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2014-09-14 18:20:06 | 中東問題
イスラム国(ISIS もしくは ISIL)への対応について、先週オバマ大統領は、積極的な対テロ展開を行うとの声明を発表した。アメリカ人ジャーナリスト二人の殺害ビデオが流布した事で、アメリカ世論も対テロへの関心が高まってきており、概ね好意的に受け止められている。

但し、攻撃は空爆のみで、地上戦への軍投入はない事、アメリカ単独ではなくイスラム諸国を含む連合体で対応する方針を打ち出している。

ここまでもイラクではイスラム国への空爆を行っている。よって、大きな違いは、イスラム国の首脳が居ると考えられているシリア国内への空爆を行う事と、シリアの反政府軍への軍事訓練と武器提供を行う事である。

オバマ政権は、イスラム国の急激な台頭について完全に対応を間違い続けている上に、後手に回っている。その上、今回の声明でも、過去の見解と正反対の方針が打ち出されており、オバマ声明の意図を巡りやや混乱状態になっている。

声明を聞きながら思ったのは、まず声明発表自体が政治的であるという事、自分の手の内を宣言する愚、兵力の逐次投入による泥沼化の心配(ベトナム戦争の悪夢)、そして、オバマが有言実行するのかという根本的な疑問である。(声明の中でも、数年も掛かるともコメントしており、最初から遂行責任の回避を決め込んでいる)

イスラム国問題の根が深いのは、イラクからのアメリカ軍撤退、シリア問題でのヘタ打ちにだけで無く、イランのヒズポラ支援とイスラエルーパレスチナ戦争が複雑に絡んでいるからだ。

オバマは「アラブの春」とか独裁者追放とか、アメリカのスーパーパワーをオモチャの様に使ったため、中東はひっちゃかめっちゃかになってしまった。

今でもアメリカ軍がイラクに静かに駐屯していれば、随分違った状況であったであろう。覆水盆に返らずとは、正にこの事だ。

アメリカの厭戦気分に訴えて大統領になったオバマは、政治的に戦争が出来ないという解釈が多いが、アフガン等での空爆にはやたら積極的で「私は人を殺すのが得意だ」とか言うジョークを飛ばす位だから、自分にとって無責任な人々への攻撃には頓着がない。

一方で、無神論者のオバマは、心の底から死が怖いのであろう。死が必然である軍隊に対して、最高司令官として自分の信念、覚悟、使命をキチンと受け入れた上で毅然とした命令が出せないでいる。だから、残虐な3万人規模のテロ集団との戦いに空爆だけで何とかなるという幻想に捕われているのだ。間違えてマレーシア航空機を撃ち落としても平然としらばっくれているプーチンとは役者が違う。

オバマの外交政策の失敗、特に中東でのミスは、世界中に長い間禍根を残すであろう。


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