ようやく読み終えた。
*血をわけた姉妹
シビアな話でした。
エイズ対策に関する格差、細菌兵器の研究開発、製薬に関する市場原理
そういったものに対する批評精神をもちつつ、姉妹の人生と心の交わりも
切なく描いている。
ハッキングによるシステム変更はちょっと無理がある発想だと思うけれど、
それにより相応の公正さを実現しているカタルシスの部分だから許そう。
しかし冒頭のファンタジーめいた姉妹の契りからはじまって
ハッキングだのエコロジーだの衛星通話だの偽薬試験だのと
よくこれだけの要素を破綻なく構成できるものだ。感心!
*しあわせの理由
短編集のタイトル作だけあってとても面白かった。
一昔前ならロボトミーとかいう設定になりそうなところが、
ウイルスによる治療だったり義神経だったりで、いい感じ。
内容はSFというよりは、やはり生きる上での幸福感とは何?
という哲学的な迷路に招き入れる作品。
こりゃ傑作かも。
個人的にも妙に符合点が多くびっくり。
(えーと、鬱状態になっちゃうとこ、バッハに20点を付けるとこ、
バベルの図書館の話など・・・)
あと「ロール・オーヴァー・ベートーヴェン」には笑った。
ちゃんと前振りでチャック・ベリー出てきてたし。
「プロザック・ヘヴン」にもまいったな・・・
いやーやっと1冊読んだ。
イーガンおもしろいです!
追記
「チェルノブイリの聖母」で、「ピナ・バウシュへのオマージュだ」という
せりふがありました。
ピナ・バウシュは80年代からばりばり活躍しているモダンダンス作家。
「聖母」は2013年の話なので、ピナ・バウシュが活躍したのは
20年くらい前ということになりますね。
本筋とは全く関係ないせりふなんで、ピナ・バウシュ好きなのかな?
こういう余裕の筋立てもイーガンの魅力でした。