鹿島アントラーズ原理主義

愛する鹿島アントラーズについて、屈折した意見を述べていく場です。

ケルン・大迫、言われていることだけをするようなら俺じゃないと思う

2015年01月06日 | Weblog
代表を落選、クラブでは悪戦苦闘。
それでも大迫勇也は「迎合」しない。

ミムラユウスケ = 文
text by Yusuke Mimura
photograph by AFLO
2015/01/06 10:40

 果たして、誰が想像出来たのだろうか。2部ブンデスリーガ優勝を果たして、昇格したばかりのケルンに加わった大迫勇也が立たされている苦境を。

 W杯が終わった直後、ケルンでの新たな生活をスタートさせる前に大迫はこう話していた。

「ゴール前でシュートまで確実に持って行ける選手にならないといけないし、そこで決める確率をもっと上げないといけない。だから、求められるのは個だよね。そこを上げていくしか、先には進めないと思う」

 大迫はブンデスリーガの前半戦を終えた時点で、第2節のシュツットガルト戦で決めたわずか1ゴールのみ。スタメンに抜擢されたのは6試合に留まり、ベンチ入りメンバーから外れたこともある。そして11月29日のレバークーゼン戦で途中出場して以降は、12月20日のヴォルフスブルク戦に後半38分から出場しただけだ。

 しかも1トップの位置で起用されるチャンスは少なく、多くの試合でトップ下の位置で起用されてきた。

 一体、何が起きているのだろうか。

大迫「説明はいらないから」

 10月30日、ケルンの練習場を訪れた。

 まず、ベンチ入りメンバーからも外れる際には監督から説明があるのか、あるいはその理由などについて、監督のもとに聞きに行くことはあるのかとたずねるとこんな答えが返ってきた。

「いや、説明はいらないから。変な説明をされても嫌じゃない? やるしかない。成長できるでしょ、ここで頑張れば」

 ごく自然な答えだ。むしろ、野性味あふれるストライカーらしさのある答えにも思えた。

 ただ、起用されるポジションについてはどうだろうか。

確かに大迫は、器用さを持ち合わせてはいるが……。

 確かに、大迫は“それなりに”パスは出せる。逆に、現在フォワードとして出場することが多いウチャは他のポジションで起用されるイメージがわくほどに器用な選手ではない。その代わり、彼は現在のチームの一番手のフォワードとしてケルンの中で最多となる6ゴールを決めている。ファンからの人気もあり、彼がスタメンから外れたときにはファンが彼の出場を求める「ウチャコール」がわきあがったりもする。

 大迫がウチャと比べて能力が大きく劣っているわけでもないのにもかかわらず、トップ下のポジションを甘んじて受け入れるようでは、損ではないのか。そう問うと、大迫はこう答えた。

「前でやりたいけど、それは監督が決めることだからね。みんながやりたいポジションを出来るわけじゃないし。それに、一つのポジションしか出来ないというのも選手としてはもったいないから」

 しかし、ゴール前の強さを身につけるといって海を渡った選手が、高校サッカーの歴史では日本人の誰よりも多くのゴールを記録した選手が、本来のポジションではないところで起用される状況をやすやすと受けいれるのは不思議でならなかった。その点について、大迫にさらに問いかけると、さすがに声を荒げてこう返した。

「もちろん、やりたいのは一番前(のポジション)だよ! そこがやりたい。でも、それは前提として、今はそうではないということ」

スペースを突く動きは評価されず。

 実は、大迫が1トップのポジションでスタメン、フル出場を果たした試合が1試合だけある。

 11月2日のフライブルク戦だ。この試合では2度の決定機をつかんだが、いずれもシュートはゴールのわずか横に外れた。しかしそれ以上に目立ったのは、相手サイドバックの裏のスペースをつくような動きだった。

「(試合前の)ミーティングからそれを求められていたので」

 試合後に大迫はそう明かしていたが、地元メディアはそうした役割については考慮せず、翌日のビルト紙などは最低評価となる6点(1点が最高で、6点が最低)をつけていた。

 そして、この試合以降、大迫は一度もスタメンでプレーするチャンスは与えられていない。

再びケルンの練習場をたずねることにした。

 シーズン前半戦も残り1試合となった12月17日、マインツとのホームゲーム翌日にケルンの練習場を再びたずねることにした。

 早朝から降り続く雨の中で、グラウンドはぬかるんでいる。前日の試合に出場しなかった選手、出場時間の短い選手たちがトレーニングに励んでいた。もちろん、前日の試合ではベンチ入りしながらも出番のなかった大迫の姿もそこにはあった。

 少ない人数で行なわれた5対5のミニゲームでは、チームメイトとのぶつかり合いにもひるまず、力強くシュートに行く姿も見られた。練習の始まる前や終わった直後には、仲間たちと談笑している。暗い表情をうかべることも、不満な態度をとるような様子はまったく見られない。

 練習が終わり、グラウンドから引きあげる大迫に声をかけた。ミニゲームでの力強いプレーについては「今日は地面が滑るし、難しかったけどね。気をつけているのは球際の勝負の部分かな」と答える。

「使い勝手のいい選手になってるんじゃないか」

 0-0で終わった前日のマインツ戦では、ケルンは交代枠を2つも残したまま試合が終わっていた。ホームゲームで引き分けの状態でも声がかからない状況も、我慢して受け入れないといけないと考えているのだろうか。

「我慢のしすぎも良くないけど……今は使い勝手の良い選手になっているから。そこをどう変えていくかが大事。前半戦が終わったら、もう1回、チームを作る時間があるから。そこでしっかりと、やれることをやっていくいことが一番かなと思っていますけどね」

 リラックスした表情で、大迫はそう語った。しかし、10月には決して自ら「使い勝手の良い選手」だとは認めることもなかった。一体、ここまでの間にどんなことを考え、悩み、そう語るまでになったのだろうか。その理由をたずねると、ゆっくりと話し始めた。

「うーん……どうなんだろうね。あのときも葛藤がありましたよ、使い勝手のいい選手になっているんじゃないか、と。代理人とも色々と話したし、他にも色々な人と話してきた。ただ、あのときはまず試合に出ることが一番だったから。試合に出てはじめて、吸収できることがあるし。

『今は試合に出られないのが一番良くない』と言われて、そうだと思っていたし。ただ、そこから徐々に徐々に、少しずつ、自分のやるべきことを考えていったら、やっぱり、自分に求められるのはゴール前(の仕事)だから」

大迫「アジアカップが全てじゃないし」

 守備的な戦いに終始しているチームの課題については、こんな風に分析する。

「前がかりになって、(相手のカウンター時に)数的同数になったら守れないから、そこを気にしてやっていると思います。ただ、点を獲らないとやっぱり勝てないのでね」

 そして、自分の役割については迷うことなくこう答えた。

「もっと周り(の選手)に要求することが大事かな。もちろん、今もしているけど、まだまだ足りないと思うから。特に、ゴール前にいるときはもっともっと要求していかないとね」

 日本代表には9月の試合以来招集されず、アジアカップのメンバーからも外れたことについても、悲観してはいない。

「しょうがないでしょう。アジアカップが全てじゃないし。逆に、良かったのかなとポジティブにとらえているけどね。チームで色々とやれる時間があるわけだから」

 日本代表がアジアカップに向けて準備を本格化させるころ、ケルンはウインターブレイクを終えてシーズン後半戦に向けての新たなスタートを切る。1月5日に練習が始まり、1月8日から18日までアメリカのフロリダ州でキャンプを張り、後半戦の躍進を目指している。

チームは攻撃的なMFを獲得リストの最優先に。

 11位で前半戦を折り返したケルンの首脳陣は、得点力不足の解消のために冬の移籍期間に新たな選手の獲得を目指していると地元メディアは一様に報じている。ただ、フォワードではなく、攻撃的なミッドフィルダーのポジションの選手の獲得が最優先されるようだ。また、現在の4-1-4-1や4-2-3-1を基本としたフォーメーションも変わる可能性が十分にあるとビルト紙は指摘している。

 そんなウインターブレイクを前に、大迫について問われたシュテーガー監督はこう話した。

「彼が新たなスタートを切るための時間を我々はこれから与えるつもりだ」

 もちろん、現状を変えるのは決して簡単ではない。ただ、試行錯誤した末に、大迫がゴール前でストライカーとして勝負したいという結論に達した意味は決して小さくはない。

「言われたことをやるだけなら、俺じゃない」

 2014年W杯を直後に控えた昨シーズンのこと。「チームのやり方に慣れないといけない」とか、「監督の求めるものに応えていきたい」と、日本代表のレギュラーポジションをとっていない選手の多くが語っているかたわら、自分の特長や良さをピッチで表現していく必要性を大迫はくり返し説いていた。

 多くの選手とは異なり、自分の良さをチームに還元する必要性を説く理由について彼がこう語っていたことを思い出した。

「言われていることだけをするようなら俺じゃないと思う。それだけでは選手の特長がなくなりそうな気がするし、言われたことだけをやるのなら誰にでも出来るでしょう」

 冬の移籍市場で新たな選手を獲得するといっても、シュテーガー監督が守備的な戦い方を選んでいる以上、ケルンの得点力不足を解消するのは容易ではないだろう。

 それでも――。

 腐ることも、不満をぶちまけることもない。それでいて自分の良さをチームに還元することでチームの力になろうと考えられる大迫からは、何かをやってのけそうな気配が漂ってくるのだ。




ケルンの大迫の現状を取材したNumberWEBのミムラ氏である。
大迫の考えが伝わってくる。
確かに今の立ち位置は芳しくない。
しかしながら、そこから逃げるつもりはなく、立ち向かっていく姿勢が感じられる。
ここは、鹿島への帰還を望む気持ちをグッと抑え、欧州でのチャレンジを応援したい。
大迫活躍の報を待っておる。

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1 コメント

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Unknown (遠方の鹿)
2015-01-07 01:10:13
一言。大迫、自分に負けるんじゃねえぞ!とことん挑戦して来い!結果は二の次、武者修行でいいんだ!成長あるのみ。
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