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2003アメリカ/日本
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
出演:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン
長い結婚生活で子供もいて、俳優の仕事はあるけれどどこかしらうまく行ってる感じがしない中年男。
結婚したばかりで、哲学を専攻して学校をでたばかりの若い女。
今が何となく不安で、それでもとりあえず今日はなんとか楽しく過ごすこともできるけれど、未来には希望はそんなに持てない。
人生、どんなときでもそんなものなのだ。
安定するとか立場が固まるとかそんなことは見果てぬ夢にすぎない。
ありえないような高さから密集するビルたちを模型のように見下ろすと、自分はどんなにゆらゆらとゆらめき、一瞬ごとに変わっていくそんな存在なんだということがわかるような気がする。
そんなゆらぎを胸にひそませる二人が出会うのは、東京のホテル。
熱烈なロマンスに発展するでもなく、出会ったことが、この水のたゆたいのような生のなかで、小さいけれどもかけがえのない大切な瞬間であることを心に刻み込むような出会いと別れ。
その機微を画面はしっとりととらえていたと思う。
この人生のたゆたいは、まさに自分のゆらぎだ。
若い頃からもっていて、今でも持っている、現実のもつ浮遊感そのものだ。
若い時の自分を描いた映画であり、今の自分を描いた映画でもある。
ハグが、ほんとうにいとおしいハグに撮れていた。
ゆらぎのなかに大切なきらめきがある。
あんなハグをしたい。
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新宿と渋谷が主な舞台。とくに新宿はわたしの職場の近く、
かなり土地カンのあるところで、自分が画面の隅に映っていてもおかしくない。
あのホテルにもときどき昼ご飯食べに行くし・・・
これは目眩に似た不思議な気分。
にもかかわらず、描かれた日本は、私の知らない日本だった。
日本ではあんなに人が音楽や酒に酔いしれて集っているんだろうか。
あんなところに出入りしない自分にはよくわからない日本。
きっと実際にある世界なんだろう。
まあ、日本って、よく日本だか中国だかごちゃ混ぜになっているような描きかたされることって多いから、ちゃんと日本の実像をとらえたという点では、コッポラさんは確かな目をお持ちといえましょう。
みずみずしく素敵な映画でした。
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エンディングのはっぴいえんどは、どういう経緯で使われたのかな。
だれかが日本の代表的ポップスとして推薦したのかな。
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