これはまあすぐに決めました。『メーヌ・オセアン』のほうがずっと楽しいのですが、『アデュー~』は逆に楽しさもある一方で、不安で暗い影もいっぱい含んでいるところがよいのです。

第2位『メーヌ・オセアン』ジャック・ロジエ
迷いつつも結局ロジエをまた押しました。娯楽作として十分に楽しい上に、ロードムービーとしての振り幅の大きさが徹底していて、終盤はもはや世界の果てに行ってしまったような錯覚を覚えるところが好きですね。

第3位『旅芸人の記録』テオ・アンゲロプロス
このランキング、いったいいつのランキングだ?^^;不覚にもこれを観ていなかったのですが、観てよかったです(4時間近い長尺にもかかわらず)。70年代終わりから80年代にワタシを先導してくれたフランス映画社の配給もので、まさしく自分が魅了されたヨーロッパ映画のテイストど真ん中でした。劇場で観れたのもよかったです。

第4位 欠番
第5位 欠番

おいおい(笑)

今回はベスト3でやっぱりやめとこう。あれを選ぶならこっちも入るよなあ?という感じで、順位が付けられません。




恒例ランク外では・・・

別格で賞:『奇跡』カール・Th・ドライヤー
相対的によいとか悪いとかいう話をする気にはなれないということで、ランク外特別賞です。
聖性と冒涜が同時に存立するような瞬間にこそ人間の問題系は浮かび上がるのだと思わざるを得ない。そういう作品でした。


ということで、ランキング終了~
今回は本当に私的な感じに仕上がりましたね~




アデュー・フィリピーヌ [DVD]
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店



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