yoosanよしなしごとを綴る

つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

スペイン・バレンシアはかつて海洋交易で栄え、その名残を商品取引所ロンハに残している

2017年06月01日 | 旅行

スペインを行く47 2015年ツアー12日目 ロンハ ゴシック様式+フランボワイヤン様式 オレンジの中庭 柱の広間 海洋領事の広間 中央市場 北駅

 ミゲレテの塔から入り組んだ道を南に歩くと、ロペ・デ・ヴェガ広場Plaza de Lope de Vegaに出る。広場に面して5階建ての建物が並んでいる。ガイドが指さして幅が107cm!の住まいという(写真、右から2列目)。幅が107cmではベッドを置いたら通れなくなってしまう。1階の入口扉の上には←107cm→とわざわざ記しているから本当だろうが、どんな暮らしだろうか、不思議だ。

 ガイドはロペ・デ・ヴェガ広場の次の通りを右に折れ、ロンハla Lonja de la Sedaに向かった(写真)。
 前述したが、バレンシアはアラゴン王ハイメ1世によって国土回復がなされ、バレンシアの港を手にしたアラゴン王国は地中海に進出した。1282年にシチリアを支配、1442年にはアラゴン王がナポリ王となり、海洋交易で大いに栄えた。15世紀は経済、芸術の黄金期といわれる。
 このころ新たな商品取引所の計画が始まったようで、1498年に着工、1548年に完成したのがロンハである(上・下写真)。後期ゴシック様式でデザインされ、開口部周りはフランボワイヤン様式と呼ばれる炎を連想させる装飾が施されている(上写真右の開口部上部、下写真2階窓上部など)。完成までに50年もかかったことから、ルネサンス様式も取り入れられたが、外観は後期ゴシック+フランボワイヤン様式で統一されている。
 外壁は石灰岩のようで色調は明るく、前頁上写真の3連の開口部が凸型を形作り、上部をフランボワイヤン様式で飾るなど華やかな印象である。屋上には銃眼の狭間が並んでいるが、実戦用というよりリズミカルな感じを作っている。狭間の下には怪物を彫刻した雨樋ガルゴラgargola(スペイン語)・・フランス語ガルグイユgargouilleに由来、英語ガーゴイルgargoyle・・が突き出ている(写真)。前頁写真の角には天使を連想させる彫刻が彫られている。これらの彫刻も装飾性を強めようとするデザインであろう。
 前頁下写真の中ほどが入口で、レセプションを抜けるとオレンジの中庭Patio de los Naranjosと呼ばれる中庭になる(写真)。中ほどには星形の噴水があり、生け垣で足下を囲まれたオレンジが並んでいた。雰囲気はイスラム時代のモスクの前庭に近い。

 中庭の先が柱の広間Salon Columnario、または契約の間Sala de Contractacioと呼ばれる大広間になる(写真)。24本の背の高い柱はらせん状にねじれた表現で、上部は枝が広がっていくように円弧を描いて伸び天井のリブになっている。天井高は16mほどで、対して柱は細い。椰子の木のイメージであろうか。ムデハル様式の影響が強く感じられる。柱の間の中からは分からないが、表通り側の正面入口はアーチになっていて、半円のティンパノtimpano=フランス語タンパンtympanには商人の守護聖人である聖母子像が彫刻されている。見学を終わったあと、中央市場に向かうときに見上げると、アーチの入口は飾り迫り縁アーチヴォルタになっていて、聖母子が彫刻されていた。教会堂のように感じる。

 話を戻して、柱の広間の奥にいまは使われていない礼拝堂Capellaがある(写真)。ロンハの一部が塔になっていて(前々頁下写真の中央)、礼拝堂は塔の1階に設けられている。床は白と黒の市松模様、壁は石灰岩?積み、天井は松材で落ち着いた厳かな雰囲気で仕上げられている。正面壁の中央はイエスの絵、左は聖ヴィセンテの絵である。聖ヴィセンテは4世紀、ディオクレティアヌス時代にアビラで殉教したキリスト教徒で、殉教の地アビラにサン・ヴィセンテ教会が建てられた(スペインを行く14)。

 オレンジの庭の外階段を上ると、海洋領事の広間Sala del Consulada del Marがある(写真)。かつて海洋交易品の取引所として利用され、海洋裁判所Consolat del Marも置かれていた。床はリズミカルな模様に貼られた石敷き、壁は石灰岩?積みの長方形の部屋である。最奥が裁判席だったのか、腰まで板壁が立ち上がっている。目を釘付けにしたのは折り上げ式の天井で、松の木の大梁には余すところなく彫刻が彫られ、金箔で彩りされている。金の輝きが、15~16世紀ごろバレンシアがいかに海洋交易で栄えたかをいまに伝えている。
 現在はロンハでの商取引はなく、イベントやコンサートの会場として活用されているそうだ。
 ロンハの見学を30分ほどで終えて、表通り側に回り込むと、前述した正面入口のアーチ+飾り迫り縁+ティンパノ=タンパン+聖母子が見える。

 横断歩道を渡った向かいが中央市場Mercat Centralになる(写真)。1928年建設で、スペイン最大規模を誇るそうだ。骨組みは鉄骨で、大きなガラス張りの近代建築だが、半円アーチを多用し、ステンドグラスをはめ込み、彫刻を飾っていて、教会風のロンハと違和感はない。中は所狭しと小さな店が日用品、果物、食べ物、ワイン、衣類、土産物などを並べている。皆さんのお目当てはスペイン名物の試食のようで、あっちでつまみ、こっちで味見していた。

 30分ほど場内を歩き回ってから、近くのバールで頼んでおいたランチボックスを受け取り、北駅に向かった(写真)。駅前は大きなビルが建ち並び、隣には闘牛場があり、町の中心といった雰囲気だった。駅の建物も館を思わせるデザインで、中はアスレホ=アズレージョで飾られ、華やかで居心地のいい印象だった(写真)。建設は中央市場より10年ほど早い1917年である。どちらも王制最後で、バレンシアのかつての栄光をしのばせるデザインのようだ。
 バレンシア北駅からタルゴ特急に乗り、バルセロナに向かう。午後1時少し前、列車が入ってきた。続く

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