藤本淳吾と永井謙佑を加え競争激化の名古屋
カルロンや田代の得点力が鍵を握る鹿島
充実の攻撃陣がゴールを量産すれば
名古屋のJ1連覇も夢ではない
3月5日の2011年Jリーグ開幕が3週間後に迫った。その前の週末である2月26日には、2010年J1王者の名古屋グランパスと2011年元日の天皇杯決勝の勝者である鹿島アントラーズが「FUJI XEROX SUPER CUP 2011」で激突する。今季もJ1をリードすると見られる2強の新シーズンに迫ってみることにする。
まず名古屋だが、昨季は1点差ゲームを確実にモノにする勝負強さが光った。特に際立っていたのは失点の少なさだ。34試合の総失点37は、リーグ最少だった鹿島の31、それに次ぐセレッソ大阪の32に続く3番目の失点数だった。この堅守を支えたのが楢崎正剛、田中マルクス闘莉王率いる守備陣。彼らは今季も健在である。
楢崎は昨年限りで日本代表の活動にひと区切りをつけ、今はクラブに専念している。年末はしっかりとオフを取り、2月1日の始動日からチームに合流した。初日からキャプテンである彼が名古屋にいるのは何年ぶりのことだろうか。それだけ新シーズンに向け、いい準備できているということだ。
右ひざ内側側副靭帯損傷の治療のためブラジル帰国を余儀なくされ、天皇杯を棒に振った闘莉王も、始動日から練習に参加している。2010年の彼は、ケガを抱えながら、南アフリカワールドカップとJリーグを戦い抜き、日本のベスト16進出と名古屋の初タイトルに大きく貢献した。「闘莉王がチームに厳しさを植えつけてくれた」と同僚の田中隼磨も語っていたとおり、彼の存在は「万年中位」とやゆされた名古屋に大きな刺激を与えた。
その闘莉王が万全の状態でシーズンを迎えられるなら、ストイコビッチ監督は何よりも心強いはずだ。闘莉王自身、1月のアジアカップ(カタール)を外から見て、代表への意欲も再燃したに違いない。ザック・ジャパン発足後はケガ続きでまだ練習に参加できておらず、今季は勝負の年となる。名古屋OBの吉田麻也(VVVフェンロ)ら若い世代のDFも台頭しているだけに、闘莉王らしい圧倒的な存在感をまずはゼロックスで示したい。
FW陣も戦力的に非常に分厚くなった。アジアカップに帯同した日本代表の藤本淳吾が清水エスパルスから移籍。さらに近未来の代表入りが確実視されるU-22代表FW永井謙佑も福岡大から加入した。すでに名古屋にはケネディ、玉田圭司、金崎夢生というオーストラリア・日本両代表経験者がひしめいており、FW争いは一段と激化するはずだ。
ストイコビッチ監督が昨季と同じ4-3-3を採用するのであれば、右FWは藤本と金崎、左FWは玉田と永井の競争になるだろう。ある意味、このサバイバルは日本代表以上に厳しいかもしれない。今季の名古屋はAFCチャンピオンズリーグも並行して戦うため、ターンオーバー制を導入したり、ケネディを休ませながら日本人だけで3トップを組むなど、新たな組み合わせも考えられる。当面のレギュラーは誰なのか。今季はどういう方向性でFW陣を選択していくのか。ゼロックス、そして横浜F・マリノスとのJ1開幕戦での選手起用が今後への指標になるだけに、しっかりと見極めたい。充実の攻撃陣が一段とゴールを量産してくれれば、名古屋のJ1連覇も夢ではないだろう。
昨季不足した戦力を
確実に埋めた常勝軍団・鹿島
戦力充実の名古屋からJ1タイトルを奪回すべく、鹿島も今季は思い切った選手補強を行った。特に大きいのがFW陣だ。昨季までのエースFWマルキーニョスがベガルタ仙台に移籍。今は絶対的な点取屋がいない状況だ。2007~2009年の鹿島のJ1・3連覇はマルキーニョスの頭抜けた決定力によってもたらされた部分が大きかっただけに、穴をどう埋めるかは今季を占う最重要テーマといえる。
そこで今回、ポルトガルリーグ1部、ウニオン・レイリアで活躍していたブラジル人FWカルロンを獲得した。彼は190cmという高さに加え、両足でシュートを蹴れる技術、そしてスピードを併せ持つ万能型の点取屋。10-11シーズンのポルトガル1部でも得点ランキング2位となる9得点をマークしており、日本のサッカーにスムーズに適応できれば、マルキーニョス以上にブレイクする可能性を秘めている。
とはいえ、鹿島の過去のブラジル人助っ人が必ずしもすぐに本領を発揮できたわけではない。カルロンも使えるようになるまでに、多少なりとも時間がかかるかもしれない。そこで注目されるのが、モンテディオ山形から復帰した田代有三の存在である。
オリヴェイラ体制発足後、柳沢敦(現仙台)からポジションを奪い取ってエースの座に君臨したと思いきや、2009年には興梠慎三の台頭で出場機会が激減。再生を期してみちのくの地に赴いた彼は、確実なスケールアップを遂げて古巣に戻ってきた。あえて競争の厳しくなる鹿島に帰る道を選んだのも、昨季10ゴールで得た自信ゆえだろう。カルロン、田代、興梠、大迫勇也がしのぎを削り合うことで、攻撃陣が活性化されれば、マルキーニョスの抜けたマイナスを補って余りある結果が出るかもしれない。
高齢化が進みつつある中盤に関しても、アジアカップメンバーの本田拓也が清水から移籍。増田誓志も田代と共に山形から戻ってきた。注目の高卒ルーキー・柴崎岳も加わり、ボランチは人材豊富になった。昨季は夏場の猛暑の影響もあって、後半戦に入った途端、小笠原満男が調子を落とし、チーム全体が足踏みしてしまった。これまで彼に依存してきた中盤の構成も見直すべき時期に来ているのだろう。小笠原、中田浩二という不動だったボランチにオリヴェイラ監督はどう本田や増田を絡めていくのか。新たな秘策はあるのか。そのあたりは大いに気になる。
アジアカップ優勝の原動力となった岩政大樹、伊野波雅彦らDF陣も自信をつけている。昨年末に大阪で行われたザック・ジャパンの大阪合宿に参加した新戦力・西大伍(アルビレックス新潟からレンタル移籍)の加入も大きく、新井場徹は本来の左サイドに戻れるようになる。しかし、その左にもジェフ千葉から移籍してきたアレックスがいる。指揮官が両サイドをどうするのかも一つの見どころになってくる。
昨季不足した戦力を確実に埋めた印象の強い常勝軍団・鹿島。柴崎ら若手の成長も含め、2011シーズンの戦いぶりが楽しみだ。
名古屋と鹿島をJリーグの2強と称する悦っちゃんである。
昨季の優勝チームはともかく、大型補強を敢行した鹿島は戦力的には突出した部分があろう。
新加入選手が即フィットすれば、国内に敵はなくなる。
しかしながら、西とカルロンに問題が生じれば、プランは大きく狂うと言えよう。
この二人が今季のキーマンである。
特にカルロンには大いなる期待が掛かる。
しかしながら、カルロンの陰に隠れておる田代の実力も大いなる戦力である。
今季の戦いもいよいよ近付いた。
我等はスタジアムに通い、声を出したい。
田代の、カルロンのゴールに沸くのだ。
楽しみである。
カルロンや田代の得点力が鍵を握る鹿島
充実の攻撃陣がゴールを量産すれば
名古屋のJ1連覇も夢ではない
3月5日の2011年Jリーグ開幕が3週間後に迫った。その前の週末である2月26日には、2010年J1王者の名古屋グランパスと2011年元日の天皇杯決勝の勝者である鹿島アントラーズが「FUJI XEROX SUPER CUP 2011」で激突する。今季もJ1をリードすると見られる2強の新シーズンに迫ってみることにする。
まず名古屋だが、昨季は1点差ゲームを確実にモノにする勝負強さが光った。特に際立っていたのは失点の少なさだ。34試合の総失点37は、リーグ最少だった鹿島の31、それに次ぐセレッソ大阪の32に続く3番目の失点数だった。この堅守を支えたのが楢崎正剛、田中マルクス闘莉王率いる守備陣。彼らは今季も健在である。
楢崎は昨年限りで日本代表の活動にひと区切りをつけ、今はクラブに専念している。年末はしっかりとオフを取り、2月1日の始動日からチームに合流した。初日からキャプテンである彼が名古屋にいるのは何年ぶりのことだろうか。それだけ新シーズンに向け、いい準備できているということだ。
右ひざ内側側副靭帯損傷の治療のためブラジル帰国を余儀なくされ、天皇杯を棒に振った闘莉王も、始動日から練習に参加している。2010年の彼は、ケガを抱えながら、南アフリカワールドカップとJリーグを戦い抜き、日本のベスト16進出と名古屋の初タイトルに大きく貢献した。「闘莉王がチームに厳しさを植えつけてくれた」と同僚の田中隼磨も語っていたとおり、彼の存在は「万年中位」とやゆされた名古屋に大きな刺激を与えた。
その闘莉王が万全の状態でシーズンを迎えられるなら、ストイコビッチ監督は何よりも心強いはずだ。闘莉王自身、1月のアジアカップ(カタール)を外から見て、代表への意欲も再燃したに違いない。ザック・ジャパン発足後はケガ続きでまだ練習に参加できておらず、今季は勝負の年となる。名古屋OBの吉田麻也(VVVフェンロ)ら若い世代のDFも台頭しているだけに、闘莉王らしい圧倒的な存在感をまずはゼロックスで示したい。
FW陣も戦力的に非常に分厚くなった。アジアカップに帯同した日本代表の藤本淳吾が清水エスパルスから移籍。さらに近未来の代表入りが確実視されるU-22代表FW永井謙佑も福岡大から加入した。すでに名古屋にはケネディ、玉田圭司、金崎夢生というオーストラリア・日本両代表経験者がひしめいており、FW争いは一段と激化するはずだ。
ストイコビッチ監督が昨季と同じ4-3-3を採用するのであれば、右FWは藤本と金崎、左FWは玉田と永井の競争になるだろう。ある意味、このサバイバルは日本代表以上に厳しいかもしれない。今季の名古屋はAFCチャンピオンズリーグも並行して戦うため、ターンオーバー制を導入したり、ケネディを休ませながら日本人だけで3トップを組むなど、新たな組み合わせも考えられる。当面のレギュラーは誰なのか。今季はどういう方向性でFW陣を選択していくのか。ゼロックス、そして横浜F・マリノスとのJ1開幕戦での選手起用が今後への指標になるだけに、しっかりと見極めたい。充実の攻撃陣が一段とゴールを量産してくれれば、名古屋のJ1連覇も夢ではないだろう。
昨季不足した戦力を
確実に埋めた常勝軍団・鹿島
戦力充実の名古屋からJ1タイトルを奪回すべく、鹿島も今季は思い切った選手補強を行った。特に大きいのがFW陣だ。昨季までのエースFWマルキーニョスがベガルタ仙台に移籍。今は絶対的な点取屋がいない状況だ。2007~2009年の鹿島のJ1・3連覇はマルキーニョスの頭抜けた決定力によってもたらされた部分が大きかっただけに、穴をどう埋めるかは今季を占う最重要テーマといえる。
そこで今回、ポルトガルリーグ1部、ウニオン・レイリアで活躍していたブラジル人FWカルロンを獲得した。彼は190cmという高さに加え、両足でシュートを蹴れる技術、そしてスピードを併せ持つ万能型の点取屋。10-11シーズンのポルトガル1部でも得点ランキング2位となる9得点をマークしており、日本のサッカーにスムーズに適応できれば、マルキーニョス以上にブレイクする可能性を秘めている。
とはいえ、鹿島の過去のブラジル人助っ人が必ずしもすぐに本領を発揮できたわけではない。カルロンも使えるようになるまでに、多少なりとも時間がかかるかもしれない。そこで注目されるのが、モンテディオ山形から復帰した田代有三の存在である。
オリヴェイラ体制発足後、柳沢敦(現仙台)からポジションを奪い取ってエースの座に君臨したと思いきや、2009年には興梠慎三の台頭で出場機会が激減。再生を期してみちのくの地に赴いた彼は、確実なスケールアップを遂げて古巣に戻ってきた。あえて競争の厳しくなる鹿島に帰る道を選んだのも、昨季10ゴールで得た自信ゆえだろう。カルロン、田代、興梠、大迫勇也がしのぎを削り合うことで、攻撃陣が活性化されれば、マルキーニョスの抜けたマイナスを補って余りある結果が出るかもしれない。
高齢化が進みつつある中盤に関しても、アジアカップメンバーの本田拓也が清水から移籍。増田誓志も田代と共に山形から戻ってきた。注目の高卒ルーキー・柴崎岳も加わり、ボランチは人材豊富になった。昨季は夏場の猛暑の影響もあって、後半戦に入った途端、小笠原満男が調子を落とし、チーム全体が足踏みしてしまった。これまで彼に依存してきた中盤の構成も見直すべき時期に来ているのだろう。小笠原、中田浩二という不動だったボランチにオリヴェイラ監督はどう本田や増田を絡めていくのか。新たな秘策はあるのか。そのあたりは大いに気になる。
アジアカップ優勝の原動力となった岩政大樹、伊野波雅彦らDF陣も自信をつけている。昨年末に大阪で行われたザック・ジャパンの大阪合宿に参加した新戦力・西大伍(アルビレックス新潟からレンタル移籍)の加入も大きく、新井場徹は本来の左サイドに戻れるようになる。しかし、その左にもジェフ千葉から移籍してきたアレックスがいる。指揮官が両サイドをどうするのかも一つの見どころになってくる。
昨季不足した戦力を確実に埋めた印象の強い常勝軍団・鹿島。柴崎ら若手の成長も含め、2011シーズンの戦いぶりが楽しみだ。
名古屋と鹿島をJリーグの2強と称する悦っちゃんである。
昨季の優勝チームはともかく、大型補強を敢行した鹿島は戦力的には突出した部分があろう。
新加入選手が即フィットすれば、国内に敵はなくなる。
しかしながら、西とカルロンに問題が生じれば、プランは大きく狂うと言えよう。
この二人が今季のキーマンである。
特にカルロンには大いなる期待が掛かる。
しかしながら、カルロンの陰に隠れておる田代の実力も大いなる戦力である。
今季の戦いもいよいよ近付いた。
我等はスタジアムに通い、声を出したい。
田代の、カルロンのゴールに沸くのだ。
楽しみである。