yoosanよしなしごとを綴る

つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

2015グエル公園の広場は砕いたタイルで仕上げられた曲線のベンチ+雨水浸透の砂層

2017年07月27日 | 旅行

スペインを行く52 2015年ツアー13日目+1994年ツアー2日目 グエル公園続き 住宅 ラ・ナトゥーラ広場 市場
 オロット火山の石でできた通路は大きく円を描いているうえ、ごつごつした柱が複列に並んでいるため、迷路のようでもある。住宅地が完成していたら、子どもたちの遊び場になったに違いない。途中で戻る。芝生の斜面にはつづら折れの散策路が下っていて、3階建て、望楼付きの建物が建っている(写真)。これが60戸の予定のうちの完成した1棟らしい。2階からアクセスする設計で、こうした住居がゆったりとした庭を挟みながら互い違いに配置されていく計画だったようだ。これなら、どの住居も斜面を登ってくる風に身体を預け、バルセロナ市街と地中海を眺めながらくつろげる。
 分譲住宅予定地の西に市場として計画された未完の建物が建っている(写真1994)。屋上は行事用の野外劇場=ラ・ナトゥーラ劇場としてデザインされた。60戸の住宅地でも市場を用意し、野外劇場を設けようとしたのは、ガウディとグエルの発想であろう・・至れり尽くせり、羨ましい限りだ・・。
 2015年ツアーでは先にラ・ナトゥーラ広場を見学した(写真、少し手前からの撮影)。広場の先端から遠望すると、市街の先に地中海が見える。大型船も見える。地中海沿岸には、イタリア、ギリシャ、トルコ、エジプト、チュニジア、モロッコなどの国々が面し、ジブラルタル海峡を抜ければ、さらなる遠い世界が広がっている。ガウディもグエルも、世界を意識し、この住宅地に住む人にも世界を感じさせたかったに違いない。
 広場の外周には見事なタイルを貼ったベンチが波を打つように続いている(写真、予約+有料とはいえかなりの観光客で、人の入らない写真を撮るのは至難)。このタイルは焼き上がったタイルを砕いてモザイクのように組み直し、ガウディ好みのデザインに仕上げてある・・ほとんどは助手のジュジョールらしいが・・。
 一説では、割れたり使わなくなった陶磁器を利用したらしい。ガウディに傾倒し、いち早く日本にガウディを紹介した今井兼次(1895-1987)設計の長崎・26聖人殉教の地に建つ聖フィリッポ教会(1962)では使われなくなった陶磁器を多用してあるから、ガウディ+ジュジョールが使われなくなった陶磁器を利用した説は有力に思う。
 ベンチに腰掛けてみた。タイル張りで堅いと思ったが、座り心地はいい。ガイドによれば、ジュジョールは職人を腰掛けさせ、もっとも座り心地のいい形で仕上げたそうだ。発想をしっかり検証するガウディ+ジュジョールらしいエピソードである。
 ベンチの波形はいくつかバリュエーションがあり、座った位置によって目線の向きが変わる。直線のベンチだとどこに座っても同じ風景になるが、波打っていると座る位置によって風景が変わる。凹型のベンチに座ると目線が交わりやすく、親近感が増す。逆に、凸型に隣り合っても視線がまったく交わらないためか隣にいても気にならない。計算し尽くされたデザインとしかいいようがない。
 広場は厚さ60cmの砂敷きで、歩くと足に心地よい。子どもたちが遊び回って転んでも、60cmの砂場だからたいした怪我にはならない、と思った。が、ガイドによれば降った雨を浄化するための浸透層になっているそうだ。もちろん、ガウディのアイデアである。
 バルセロナの年間降水量はおよそ630mmで、東京、埼玉の半分以下である。スペインには台風による大雨、梅雨のような長雨はない。となれば年間630mmの雨を大事に使わなければならない。自然環境に関心の高いガウディは、丘陵地に降った雨を屋上広場に導き、60cmの砂層で浄化してタンクに溜めたのである。この水は後述するトカゲにつながる。
 広場をじっくり見渡す。ガイドが斜面の上に建つ建物を指さした。木に隠れているが、かなり大きな邸宅に見える(写真)。白を基調にした色合いで、曲線のファサードには蔦模様の浮き彫りが施されるなど、格調の高さを見せる。かつてグエルの弁護士が住んでいたそうだ。おそらくガウディは、住宅地を見下ろす高台にグエル邸を計画したのではないだろうか。オーナーにふさわしいデザインにしたのであろう。しかし、住宅地建設が頓挫したため?、グエルが亡くなったため?、代わりにグエルの弁護士が住んだらしい。
 次に、ガイドは広場の向こう側に濃い茶色の大きな建物を指した(写真)。外観の色合いは先ほど見た望楼付き分譲住宅に共通するが、住宅にしては大きすぎる。当初完成した住宅の1棟で、ここにはガウディ自身が住んだそうだ。住宅地計画が中断し、ガウディも他界したので、その後、改修、増築し、いまは小学校になっている。グエル公園が小学生の遊び場、学び場とは羨ましい。
 望楼付きの住宅、グエルの弁護士が住んでいた住宅、ガウディが住んだ住宅の3棟を確認できたから、分譲住宅地はこの3棟ができた時点で中断したとの説が正しいようだ。
 もう一度、広場を一回りした。あちらこちらのベンチの座り心地を確かめたり、地中海を眺めたりした。ここを憩いの場にできる市民も羨ましい。観光客には時間制限がある。市場に降りた。

 市場は、1996年ツアーのときよりタイルの色調が明るい。補修、改修のせいであろう。ドリス式オーダーを載せた凹み模様の86本の柱が高めの天井を支え、天井は柱の区画にあわせた曲面で、モザイクで仕上げられている(写真)。
 柱は床部分で直径1.3m、天井部分で1mとかなり太い。中は空洞になっていて、広場の砂層で浄化された水が地下の水槽に落ちるように工夫されているそうだ。貯水された水は掃除にも利用できそうである。
 天井は6mあり、風がよく通る。涼しいうえに、市場の臭いを消してくれそうである。天井のモザイクが光を反射して明るい。清潔感にあふれた市場になっている。曲面の天井全体は白みのモザイクだが、四季や太陽、月をイメージしたモザイク画、食品を連想させるモザイクも飾られている(写真)。四季、太陽・月は食品を生み出す自然を表し、タコのモザイク?は魚屋、牛のモザイク?は肉屋、野菜のモザイク?は八百屋・・、買い物が楽しくなる。
 グエル公園を訪ねたサルバドール・ダリ(1904-1989)はたいへん気に入り、市場をメインに大パーティを開いたそうだ。ダリのパーティ好きはよく知られている。ルネ・マグリッド(1898-1967)も招かれたというというから、豪華な顔ぶれの賑やかなパーティになったに違いない。続く

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« JRで遠出をする場合、往復割... | トップ | 平岩弓枝著「ふたりで探偵」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

旅行」カテゴリの最新記事