Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

2015年を振り返る~極私的映画ランキング?~

2015-12-31 02:56:11 | cinema
2015年を振り返る~極私的映画ランキング~

毎度言うことですが、ワタシの映画鑑賞スタイルは劇場に足繁く通うというよりは、旧作中心にDVDでというものなので、年間公開作のランキングはできません。
なので、新旧作とりまぜてのすた☆脳内限定ランキングをやって喜ぼうという私的企画です。

という文章自体、昨年のランキングページからコピペしてるくらい毎年言ってますw

という例年の枕詞ではじめますが、
あまり人の参考にもならないし話題に同調することもできない企画なのでやめちゃおうかと思ってたんですが、
とらねこさんが楽しみにしてくれているということでしたので、
ひとりでも読んでくれるのなら続行するかと。


・・・と、ここまでが昨年からのコピペです(笑)

・・・と、ここまでが昨年からのコピペ(笑)


*******

さてと、見返してみると昨年2014年観た映画はどうやら6本だけでしたが。
今年は?

「恐怖分子」エドワード・ヤン
「プロスペローの本」ピーター・グリーナウェイ
「ソークト・イン・ブリーチ ~カート・コバーン死の疑惑~」ベンジャミン・スタットラー
「ロシアン・ドールズ-スパニッシュ・アパートメント2-」セドリック・クラピッシュ
「スパニッシュ・アパートメント」セドリック・クラピッシュ
「PARIS(パリ)」セドリック・クラピッシュ
「パリ・ジュテーム」オムニバス
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」クリストファー・マッカリー
「Yokohama SunSet 2013」Spitz
「フルスタリョフ、車を!」アレクセイ・ゲルマン
「さらば、愛の言葉よ」ジャン=リュック・ゴダール
「マップ・トゥ・ザ・スターズ」デヴィッド・クローネンバーグ
「勝手にしやがれ」ジャン=リュック・ゴダール
「勝手に逃げろ/人生」ジャン=リュック・ゴダール
「ジョン・ウィック」デヴィッド・リーチ、 チャド・スタエルスキー

昨年の倍以上観ましたw
スピッツのも映画鑑賞に含めましたけど。
劇場鑑賞は7本(うち試写会2本、スピッツ1本)

なかなか濃密なプログラムじゃん
ランキング難航しそうだな~

***

というわけで今年は

第1位「マップ・トゥ・ザ・スターズ」デヴィッド・クローネンバーグ
なぜこれかというと、クローネンバーグを偏愛しているからでありますが、前作はなんとなくもやもやしたものがありましたが、今作はもうばっちりツボにはまっておりますゆえ堂々の第一位でございますよ。
この映画はいろいろすばらしいんだけど、特にキャスティングの大成功を感じます。
ひとが出てくるだけで何かを物語っちゃう、しかもクローネンバーグ的ななにかを!

この作品の鑑賞記


第2位「PARIS(パリ)」セドリック・クラピッシュ
第2位以降は甲乙つけがたい感じがあるんだけど、
おくればせながらこの作家のこの作品を発見したので、記念に。
基本群像劇なんだけど、分割スクリーンその他手法的にいろいろ挑戦しているのが面白かった。
けど、月並みだけどパリの空の下それぞれにそれぞれの人生があり苦楽があるのよという
ケセラセラな主題が泣かせるのよね~
臭くなくなんとなく距離感があるのも好みです。

この作品の鑑賞記


第3位「さらば、愛の言葉よ」ジャン=リュック・ゴダール
これは予想よりずっと面白かったし、実にゴダールっぽい3D映像だった。
ゴダールぽいというのはなんなのよというとよくわからんのだけれど、
水面とか木の枝とか犬の鼻面とかそういうのをただ写しているのだけど
それが3D効果としてこんなのもありなのかと思わせる瞬間になっていること、だと思うのよ。
一方でいつものゴダール世界がぼよんと目の前に出てくるwという楽しさもありました。

この作品の鑑賞記


第4位「恐怖分子」エドワード・ヤン
1位でも全然かまわないんだけど、すてきな映画
この人はどんなショットにも独特のグルーヴ感を織り込んである感じで
「ヤンヤン 夏の思い出」とは作風は違えどそのグルーヴのドライブさせ方という点で
同じ作家だなあと思わせるものがあるね。
すべての瞬間でうーむとうならせる。


第5位「フルスタリョフ、車を!」アレクセイ・ゲルマン
こういうの好きなんだよね。根本的に。
過剰でてんこ盛りでわけわからんけど異様にパワフルな。
ほかにこういう映画はあるだろうか?
映画じゃないけど小説ならセリーヌとかゴンブロヴィチかな
ゴンブロヴィチの「フェルディドゥルケ」とか
あれを映画化したのがスコリモフスキ「30 door key」だけど
ノリは似ているかもしれない・・・が全然違うか。。
守備範囲ではとにかく他に類を見ないわけわからんさでねじ伏せに来るとんでもない映画ですよ。

この作品の鑑賞記


**********

以上5作でした~

え?グリーナウェイをなぜ落とすか?
そうだよなー
もうグリーナウェイのあれはなんというか
殿堂入りなんだよねw
ワタシの心の奥の古典なのでもはや触れたくないw

あーあとスピッツは、横浜のライブの完全収録映像なんだけど
音楽映像というよりはしっかり映画としての風格をもっていたので
映画にカウントしましたよ

ということで終了です~
皆様よいお年を~



コメント (2)
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ジョン・ヴァーリィ「汝、コンピューターの夢 (〈八世界〉全短編1)」

2015-12-06 02:06:03 | book
汝、コンピューターの夢 (〈八世界〉全短編1) (創元SF文庫)
ジョン・ヴァーリイ
東京創元社


ジョン・ヴァーリィ、読みたいかもと思っていたところに
短編集が刊行されたので早速購入。

で、すっごい面白かった^^
70年代を中心に活動した作家なのでネタ的に古めかしいかもと思ってたんですが
全然そんなことはなかったです。
(強いて言えば最後のはちょっとヒッピームーヴメント的なにおいがするかも??)

地球が宇宙からの侵略をうけて人間が月や火星などに散り散りになった世界を舞台にした短編連作なんだけど、面白いのはそれらのあいだに直接のつながりはなくて、場所も時間もばらばらでテーマもばらばら。SF的設定よりもそこで生きる人間たちのふるまいや考えのほうにフォーカスされてる感じなのよね。

それに様々に発展している技術やらガジェットやらが頻出するんだけど、ほとんどそれらについての説明はなくて、当然あるものとして話が進んでいくのよね。

こういう「不親切」な小説は大好きである。

山岸さんのあとがきによれば、「登場人物が電話を使うときにいちいち電話の説明なんかしないだろ?」とジョンは言ったとか言わないとか。(言ったらしい)

***

冒頭の「ピクニック・オン・ニアサイド」は、ヴァーリィのデビュー作だそうだが、
ここでもいきなり「変身」という技術があるらしいということがなんとなくわかる。
彼らは性の転換をかなり気軽に(しかし彼らなりの葛藤は持って)行っているらしい。

性からの解放というか選択の自由というのは、なんとなく60年代70年代的な感じもする。
フェミニズムなどの影響もあるのかもしれない。
アーシュラ・K・ル・グィンにもそういう設定のものがあるし、萩尾望都にも(SFに限らず)ある。
そういう転換~解放は、これから来るいろいろな奇想を受け入れるための準備運動としては最適かもしれない。
既成の概念にとらわれてはいけないのだということで。

それと、そもそも「ニアサイド」てなに?ということだけど、対する言葉として「ファーサイド」ってのが出てきて、
これは「うら側」ということ。
で、どうやら「ニアサイド」は表側で、地球に近いほう。
つまりこれは月が舞台なのね?とわかってくるのよね。

あと、ほかの作品にも頻出するのがセックスのこと。
彼らは性転換などを絡めつつややこしくしかし気軽にセックスをする。それもとても幸せそうだ。おそらくはセックスが生殖とは切り離されたものになっているのだろう。このへんも70年代の香りがする。

****

あとは、水星では太陽はどう見えてるのかとか、金星の地表はどんな環境かとか、
ブラックホールが近所を通過するとどうなるかとか、SF的な仕掛けが盛りだくさん(で説明はなし)。

ある意味ハードSFなんだろう・

ハードSFといえば、表題作「汝、コンピューターの夢」などで、
脳をコンピューターとつないで「バックアップ」をとり、
本体が死亡した場合はクローンにバックアップをインストールして復活するとか、
意識を動物に落とし込んでしばらく動物として暮らすとか、そういう意識のデジタル化技術が出てくる。
これは後にグレッグ・イーガンなどが所与の技術として採用し、
そこから遠大かつハードなSF世界を構築するところのもので、
現在の豊かなSFの成果の源流となっているだろう。

「汝、コンピューターの夢」はそういうハードSF的な要素に加えて、
今度はディック的な仮想現実、目の前に現れている世界は実は自分の持っている記憶や思考を
コンピューターがくみ取って現前させているものであり、
その気になれば気に入らないやつを消してしまったり、時間を元に戻したりできちゃうという、
なにやらおかしな世界を描いてもいる。

「ユービック」的な、奇妙でコミカルな短編だ。

******

ほかには、金星の辺境を訪ねるふたり(火星の人と金星の人)が困難を乗り越えながらこころを通わせる「鉢の底」や、
クローン+意識のバックアップで再生可能となった人間世界における「殺人」の奇妙な怖さと、
芸術家の苦悩を絡めた「カンザスの幽霊」なんかが面白かった。

まあどれもおもしろいんだけど特にね。


第2巻は2月に刊行予定だそうです。
たのしみじゃ。

あとハヤカワからもヴァーリィ短編集が同時期に出てる。
創元SF文庫のほうは「全短編」ということなんでこちらを読んでますが。

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「動きの悪魔」ステファン・グラビンスキ

2015-12-05 02:35:39 | book
動きの悪魔
クリエーター情報なし
国書刊行会


「ポーランドのポー」「ポーランドのラヴクラフト」の異名をとる
グラビンスキの初邦訳短編集を読みました。

訳者の芝田文乃さんが電子書籍で少しずつ翻訳を公開していたところを
国書刊行会さんが出版にもっていったということです。
絶妙のコンビネーションですね。


ワタシのなかではポーランドというとシュルツ、ゴンブロヴィッチ、カントル
ということになりまして、なんというか、こめかみが痛くなるような先鋭性と
グロテスクな郷愁みたいな、形容に困り果てる世界なんですけど、
グラビンスキはそういう要素を含みつつも表現は平易で
また違ったポーランドという感じです。

一方ではもう一つの極であるレムを生んだことを考えると
ポーランドの懐の深さを感じさせます。

*****

内容は、鉄道にまつわる怪奇幻想譚。
それも主に蒸気機関車の時代の、鋼鉄と石炭の荒々しい鉄道を舞台に
それに魅せられ翻弄される人間たちの不可思議な運命を描きます。

鉄道に魅せられたというより、鉄道が喚起する「動き」や
移動そのもの、スピードそのもののもつ魔力的な魅惑にとりつかれた人々というべきでしょう。
作中ではしばしば、目的地への移動の手段として鉄道を利用する人を軽蔑し、
移動すること、力強い動きだけを目的に鉄道に乗ることをよしとする人物が登場します。
そこには鉄道という新しい技術が切り開いた、新しい魔の世界の入口の存在を感じます。
鉄道にひそむ魔の気配をすくいとって様々に変奏した短編集といえるでしょう。


短編集の構成としては、読み進めるにしたがってどんどん深みに向かうような感じです。
入口である冒頭の「音無しの空間(鉄道のバラッド)」は、鉄道に生きた男の物悲しい末路を描いた切ない短編ですが、
「汚れ男」「永遠の乗客(ユーモレスク)」「動きの悪魔」「機関士グロット」あたりで
かなり魔の影が濃厚になってきます。いい感じです。

ときおり「偽りの警報」で数理的な謎解きを加えたり
「奇妙な駅(未来の幻想)」ではSF風の未来を幻視したり。

そして終わり2編の「シャテラの記憶痕跡」「トンネルのもぐらの寓話」は
しめくくりにふさわしい幻想譚。

「シャテラ~」はグロテスクな事故現場の記憶に魅せられた人物の甘く悲惨な最期を
赤い服の女やころがる首といったイメージをうまく喚起させながら描いた力作。

「トンネル~」はワタシはこれはウルトラQだなと思ったんですが、
代々トンネルの管理をやっていた一族の末裔がとうとう異世界に自ら踏み込んで姿を消すという
彼岸への越境を果たすもので、終わりにふさわしい名作です。
これが一番好きです。

*****

一日一篇という感じで読み進めたんですが、
毎日読むのが楽しみでした。
長編ものが好きでしたが、こうやって短編を読んでいくのも面白いなあ。

巻末の訳者解説の作品解題が大変面白いが、
ラヴクラフトとの親近性についても触れている。
作品的な親近性とともに両者が同時代の作家であることや、
容姿すら似通っていること、
しかし両者は互いにそれぞれの作品に触れる機会はなかっただろうということが書かれている。
同時代性とはそういうものだが、ちょっと背筋が寒くなりました。


装丁もすばらしいです。



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