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「インフェルノ」の秘密を解く鍵はヴェッキオ宮殿のダンテのデスマスク、次はサン・マルコ大聖堂

2018年02月03日 | 斜読

book457 インフェルノ ヴィジュアル愛蔵版 ダン・ブラウン 角川書店 2015
 ダン・ブラウン(1964-)の著作はすでに5冊読んだ。内容が深いし、展開も劇的で、読み応えがある。
 ダヴィンチ・コードに始まるラングドンシリーズの新作がインフェルノだが、訳本が出た時点で図書館の予約待ちが3桁になるほどの人気だった。2016年に映画化されたので、先に映画を見てしまった。
 ようやく図書館からインフェルノを借りることができた。なんと650ページ余のヴィジュアル愛蔵版だった。持ち運びには向かないが、物語の舞台や関連する資料、絵画、彫刻などの写真・図版が豊富に挿入されていて、映画に負けないほどの臨場感をつくり出してくれた。写真、図版のお陰で、フィレンツェ、ヴェネツィア、イスタンブルを旅行している気分にさえしてくれた。

 映画は原作を下敷きに脚色されるが、インフェルノの後半は原作とは異なった展開になっていた。映画の結末もいいが、原作の結末の方がダン・ブラウンの問題提起が鮮明になっていると思う。

 タイトルのインフェルノは、フィレンツェ出身でフィレンツェを追放された詩人・ダンテ・アリギエーリ(1265-1321)の神曲・地獄編に由来する。
 ミステリアスな事件は神曲が鍵になっていて、宗教象徴学者ラングドンの本領発揮により一つ一つの謎が明かされていく。ダン・ブラウンはそれぞれでラングドンに神曲を解説させているから、神曲に疎くても謎解きについていくことはできる。


 事件を仕掛けたのは、生化学者ベルトラン・ゾブリストである。ゾブリストは、地球での持続可能な人口は40億人前後と考えているが、現実には70億人に達しようとしている。ゾブリストは、WHO事務局長エリザベス・シンスキーに地球を持続するためには地球上の人口を減らさなければならない、そのため思い切った手を打つと警告する。
 最終章で明らかにされるが、ゾブリストは生殖能力を奪う感染性のウィルスを開発し、そのウィルスを謎の場所に隠し、時限装置で発散させる仕掛けを作った。

 ゾブリストは、大機構最高責任者総監に莫大な報酬を払って隠れ家を用意してもらい、極秘にウィルスの開発を進め、完成させて謎の場所に仕掛けた。
 WHOシンスキーたちは、ゾブリストがウィルスを完成させたことに気づきゾブリストを追い詰めたが、フィレンツェのバディア・フィオレンティーナ教会の尖塔から、私が贈るのは未来、私が贈るのは救済、私が贈るのはインフェルノと唱え、身を投げてしまう。

 話が前後するが、WHOシンスキーはことの重大さを知り、ゾブリストの身辺を監視して、フィレンツェの貸金庫から円筒印章を押収する。円筒印章を繰り返し振ると発電し、ダンテの神曲をもとにしたボッティチェルリの「地獄の見取り図」が投影される。
 シンスキーは「地獄の見取り図」から読み取れるゾブリストの仕掛けを明らかにしようと、ラングドンに応援を頼み、フィレンツェへ飛ぶ。

 ラングドンは、大聖堂付属美術館館長ブゾーニと円筒印章を調べ、ヴェッキオ宮殿に展示されているダンテ・アリギエーリのデスマスクが謎解きの鍵であること見つけた、らしい・・らしい、というのは後述するがラングドンが記憶を失ったためである・・。
 大機構総監は、フィレンツェでラングドンがゾブリストの妨害をしていると判断し、大機構上級現地隊員ヴァエンサに阻止を命じる。

 ヴァエンサは円筒印章を取り戻そうとラングドンを撃つが、外してしまう。

 物語の始まりは、ラングドンがフィレンツェの病院で気がつくところから始まる。頭に銃で撃たれた傷があり、数日間の記憶が失われていた。
 ラングドンはドクター・シエナ・ブルックスとドクター・マルコニーに手当を受けていた。そこへヴァエンサが現れ、止めようとしたドクター・マルコニーを撃ち殺してしまう。
 シエナはラングドンを連れだし、自分のアパートに逃げ込む。記憶を失ったラングドンはシエナと、ラングドンの上着の隠しポケットの円筒印章の謎を解こうとする。円筒印章を振ると、ボッティチェルリの「地獄の見取り図」が投影された。地獄は9層から成り、第8の圏の10の壕にCATROVACERの文字が書き加えられ、右下に「真実は死者の目を通してのみ見える」と記されていた。


 ヴァエンサの失敗を聞いた総監は、監視・対応支援チーム隊長ブリューダをシエナのアパートに派遣する。新たな攻撃から逃げるため、シエナは三輪バイクにラングドンを乗せて走り出す。
 ラングドンは地獄絵の書き換えに気づき、CATROVACERをcerca trovaと推理する。チェルカ・トロヴァとは、ヴェッキオ宮殿五百人広間ジョルジョ・ヴァザーリによるマルチャーノ・デッラ・キアーナの戦いに記された文字である。

 謎を解くためヴェッキオ宮殿に向かうが、検問が張り巡らされていたため二人はボーボリ庭園に入り込む。ここにも追っ手が迫る。二人は、ヴァザーリの回廊を抜けて、なんとかヴェッキオ宮殿に入る。
 まだ記憶が戻らないラングドンに、ヴェッキオ宮殿職員のマルタが、昨日大聖堂付属美術館館長ブゾーニといっしょに来て、ダンテ・アリギエーリのデスマスクを持ち出したと追求される。

 ヴェッキオ宮殿にもヴァエンサとブリューダたちが追ってくる。ヴァエンサは五百人広間の小屋裏に逃げ込んだラングドンを追い詰めるが、シエナに落とされ、墜死する。

 ラングドンは、ブゾーニの最後の電話で知らせた「天国編第25歌」をヒントに、シエナとサン・ジョバンニ洗礼堂に潜り込み、ダンテのデスマスクを発見する。
 そこには、ゾブリストが残したメッセージ「・・・・馬の首を絶ち 盲人の骨を奪った  不実なヴェネツィアの総督を探せ 黄金色をした聖なる英知のムセイオンのなかでひざまずき ・・流れる水の音を聞け・・・・」が記されていた。


 ラングドンとシエナはェネツィアに飛ぶ。

 大機構総監はことの重大さに気づき、ゾブリストの企てを阻止しようとシンスキーと連携し、ヴェネツィアに飛ぶ。
 次の舞台はヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂、あとは読んでのお楽しみに。映画を見て結末の違いを比べ、ダン・ブラウンの意図と映画監督の意図を考えるのも一興である。

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