Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

ソフィア・コッポラ「ロスト・イン・トランスレーション」

2006-12-30 02:29:04 | cinema
ロスト・イン・トランスレーション

東北新社

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2003アメリカ/日本
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
出演:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン


長い結婚生活で子供もいて、俳優の仕事はあるけれどどこかしらうまく行ってる感じがしない中年男。
結婚したばかりで、哲学を専攻して学校をでたばかりの若い女。

今が何となく不安で、それでもとりあえず今日はなんとか楽しく過ごすこともできるけれど、未来には希望はそんなに持てない。
人生、どんなときでもそんなものなのだ。
安定するとか立場が固まるとかそんなことは見果てぬ夢にすぎない。
ありえないような高さから密集するビルたちを模型のように見下ろすと、自分はどんなにゆらゆらとゆらめき、一瞬ごとに変わっていくそんな存在なんだということがわかるような気がする。

そんなゆらぎを胸にひそませる二人が出会うのは、東京のホテル。
熱烈なロマンスに発展するでもなく、出会ったことが、この水のたゆたいのような生のなかで、小さいけれどもかけがえのない大切な瞬間であることを心に刻み込むような出会いと別れ。
その機微を画面はしっとりととらえていたと思う。

この人生のたゆたいは、まさに自分のゆらぎだ。
若い頃からもっていて、今でも持っている、現実のもつ浮遊感そのものだ。
若い時の自分を描いた映画であり、今の自分を描いた映画でもある。

ハグが、ほんとうにいとおしいハグに撮れていた。
ゆらぎのなかに大切なきらめきがある。
あんなハグをしたい。

**

新宿と渋谷が主な舞台。とくに新宿はわたしの職場の近く、
かなり土地カンのあるところで、自分が画面の隅に映っていてもおかしくない。
あのホテルにもときどき昼ご飯食べに行くし・・・
これは目眩に似た不思議な気分。

にもかかわらず、描かれた日本は、私の知らない日本だった。
日本ではあんなに人が音楽や酒に酔いしれて集っているんだろうか。
あんなところに出入りしない自分にはよくわからない日本。
きっと実際にある世界なんだろう。

まあ、日本って、よく日本だか中国だかごちゃ混ぜになっているような描きかたされることって多いから、ちゃんと日本の実像をとらえたという点では、コッポラさんは確かな目をお持ちといえましょう。

みずみずしく素敵な映画でした。


**

エンディングのはっぴいえんどは、どういう経緯で使われたのかな。
だれかが日本の代表的ポップスとして推薦したのかな。

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白くまアリスLIVE!

2006-12-28 22:19:12 | LIVE告知
白くまアリス、ライブやります。

毎年恒例「年の初めのおおばんぶるまい」

1月3日(水)17:00開場
吉祥寺MANDA-LA2
¥2000+1ドリンク

おおばんぶる舞:スティールドラム
たかふ~(manimani):ベース
山上晃司:ピアノ/キーボード
にゃおい笑子:ドラムス
日野雅司:ギター

3バンド出演で白くまは19:40ころ~です。

おおばんぶる舞企画の、なごやかなライブです。
お正月暇な方はぜひど~ぞ。
いきなり行っても入れます。
プレゼントもあるかもよ



って、まだ見てない曲があるんだよな~
明日リハなのに見る暇がない~~
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ジョン・ウー「ペイ・チェック」

2006-12-25 11:12:28 | cinema
ペイチェック 消された記憶

角川エンタテインメント

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2003アメリカ
監督:ジョン・ウー
原作:フィリップ・K・ディック
出演:ベン・アフレック、アーロン・エッカート、ユマ・サーマン、ポール・ジアマッティ


なぜか唐突に観る。
「スキャナー・ダークリー」に向けてディック気分を盛り上げる。
このところ邦画(っていうか実相寺)続きなので、久々に字幕鑑賞。
(疲れた。)

さて、このB'級?サスペンスドラマ、
原作はP.K.ディックの1953年発表の短編。
すごいよな50年前の作品だ。

ベースとなる素材はそれ自体もう十分ディックしているので、
それをどのように味付けしようとも、ディック臭さは抜けない。
というわけで、意外と(?)面白く観れましたね~

ジョン・ウー初体験だったけれども、知的緊張感あり、肉弾戦あり、カーチェイスあり、ロマンスあり、香港仕込みのケーブルアクションあり、の大サービス。
香港映画だと思ってみるとなんだかそこはかとないB級感にも妙に納得がいく。

原作とは大分雰囲気が違うじゃないか、とか主人公が「単なる技師だ」とか自分で言う割りには妙に強すぎるよなあとか、ディックにしては登場人物のキャラが立ち過ぎだよとか突っ込みどころは満載なんだけど、
なんつーか、ディックのもっているどこまでもB級な感じというのはしっかりととらえていて、例えば「マイノリティ・リポート」の洗練されたA級感よりはディックの世界をよく描いていたんではないかなあ・・・

***

火災報知システムとか、切手が一枚多いよとか、ネタをあらかじめ前振りで匂わせておく脚本は細部が大変巧妙にできていて、それらのネタがいざ本番!ってときに観るものをぐっと引き込む技は、なかなかのもの。

なんだけど、なんだか観ているうちに、あの茶封筒をまさぐるとその時々で使えるものが出てくる、という展開がちょっと鼻につく感じがした。ドラえもんのポケットみたいだ。
「これが使える!」と思って使ってみると実はとんちんかんで、大わらわに展開しちゃう、みたいな「裏ペイ・チェック」(ギャグ版)を想像しながら観たよ。

***

ベン・アフレック扮するジェニングスは、服装なんかはヒッチコックの世界を意識したということらしく、ケーリー・グラント風というか、「北北西・・」みたいな感じ。
でもヒッチコック風演出というのはほんの一部のことで、かえってそこだけ浮いてしまっていたかも(汗)

記憶を消去する、というのを苦心して映像化しているが、がんばればがんばるほどありえない感じがしてしまうのは、同情に値するだろう。神経細胞が大写しになってシューティングゲームよろしく細胞を一個一個潰していくなんてな~(笑)

ユマ・サーマンは、幸運にも「キル・ビル」を観ていないので(笑)先入観なく観れたと思う。(パルプフィクションは観たんだけど)
美しくて、頭が良くて、性格が良くて、活劇ができる女性なんて、都合良すぎるよ。「明日に向って撃て!」みたいな、パートナーものとして観ると面白いな。

「レディ・イン・ザ・ウォーター」のポール・ジアマッティがいい味を出していたが、いま調べていたら、私より年下であることが判明。
えええぇぇえぇええ~~~っ??うそでしょぉぉ?


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原作本↓
ペイチェック―ディック作品集

早川書房

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原田知世 as singer

2006-12-24 11:16:22 | music
ロマンス

シンシア

もいっこロマンス

シンガーとしての原田知世
好きなんです。
鈴木慶一一派と組んだころもいいんですけど、
トーレ・ヨハンソンに染まったころが好きで。

北欧勢との作品は、後半かなり失速したなあと思うけれど、
最初の頃のは新鮮な感じがしていいですね。


これは最初のトーレのプロデュースでのフルアルバム
I could be free
原田知世, トーレ・ヨハンソン
フォーライフミュージックエンタテインメント

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これはミニベスト盤ですが、シンシアとT'en vas pasが入っていますね。
Flowers
原田知世, トーレ・ヨハンソン, 北田かおる, Regis Wargnier, Cathrine Cohen, 鈴木慶一, Free Wheel
フォーライフミュージックエンタテインメント

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これはわりと最近ので、いまのところの最新作。
羽毛田丈史と組んだもの。
ぐっと持ち直してなかなかよいですね。
My pieces
原田知世, 羽毛田丈史, LINDA HENNRICK, 鈴木慶一
フォーライフミュージックエンタテインメント

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You Tubeで偶然行き当たって、久々「シンシア」とか思い出したのです。
原田知世、自分なりの歌い方や聴かせ方を非常に良くこころえた歌手で、
普通に歌っているようにみえて、とても個性的なんですよね。
なかなかこんな水準にいる人はいないと思うんですよね~

よい作家陣と組んでもっと活躍して欲しいです。


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居場所なし!

2006-12-23 17:20:02 | movelog

ケーキを買って帰ろうと思ったらケーキ屋さん大混雑〓

今日が実質クリスマスイヴなんだなきっと。

@銀座キルフェボン
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寺山修司「さらば箱舟」

2006-12-22 23:29:58 | cinema
さらば箱舟

ジェネオン エンタテインメント

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悲しい話だった。
見方によってはハッピーエンドなんだけれども、
全然ハッピーではない感じ。

【ネタばれデスヨ】
ある村。寒村というには活気に満ちているが、決して大きな村ではない。「本家」とその分家でなりたっているような集落が舞台。
分家の分際で、本家の娘=いとこと結婚した捨吉とスエの夫婦は、ほとんど村八分の生活。
いとこと結婚すると犬の体の子供が生まれる、と、スエの父親はスエに貞操帯を穿かせてそのまま他界。捨吉とスエは貞操帯をはずそうと手を尽くすが外れない。

祭りの日、闘鶏場でスエとの関係を揶揄された捨吉は、本家の大作を刺殺してしまう。その夜スエを伴って村を逃げ出した捨吉だが、数日歩きとおした末、元の家に戻ってきてしまう。(この夜のモノクロのシーンは消え入りそうな明かりを便りにしており秀逸)
もどってからの捨吉は、物の名前を忘れてしまうという奇妙な病?に侵されはじめ、同時に大作の幻を見、会話するようになる。
家中の物に、名前を大暑した紙を貼り付け、自分自身には「俺」と書いた札を下げる。しかし妻スエのことだけは忘れない(;;)

一方、村のおかしな形をした木の近くに妙な穴があいている。どうやら冥土とつながっている穴のようで、冥土からの手紙を配達に来たりする。
また、「隣街」がどうやら魅力的な街らしいと言うことが伝わりはじめる。
とともに、村にも電気が引かれはじめるなど、近代化の波もやってくる。
村人は次第に「隣街」に移りはじめる。

ある日、物売りが時計を売りに捨吉の家にやってくる。捨吉の家が時計を所有したことを知った村人は、捨吉の家を襲撃し、時計をたたきこわし捨吉を撲殺してしまう。
捨吉を荼毘に付したあと、スエは花嫁衣装をまとい、冥土につながる穴に身を投げる。「隣街なんてない。百年経ったらその意味わかる」と叫びながら。

***

時計をもつことで時間を所有する、あるいは時計を個人で持つことによって共通の時間が失われる、というモチーフは、「田園に死す」でも出てきたものだ。
時間の個人所有が、近代の生活だとすると、ここでは、冒頭本家の大作が本家を除き村中の時計を集めて浜に埋めてしまうことによって、この共同体が、近代という波のなかにおいてなお前近代的な性質を保っているのだということが明らかにされる。

その共同体の中で、タブーを侵し人殺しをする捨吉は、村八分の対象であるとともに、殺した当人と会話するという、冥土との通底者でもある。
スエもまた、捨吉と一緒であることで村では疎んじられる存在で、その存在はあのザンギリ頭に象徴される。とともに、捨吉の狂気を素で受け入れ、捨吉の葬送を行う、やはり冥土と交流を持つものなのだろう。

タブーを侵すものが狂気の側に立ち、冥土と交流し、同時に個人的時間という「近代」を手に入れ、過去から未来の複数世界を見通すと言う、なんとも複雑な構図が未消化でむき出しに置かれる。
侵犯者=狂気=冥土=近代=隣町=百年後、という強引な結びつき。このむき出しの力の度合いがかなり強力で、なじみのある寺山的風景(カタワや見世物小屋なんか)がちりばめられてもその印象はむしろこの映画では薄い。

という意味では、寺山苦手派にもこの映画なら大丈夫、という気がしなくもない。コンプレックスや自分語りを超えて、百年を描くことに力をそそいだ、そんな超越感が映画を支えているように思うのだ。
遺作でやっと映画に達することが出来た・・というのは言い過ぎか?
(というほど寺山観てはいないのでね)

**

合田佐和子による装画がいい。
しばらく存在をわすれていた作家だったが
一見して、おおっ?この絵のタッチはたしか・・??と思い至る。
作品集「パンドラ」を持っているが実家に置いてきている。
こんど取りにいこう。

「村」は沖縄ロケらしい。
シーサーが屋根でにらみをきかせ、薄暗い屋内で老婆がいつまでも同じ姿勢で座っている。そういう悠久な前近代を沖縄にみたのだろうか。
そういえば岡本太郎も60年代ころに沖縄に行って写真を残している。
岡本がそこにみた土俗と同じものを寺山も見いだしたのだろうと根拠なく思う。

で、日本の・・といってしまうと大きすぎるのかもしれないが、わたしたちの百年を振り返り、そこで得たものと喪失したもの、喪失したと思っていても根付いているもの、根付いていると思って喪失しているもの、そうしたものたちに思いを馳せる。

「百年たったらその意味わかる」
あと百年たったとき、わたしたちにはたしてなにかがわかってるだろうか。
(あ、生きてないか・・・)

**

ところでこれ、ガルシア=マルケスの「百年の孤独」の映画化ということらしいが、作家のクレームにあい、公開が遅れたという話である。
「百年・・」とはもちろんかなり違う内容で、まあムリもないかな・・・

***

関係ないけど、これを観る1時間前に「よつばと」6巻を読んだんだけど、よつばが家中にはりがみをする段があって、妙なシンクロに驚き笑えた。


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このところ物欲まみれ

2006-12-20 04:51:19 | diary
このところ頻繁なスパムトラックバックを地味~につぶす毎日です。
くりかえし付いてくるトラックバックをみていると、3つくらいの特定の記事についてくるのがわかってきて、これはやはり記事中のワードを引っ掛けて自動でTBするツールでやっているのかな~
そのキーワードが特定できればそれを伏せ字にしちゃうんだけどな。
なんかそれを追求するのもめんどくさいしな・・・

しばらく様子を見るので、怪しいTBがついていても気にしないでくださいませ。

***

グレッグ・イーガンの短編集新刊が出ていることに気づき、今日早速書店にて購入。
こういう情報はいまやほとんどネットで得ていて、以前はどうやって情報を得ていたのかよく思い出せない。たぶんまめに書店を巡回して棚を眺めていたのだろう。そういう時間の余裕もあったんだろうな。
ということでは90年代の一時期、子育てしつつ時間もなくネットもなかったころの情報は、自分の中ではぽっかり欠落部分になっているような気がする。
ひとりっ子

早川書房

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三崎亜記「となり町戦争」が文庫になったのでいっしょに購入。
このひと女の人だとおもってたら違うのね。
このお役所仕事のリアリティが妙にツボっぽいので。
となり町戦争

集英社

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という自分へのプレゼントはともかく、
今日は奥さまに時計を買ってあげた。
時計としては決して高くはないんだろうけど、我が家的には高価な時計
う~~ん、なんで買ってあげることになったんだろう~~??
まあ闘病で世話になったということかな。ありがとう妻よ。
CITIZEN XC(クロスシー) Eco-Drive 電波時計 XCB38-8794

シチズン

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んで子供のサンタ用にはこれ。勢いあまってルビーも買っちまったが、よく考えたらAちゃんはもうポケモンっていう年齢ではなかったよ(汗)ひとつあまった。
う~~んAちゃんにはなににすべきか??
しかし○×カメラのゲーム売り場は季節柄ものすごい混雑。行列して買いましたよ~
ポケットモンスター ダイヤモンド 特典 オリジナルフィギュア ディアルガ付き

任天堂

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それはともかく、とうとうDVD発売予定がでました。
私的には今年一番だった映画。ギリアムの「タイドランド」
仕事を休んで観にいったな。
これは買いだな~
ローズ・イン・タイドランド

東北新社

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そうそう、猫沢エミさんの本も2冊。ほぼ同時刊行で、装丁もペアですね。
出版社は違うけど。
かなり根詰めて製作したようで、エミさん入院までしたという本・・・

Weekend a Paris(ウィークエンド・ア・パリ)

白夜書房

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パリ通信

主婦の友社

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「パリ通信」のほうは、映画を軸にパリを語るというようなことらしいので、期待。しかし、映画評論ってなんだか片手間にはできない仕事のように最近思えていて、どんなもんでしょ。



アイリーン・ガンの↓これも買っちゃったし、はたして積んである本は死ぬまでに読み切れるのか?>オレよ
遺す言葉、その他の短篇

早川書房

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***

つーわけで、散財しております。

仕事のほうは適度に難航していてああやんなっちゃった状態ですし、遅刻常習犯だし、ほとんど給料ドロボー的存在であります。
明日こそは定時出勤を目指す!
(といいながら早朝覚醒で二度寝予定・・あぶないあぶない・・・)


<レビュー予定>
メルヴィル「白鯨」
寺山修司「さらば箱舟」
実相寺明雄「哥(うた)」
(いや、書くの追い付きません・・どんどん書く内容が薄くなっているような気が・・)


んでは、また(^^)/


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実相寺昭雄「あさき夢みし」

2006-12-18 12:42:07 | cinema
あさき夢みし

ジェネオン エンタテインメント

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1974日本
監督:実相寺昭雄
脚本:大岡信
撮影:中堀正夫
音楽:広瀬量平
出演:ジャネット八田、花ノ本寿、寺田農、岸田森

元寇の頃の日本。
鎌倉幕府の勢いとは対照的に、御所の生活は陰謀と頽廃で陰っていた。
若くして帝位についたものの、すぐにその地位を追いやられ、名ばかりの上皇となった後深草上皇。
その上皇の許で育ち、後に愛人として迎えられた四条。
四条は上皇への思いを抱きながらも、その美貌から、多くの貴族や僧侶の求愛を受ける。そしてそのことをすこしもとがめることのない上皇。
四条は貴族や僧侶と関係を持ち、子を産むが、その子はあるべきでない関係から産まれた子として、四条からは離され、二度と会うことは出来ない。
たくさんの愛に囲まれた苦しみ。人の世はなんてむなしくはかないのでしょう。
四条は尼僧の姿となり、遍路の旅に出る。

ってな感じでしょうか。
最初はもろ時代もの?大丈夫かなあ・・と思ってみていたんだけれど、脚本というか日本の言葉による語りの確かさと、静謐ながら緊張感のある、薄暗い映像の様式美に、意外なほど引き込まれて観た。

とくに、ほぼ自然光と思われる映像は、日本の家屋のなかの光のありようをよく表現している、というだけでなく、ほとんど表情の見分けのつかない中で流す涙、のように、さらけださない、覆い隠された表現というものの領域にあったと思う。

最近観たなかでは、同じく自然光を重視して撮ったと思しきベルイマンの「サラバンド」における、ほの暖かい澄んだ空気とはまた違う薄暗さで、これぞ文化の違いという思い。

主題は、要は人生の愛の地獄とはかなさ。これは普遍的テーマであるからして、古典はだから古典なんだろう。説得力あり。(意味不明)
しかしな~こういう主題って折に触れていろんな映画やら小説やらでくりかえしくりかえし扱われているわけで、そういうものに接するわりには全然わが身をどうしようとは考えもしない自分がここにいるわけで、どういうもんだろうなあと、しみじみ振り返ってしまったりもして。
(振り返ってもまあやっぱり変わらない自分というのがなおいるわけですけど)

**

ジャネット八田という人がいたなあ~そういえば。
フィルモグラフィをみると、「あさき夢みし」はキャリアの最初のころのようだ。
ちょっとエキゾチックな顔立ちが最初は違和感があったが、実はそれは興をそぐというよりは、ちょっと不可思議な魅力として実は物語を牽引していたことに気づく。

岸田森の僧侶阿闍梨の苦悩のしかたといったら、なんて純真なんだろうと感動する。(ちょっと悶え過ぎで笑えもしますけど)

脚本は詩人の大岡信。
「とはずかたり」に材を得たということのようだが、これだけ日本の宮中の言葉を書けるというのは、やはり勉強家の詩人らしく、たいしたもんだと感心する。
(関係ないけど大岡信はあまり顔が好きでない。なので詩もあまり読んだことがない。関係ないけど谷川俊太郎は顔が好きだ。なので詩も結構読んでいる。)

音楽はまたもや現代音楽の代表格広瀬量平。
現代の楽器、特に金管楽器をつかったプリミティヴな音づくりは、映像とぶつかりあう異化作用を遺憾なく発揮する。これまた実相寺でなければ扱いきれないような素材。



今の映画に慣れてしまった目にはすこし退屈に思えるかもしれないが、こういう空気がかつての映画にはあったんだということを知るにはいい映画なのでは??


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実相寺昭雄「姑獲鳥の夏」

2006-12-15 23:56:25 | cinema
姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション

ジェネオン エンタテインメント

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2005日本
監督:実相寺昭雄
原作:京極夏彦
脚本:猪爪慎一
音楽:池辺晋一郎
出演:堤真一、永瀬正敏、阿部寛、原田知世、田中麗奈
清水美砂、篠原涼子 、松尾スズキ、いしだあゆみ


産院の異様な建築!
これだけで私は満足した。
実相寺は異様な建築フェチであることは間違いなく(笑)、
「曼陀羅」での表現主義的/ダダイズム的モーテルといい、これは実相寺的な世界と言っていいのでは。
なにしろハイライトがまさにこの病院の炎上だったではないですか。
ここにこだわりの深さを勝手に観た私である。

(いや、異様な建築フェチは私か・・(汗))

そう、それと、
あの、墓場に挟まれた土塀の坂道!
あの風情も、十分に個性的なたたずまいだった。
陰湿というのとは違って、妙に安っぽいくせになんだか禍々しいという、独特のたたずまい。あの坂道にはまるかどうかがこの映画のリトマス試験紙だという気がしてならない。
このはまり具合はどこから来るのだろう・・・と問えば、やはり往年のウルトラセブン的?・・・(と毎回のように書いてしまうのもどうかとは思うが・・・)



思うに、前回観た「悪徳の栄え」でもそうだったけれど、実相寺監督は、昭和初期という時代を取り上げながらも、必ずしもその時代臭を出すことには腐心していない。
時代のアイテムもまだ実相寺ワールドを作り出すための手持ちのコマなんだろう。
だから、時代考証や人物の髪型とか原田知世の顔が現代っぽすぎるとか田中麗菜のメイクがありえないとか言い出しても、たぶんそんなことは痛くも痒くもないのだ。

ここはむしろ、暗い室内にありえないスポットライトがゆらめく演出とか、大概水平に対して斜めになっているカメラアングルとか、窓の向こうで怪しくゆらぐ人影とか、いかにも作り物の胎児のホルマリン漬けとか、障子の向こうから移される産女の絵とかを、そういう映像的世界をせいぜい楽しめばいいのだ。

***

原田知世がどう撮られているか楽しみであったけれど、悪くなかったな。
おそらく涼子の清楚な一面を出したくてのキャスティングなのだろう。正面から撮るときの謎めいた落ち着いた涼子はなかなかよかった。
けれど、一瞬のカットで見られる「久遠寺の母」の厳しい表情の知世さんは、まさに実相寺的女性という感じがした。
いささかその表情は一本調子なところはあったにせよ、ラストでの、久遠寺の母から涼子への=姑獲鳥から産女への移り変わりが、表情の移り変わりで表現できていたところはさすがと思った。

ついでにそのあと、温室へ落ちていくカットの美しさはこれまたよかったし、そのあとのサブリミナル寸前のフラッシュバックの応酬も、私的にはなんだか音楽のようで心に響いた。きっと劇場で観たらかなり刺激的なのだろうけれど。


永瀬正敏は好きな俳優さんだけれど、この役ではちょっと力が出せなかったかなあ。彼が力が出ないなんて、相当な現場だったんだろうか?(笑)

池辺晋一郎の、ちょっと時代がかった現代音楽風(笑)音楽も、実相寺以外には使いこなせないだろう的響きだったし。


というわけで、
これは、普通に原作の民俗伝承似非科学的ミステリーとしての謎解きや、市川金田一的陰湿を求めて観ると相当に物足りない映画と察せられるが、あくまで実相寺的映像世界の探求として観るならば十分に面白みのある作品だったのではないでしょうかね~
いきなり、現実は脳が作り出したバーチャルリアリティである!とか上段に構えられても、それは2005年のいまどき、どこか本気じゃないだろうよ~。
本筋こそがサイドストーリーと思って、心して楽しむべし。


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実相寺昭雄「悪徳の栄え」

2006-12-13 02:23:07 | cinema
悪徳の栄え

ジェネオン エンタテインメント

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1988日本
監督:実相寺昭雄
原作:マルキ・ド・サド
脚本:岸田理生
出演:李星蘭、石橋蓮司、清水紘治、米沢美知子、寺田農

う~ん
サドをベースに岸田理生ワールド

不知火侯爵の館で繰り広げられる悪徳の日々。
そして、その現実をなぞるように、犯罪者を集めて作られた劇団による芝居「悪徳の栄え」が上演される。
芝居が現実をなぞっているのか、現実が芝居を模倣しているのか。
いずれでもあり、いずれでもないとも言える。

演劇とは、現実の皮層を突き抜ける悪徳と快楽の装置なのだぁ・・・・


・・・という「演劇論」を聞かされているような気分になってしまって、逆に映画自体が快楽と悪徳の深層を暴き突き付けるような強度を失ってしまっているように思える。映画ならではの、現実と芝居の入れ子構造と言う点ではまあ、映画にする必然性はあるのだろうけれど、これはやっぱり妙に芝居らしい脚本であり、劇中劇のような形にした芝居を見たほうがパワーがあったんじゃないかなとも思った。
まあ実相寺監督は実際舞台の演出もやっているわけで、そういう演出手法の冒険でもあったんだろう。
でも90分がちょっと長かった。

でも、オープニングとエンディング、そして途中、屋敷の屋根裏で使われた人形たちはとっても魅力的だった。観てのお楽しみなんで詳細は触れないけれど、人形に、水分やたちのぼる湯気を含ませた姿は、こ・これは??と映画への期待をぐっとつのらせる。人形たちが唯一危うい境界を超える力を持っていたのだと思う。

あと、舞台を2・26事件前夜の日本にもってきているところもよい。エロ・グロ・ナンセンスの風潮と、それへの反動としての国粋主義的精神の間の対立と共通、それ自体が、妙に悪徳めいていて、そうね、日本で設定するとしたらこの時代しかないんだと思う。
この昭和初期っていうイメージ、寺山修司/横尾忠則/丸尾末広/赤瀬川源平的イメージっていう共通項なんだと思う。そこに岸田理生が並んで、なんの違和感もないけどね。

・・・・なんかうまく書けないな。

**

にしても、80年代の若者の顔は、今観ると、古い!という気がするのは気のせい?
特に女優さん。
一様に眉が濃くて、顔がぽっちゃり系である。
80年代以外の映画の女優さんはあまり時代を感じないのに、なぜか80年代だけは妙にその時のスタイルが色濃く出ている気がする。
なぜだろう?

単に時代が巡りきっていなくて、ちょうど古さを感じる時代といことだろうか。オードリー・ヘプバーンやジーン・セバーグやアンナ・カリーナがいまみると少しも古くさくないように、80年代の女優さんたちもいつかは新しいと感じる日がくるのかしら。

それともあの時代は外見が画一化した時代だったということだろうか。ほかの年代にくらべて突出してメイクや髪型が一様だったとか。

なんだか直感的に後者だったのではないかなあと、この映画にでてくる女性たちをみて思った次第で・・・


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実相寺昭雄「曼陀羅」

2006-12-08 23:47:12 | cinema
曼陀羅

ジェネオン エンタテインメント

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1971日本
監督:実相寺昭雄
脚本:石堂淑朗
音楽:冬木透
出演:清水紘治、森秋子、田村亮、桜井浩子、岸田森


無闇に面白かった。

観る者をいったいどこまで連れていくのか?
ここまでだろうと思っているとまだ先がある。
今のわたしたちにこれほどの道程があるだろうか?
これほどまでにたどるべき道があるっていうのはどういうことなんだろうか?

**

初めは、幼少の原風景とエロティシズムの関係が、関係を深めるほどに虚無的になっていく男女の話なのだけれど・・
それはあるきっかけから、死と密接に絡み合った快楽への目覚めへと繋がっていき・・・
(それだけで十分一本撮れるテーマだろうに)

その快楽の源をたどっていくと、ある共同体の生活様式に行き当たる。
それは単純再生産(=農業+エロティシズムの追求!)により時間=歴史=生と死を超越しようとしう共同体。

それに対置されるのは、統一と改革を目指した学生運動の挫折と、それがもたらす個人主義へのベクトル、その暗さ。
そしてもう一方のベクトルである日本回帰的思想の怪しさ。

閉鎖的なモーテルの中での二組のカップルのスワッピングからはじまる物語は、そうした鉱脈をたどるようにじわりじわりと広がっていき、
共同体の生活にのめり込んでいくカップルは、共同体の聖地を求める旅の果てに終焉を迎えるし、一方の個人主義にも日本回帰にももちろん共同体の原理にもなじめないカップルは自死と、単独テロという、極端な道を選んでゆく。

登場人物すべての行動は結局デッドエンドなのだ。
まさに方向性を失った社会の分子構造が崩壊する瞬間の様を描いた作品。
進むべき道はなく、それでも進まなくてはならない閉塞感を生々しく描いた映画であり、それはいまの私たちの社会とまぎれもなく地続きなのだ、と思う。

***

奇怪な、ダダイズム建築ともいうべきモーテルはなかなかすごかった。
毎度いうのもなんだけど、ウルトラセブン的異郷感だ。

後半、岸田森率いる共同体の行動をモノクロでとるようになってゆく。
共同体がどんどんこの世から隔たっていくかのような演出で、迫力があった。
共同体を追う男が、一度はモノクロで示された風景を今度はカラーで通り過ぎるのも、なかなか新鮮な構成だ。

これもまたカメラアングルやカット割りに、一瞬も気の抜くところはない。
ひたすらの緊張感に、あっというまに時間がすぎてゆく。
緊張によって時間を演出する作家なのだろう、と考える。

桜井浩子はがんばっていましたが、声をきくとそれはまさにフジ隊員のそれ。
あの声がずっと自分の脳裏にしみついていたことにあらためて驚く。


機会があったらもう一度観たい。



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My Little Lover「akko」

2006-12-08 05:17:27 | music
akko (オリジナル・アルバム+ベスト・アルバム)
My Little Lover
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ

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マイ・ラバのニューアルバム
というよりは、
akkoのソロプロジェクトとしてのファーストアルバム
というべきか

マイラバは、小林武史の、ポップスの冒険/実験場なんだと思って聴いてきた。
これまでのアルバムは、メロディ、コード、歌詞、アレンジ、録音、ミックス、マスタリング、などなど、ポップスのあらゆる側面で、ぎっしり冒険が詰まっていたと思う。
そのぎっしり具合を、ここちよいポップ感のなかで味わえる。
それが私のマイラバだ。

なので、小林武史という核がなくなったマイラバというのは、まったく想像がつかない。

でアマゾンから届いて早速CDを回してみる。
(昔なら「針を落としてみる」)

と、意外にも、マイラバの香りがぷ~んとする。
おやおや??
な~んだ、akkoの声と歌詞
これが良質のメロディにのると、
結構しっかりマイラバするじゃないですか。
マイラバはやっぱり 小林武史+akko だったんだ。


で、やっぱり、曲やアレンジの作り込みは
小林ワールドとはかなり違う。
あのぎっしり感はない。
逆に、普通のというか、トラディショナルな音づくりをしている曲が
新しい冒険に聴こえる。
普通の音に乗るakkoの声。
これが新鮮。


これからどうなっていくんだろう。マイラバ。
やっぱり小林ワールドがいいな。わたしてきには。
エイベックスというのもちょっとひっかかるしな~~

**

小林さんは数曲でキーボード参加。
Tomoya Matsuuraという人は、小林武史直系という感じの曲づくりだ。
聞き込むといいかもしれない。
David Meadが2曲提供している。

ジャケットワークは・・・どうなんでしょうね~~??

好き度:

↓どれも名作ですね~
1st
evergreen
MY LITTLE LOVER, 小林武史, AKKO
トイズファクトリー

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2nd
Presents
MY LITTLE LOVER, 小林武史
トイズファクトリー

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3rd
New Adventure
MY LITTLE LOVER, 小林武史, AKKO
トイズファクトリー

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4th
TOPICS
MY LITTLE LOVER, 小林武史
トイズファクトリー

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5th
FANTASY
MY LITTLE LOVER, TAKESHI KOBAYASHI
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ビリーのライブ記事更新

2006-12-05 22:03:58 | music
こないだ書いた記事に
追記をいっぱいしましたです。↓

ビリーのライブいきました。




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実相寺昭雄「無常」

2006-12-02 02:28:27 | cinema
無常

ジェネオン エンタテインメント

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1970日本
監督:実相寺昭雄
脚本:石堂淑朗
音楽:冬木透
出演:田村亮(日野正夫)司美智子(日野百合)岡田英次(森康高)岡村春彦(荻野)


今まで観ていなくて損をした。

エロスと芸術というやつには、
当事者でないとわからないなにかがあって、
外側からみていかようにとらえられるとしても、
その内側はどっぷりとその当事者だけにしかくみとれない秘密の澱がひそんでいる。

それは快楽という地獄なのだ。

その地獄を、姉弟の近親相姦と、仏師の倒錯愛の二面で描くこの映画、
1カット、1アングル、1音たりとも気を抜かない、
渾身の緊張感で絞りだした、すごい映画だった。
140分まったく気を抜かずに見入ってしまった。
非常識なカメラアングルに非常識なパン
非常識なアップに非常識なロングショット
これは、日野が幼いころに見つけたという地獄絵のもつ迫力に似た、
音と映像の地獄絵なのだろう。

**

仏門にはいった荻野と日野の会話が中盤にあるが、
そこで唯一この映画の思想が言葉になっている。
仏の教えが、涅槃:時間と空間のない絶対的な無への道だとして、
その一方で、自我と快楽に目覚めた日野=現代人は
罪も罰もない無間の現在を快楽とともに生き続けるしかない。
この宗教の無力化と世界を生きる刹那感は、非常によくわかる。
日野の芝居がかったセリフにうんうんとうなづいてしまったよ。

近親相姦への跳躍を、能面で演出したのは実にうまい。
ひとりでう~~~~~んとうなってしまった。
能面に表情が出ていたし、面を取った時の素の表情と面の表情のギャップも鮮烈にとらえられていた。
これはすごかった。

エロティックという点でも、なかなかエロかった。
見せることではなく、うごめきや表情で引き込む。
なにがエロいかを非常によく心得ていらっしゃる。
さすがだ。

最後いきなり鯉を掘り出す場面になるあたりも
かなりびっくりした。
あれはなんだったんだろうか。
あまり考えず、謎のままにしておきたい。

もう一度観たいな。

**

・・・しかし・・・
この映像と、音の緊張感は、
あれだな、
ウルトラセブンの世界だ。
体にしみついている、
あの世界だ。
主題はかわっても、感覚は共通していたよ。





実相寺監督は11月29日に亡くなられた。
合掌。


好き度:


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