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「アルケミスト」は羊飼いの少年が夢の可能性を実現しようとピラミッドまで旅する示唆に富んだ物語

2016年09月06日 | 斜読

book425 アルケミスト 夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ 角川文庫 1997 /2016.9読
 表紙の絵や副題の「夢を旅した少年」から、子ども向けの物語かと思ったが、とんでもない、哲学書に分類できるほど示唆に富んでいた。
 アンダルシアに住んでいた少年サンチャゴは、羊飼いになれば未知の世界を旅することができると考え、父に頼んで羊飼いになる。
 物語は、羊の群れを連れて見捨てられた教会に着くところから始まる。かつて祭壇だったところに大きないちじくの木が生えていた。少年は本を読むのが好きだった。読み終わった本を枕にして横になると、1週間前に見た夢と同じ夢を見た。
 それは、エジプトのピラミッドに宝が隠されているという夢だった。少年は、p16夢が実現する可能性があるからこそ人生はおもしろい、と考え、エジプト行きを決意する。
 しばらくして少年は老人に出会う。老人は少年の夢=エジプトのピラミッドに隠された宝を探す旅を言い当て、ウリムとトムミムという白い石と黒い石を与える。黒は「はい」、白は「いいえ」を意味するが、p38できれば自分で決断し・・前兆の語る言葉を忘れず、運命に最後まで従うようにと諭す。

 タンジェに着いた少年は、だまされて有り金を持ち去られてしまう。一文無しになった少年はキャンディ売りの店の組み立てを手伝い、キャンディをもらう。
 キャンディ売りはアラビア語、少年はスペイン語だったけど話しが通じた。p53・・新しいことをたくさん学んだ・・そのいくつかはすでに体験したことで、本当は新しいことではなかった・・今まで気づかなかっただけだ・・なぜ気づかなかったのか、それはあまりにも慣れてしまっていたからだ・・言葉を用いず理解できるようになったら、世界を理解することができると思った・・。
 
 お金がないのでクリスタルの店で働いた。客足が途絶えていたが、少年の工夫で客が増え、たいへん繁盛した。
 11ヶ月が経ち、少年は十分なお金を貯めることができた。そこで、エジプトに向かうキャラバンに参加することにした。旅の途中、らくだ使いが「p90・・自分の必要と希望を満たす能力さえあれば未知を恐れることはない・・私たちは命であれ、所有物であれ、土地であれ、それを失うことを恐れている・・しかし、自分の人生の物語と世界の歴史が同じ者の手によって書かれていると知った時、そんな恐れは消えてしまう」と話してくれた。
 
 砂漠を進んでいる途中で少年は錬金術師と出会うことができた。
 錬金術師は少年にいろいろなことを示唆する。p150・・この自然の世界は単なるまぼろしで、天国の写しにすぎない・・目に見えるものを通して、霊的な教えと神の知恵のすばらしさを理解するために、神がこの世界を作られた・・、p151・・おまえは砂漠にいる・・砂漠に浸りきるがよい・・砂漠がおまえに世界を教えてくれるだろう・・おまえは砂漠を理解する必要はない・・一粒の砂をじっと見つめることだ・・その中に創造のすばらしさを見るだろう・・。
 
 何度も危険な目にあいながら、ついに少年は砂に埋もれたピラミッドを発見した。そこで砂を掘り続けたが、何も見つからなかった。そのときアラブ人の難民が通りかかり、少年の宝物探しの旅の話を聞いて、少年が嘘をついていると思い死ぬほど殴り続けた。
 立ち去るとき、リーダーが、スペインの見捨てられた教会の祭壇の横のいちじくの木の下に宝物があるという夢を続けてみたが、そんな夢を信じると痛い目にあうだけだ、と捨て台詞を吐いた。
 
 フラフラと立ち上がった少年は、宝物ありかを確信したのである。それは羊の群れを連れ本を枕にした、見捨てられた教会のいちじくの木の下なのである。
 
 少年は羊飼いで儲けたお金でタンジェに向かい、お金を盗まれてクリスタル店で働き、そのお金でエジプトを目ざしすという大旅行を遂げたのである。
 その間、老人=王様に出会い、クリスタル店の主に出会い、紹介しなかったが錬金術師を捜すイギリス人に出会い、オアシスでらくだ使いに出会い、錬金術師に出会い、さまざまなことを体験し、示唆を受けたのである。
 もし、最初にいちじくの木の下の宝を発見していたら、大旅行を知らず、いろいろな人との出会いもなく、平凡な人生で終わったに違いない。
 著者パウロ・コエーリョは、私たちに、夢を追い続ける人生を勧めているのである。

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