雨月物語 [DVD]Cosmo Contentsこのアイテムの詳細を見る |
1953日本
監督:溝口健二
撮影:宮川一夫
美術:伊藤熹朔
脚本:川口松太郎、依田義賢
出演:京マチ子(若狭)水戸光子(阿浜)田中絹代(宮木)森雅之(源十郎)小沢栄太郎(藤兵衛)
よかった~
戦国時代琵琶湖畔の貧しい村と
武家集落のにぎやかさと
没落貴族のまぼろしの屋敷と
それぞれの景色や調度、家屋や着物や立ち振る舞い
そういうものが緻密に作られていて、
あからさまにではなくしかしはっきりとそれぞれの空気感を画面に収めている。
その対比もすばらしければ、
それぞれの空気が少しも嘘くさくなくしっくりしている。
こんな濃密な空間があったんだ日本の映画には
とあらためて思う。
たしか蓮実御大だと思うが、映画はある時期を境に
時代ものを撮ると仮装行列のように見えてしまうようになったと
言っていた。(それも世界共通で)
それは時代考証やセットの作りとかそういうこととは関係がない、
とも。
『雨月物語』をとりあえず観て、その言葉をまずは思い出す。
なんというしっくり感であろうか。
人物も情景もとても自然にその時代のものという強い納得感がある。
それはリアルとか正しいとかいう次元ではない、納得。
まずはそのことによってとてもうれしくなる。
そしてあとは、
湖を不安のなか渡り行く舟をとりまく霧に感じ入り、
幻館の蝋燭だけの灯りを表す(それでいて若狭のただならぬ気配を写しとるためにすうっと暗がりから顔が浮かび上がる)照明の妙技に泣き、
最後、古巣にもどった源十郎と子供が眠るかたわらで繕い仕事をする宮木の背に、次第に明け行く朝日があばら屋の隙間からもれ差し込んでくる、その悲しさに泣く。
ひさしぶりに映画で泣きましたよ~
(パンズ・ラビリンス以来)
***
上田秋成の雨月物語から二つの挿話をベースに一つの映画としている。
基本ジャパニーズトラディショナルホラーなのだが、やはり粋である。
若狭の屋敷に連れて行かれるときにすでに、その門の木戸が風にふかれ
揺れ動き、戸口の障子がことさらにぼろぼろであることなどから、
さりげなくここが魔性の地であることは明かされているし、
最後の宮木のもてなしにしても、一度は無人のあばら屋をぐるりと一周してみせたあとに、宮木といろりの火を登場させる。
粋であるし、宮木のシーンでは、そのほのめかしによって、宮木はやはり命を落としたこと、そしてそうなってもやはり夫の帰りを待ちわびていたこと、そしてこれが最後の団欒となることが、一瞬に観客の胸に迫ってくる(泣くよ~)、と、これは名人芸である。
ベネチア国際映画祭で連続3回賞を取っている(銀獅子2、国際賞1)溝口、という先入観で観たせいかなあ・・・でもとてもよかったと思うよ。
あと、俳優の顔もとてもよかったな~
侍で出世したときの藤兵衛の顔ったら、ほんとに間抜け面してるもん。
顔だけで、戦と人間の欲のむなしさを一手に引き受けたって感じだ。
*****
能や琵琶、太鼓の音が静かに画面に寄り添って、これまたよい効果を上げている。
こういう音や、和装の芝居を見ると、なんだか正月気分になっちゃうんだよね(笑)
ワタシの小さい頃はまだ正月というとテレビでもなんかちょっと侘び寂びで
能楽の中継なんかもやっていて、
町ではみんな和服
羽根つきなんかやっていたりしてたので、
そういうころの記憶と直結してるんだね。
自分の家は団地だったけど、
年始の挨拶なんかでえらい人の家にいったりすると
映画ででてくるような薄暗い日本家屋に畳の間だったしね
そういう空気を生きた人がちゃんと作った映画という気がするな。
でもなあ、この間ちらっとみた、なんだっけ?三丁目の夕日とかいう映画は
なんか見るからに仮装行列だったんだよなあ
あれだって昭和30年代をちゃんと生きた人が作っているんだろうけど、
なんだろうな、このしっくり感の違いは ・・・???
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